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タキイ種苗株式会社発行 園芸新知識 4月号掲載(2001)より

 
神奈川県
JAセレサ川崎 柿生野菜生産者直売会
〒215-0021
神奈川県川崎市麻生区上麻生5-6-1
TEL044-988-1131
会員数:20人
集荷場:194u
販売施設:柿生、新百合ヶ丘(2店)、さつき台、平和台、粟平、菅、登戸、宿河原
販売日:月曜〜土曜(週2日営業の店もある)、3店舗が夕方まで
販売体制:当番製で1日当たり最大7人、パート12人
主要品目:果菜類104.4t(春〜秋)、根菜類58.5t(秋〜春)、
葉菜類104.4t(夏以外周年)、イモ類30.4t(周年)

 


畑から台所へ朝どり野菜


多元生産一元販売

 小田急線の新百合ケ丘駅から徒歩約20分の畑の中にJAセレサ川崎・柿生野菜生産者直売会の集荷所があります。神奈川県川崎市の新百合ケ丘は新宿から急行で約30分、駅前からしばらく歩くと東京のベッドタウンとは思えないくらい自然が残っています。目標となる建物がないので探しあぐねて地元の人に道を尋ねたところ、「ああ、あの野菜を集めているところね」「この先の畑の中を抜けていくとすぐに分かるよ」と教えてくれました。

 途中、道路わきの納屋でゴボウを縛ってコンテナに入れている農家がありました。後から分かったのですが、この人も集荷所へ出荷するための準備をしていたとのことでした。「道が分からなかったら、どこでも農家に行って聞けばすぐ場所が分かったのに。このあたりの農家はみんな直売会に所属しているのだから」と笑われてしまいました。

 この直売会の特徴は、生産から販売、売上げの分配、会の運営管理まで、すべて会員自らの手で運営していることです。都市に近いという利点を生かして市場出荷よりも有利な販売をしようと、蔬菜部主催の野菜即売が1970年に始まり、その2年後有志が集まり直売会が発足しました。会員は20人。全量が直売用に出荷され、市場出荷をしている人はいません。野菜、果物、花き、ハクサイ漬けなどの加工品を合わせると年間約100品目、野菜だけで400tに及びます。生産量の増加に伴って、駅前や駐車場などに場所を借りて店を開設してきました。直売所は現在9店ありますが、一元販売方式なので、毎朝集荷所に荷を集め、仕分けをしてトラックで直売所へ運びます。

 直売所といっても、駅前や道路沿いなどに自分たちで設営した小規模なものです。販売も会員が交代で受け持ち、パートの女性と一緒に会計や商品説明を担当しています。
自ら集荷所と直売所を運営

 朝9時ごろから、集荷所に次々と作物が運び込まれます。ここで、販売実績に応じて直売所ごとに必要な量を仕分けしていきます。

 新聞に掲載される市場価格を参考に、黒板に取り決め価格を書き出し、トラックの荷台に立てかけてありました。会員は年間作付計画を検討し出荷調整をしています。葉物は集荷された分を販売しますが、根菜類、イモ類、ハクサイなど日もちするものは、曜日別の出荷者が割当表に決められています。


 出荷者は毎朝集荷所で顔を合わせ、情報交換しています。実家の農業を次いだ若い人も半数近くいて、活気があふれています。トラックの上に積まれたコンテナの中の赤いダイコンが目を引きました。「これ、サラダにしてもおいしいし、甘酢につけると、赤い色が染まってきれいなのよ。うちのお父さん、新しいものを作るのが好きなの」。こう語る坂本洋子さんは、JAセレサ川崎柿生女性部でも活躍。坂本農園のホームページを開設し、直売会の行事を紹介しています。


 農産物の仕分けが終わると、直売所の販売開始10時30分に間に合わせるため、当番に当たっている人は担当する直売所へ向かいます。

 直売会の飯草誠一会長が会の仕組みを説明してくれました。
 「ここの最大の特徴は、普通の直売所では売れ残った場合、出荷した本人が引き取るが、ここでは出荷したら会のものになるから、自分の荷も他人の荷も同じように計算するということです。当番の人は出荷分の1割を会の運営費にあて、残りを敗売金額に合わせ、各生産者の口座に振り込む。今日出荷した代金の9割分が翌日に精算されるので、生産者はほぼ毎日売上げが分かるわけです。JAは売上金の管理面で支援してくれています」。

