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タキイ種苗