 小さな直売所なので、昼すぎまでにほとんど売り切ってしまいます。売れ残った物は、夕方まで営業する直売所3カ所に集め直して販売しますが、葉物類は鮮度を重視し、売れ残った場合は廃棄するそうです。

 こうしたユニークな販売方法が評価され、日本農業賞も受賞しました。しかし、ここ数年やや売上げが伸び悩んでいます。

 「2〜3年の段階の規格しかないにもかかわらず、個別選別なので同一の規格でどうしても品質差が出てきてしまう。出荷規格の見直しと、日曜営業なども考えています」と、対策を目下検討中です。
生産者から消費者へ直結
 集荷所から徒歩10分ほどの五月台駅広場わきの直売所を訪ねました。広さ約20uのところに建築用の鉄パイプで組み上げた簡単な店舗は、すべて自分たちで土地の手配から組み立てまでを行ったものだそうです。店内は、陳列台が二列、それに作業台を置き、ハクサイやダイコンなど場所を取るものは、平置きしてあります。

 周辺は比較的新しく開発された住宅地で、直売所の前にはスーパーや小規模なショッピングモールなどがあります。10時少し前になると、直売所の前に5〜6人の買い物客が集まってきます。早く来る人はほぼ常連客で、買うものを決めてくるそうです。開店と同時に、目的のものをサッと買っていきます。

 生産者は週に一度くらいの交代制で、この日の担当は、会長と同姓の飯草武政さん、パートの女性は専任です。

 開店後しばらくすると、じっくり品定めする買い物客もやってきます。「ねーこれ何? どうやって食べるの?」

 当番であれば販売のプロとみなされるので、男性であっても料理方法を聞かれます。
「いいハクサイある?」
「いいハクサイっていう表現が分からないんだけど」(すかさずシビアな突っ込み)
「ハクサイ漬けにしたいから、もっと大きな株がいいんだけど」
「今日は生産者一人だから同じだよ」お客さんは残念そうに立ち去ります。
「あら、ダイコンの葉残ってないのね」
「最近、お客も味が分かってきたみたい。葉付きで持ち帰る人が多いね。鮮度がよいと漬け物になるんだよ。スーパーのじゃ、とてもこうはいかない。生産者は夏場のトウモロコシなんて、穫りに行く前にお湯を沸かしてるもの(笑)。輸入物は確かに姿はいいけど、香りはしない。そういうことを知っている人がどれだけいるかだけどね」
 飯草さんは照れた風情のぶっきぼうな調子ながら、お客さんとの掛け合いは絶妙な楽しさ。どの野菜も情熱を込めて売り込みます。

 「どれもこれもおいしいんですね」とチャチャを入れると、「だって、本当においしいんだもの。ネギだって包丁で切った瞬間に香りがするよ」と反論されました。

 タマネギのように、直売所でのやりとりを通じて作り始めた野菜もあるそうです。
 100え〜ん、250え〜ん、と値段を読み上げ、パートの女性が電卓で計算をしながら手際よく袋に詰めて渡していきます。

 買い物客は、周辺に坂が多いので徒歩で来る人が多くなっています。すぐ前のスーパーと価格の比較をし、安い物だけを直売所で買うというドライな客もいるそうです。

 次は、五月台の隣駅、新百合ケ丘駅北口近くにある直売所に行きました。おや、先ほど見かけた人が来ました。五月台店で「大きなハクサイは?」と聞いていた女性客です。ここでも「ハクサイは同じ生産者だから、大きなのはないよ」と言われ、「また来るわ」と元気に自転車で帰って行きました。

 自分の気に入った商品を探し求めて直売所を渡り歩くというのも、直売所が生活の中に入り込んでいるようでほほえましく、とても印象的な光景でした。

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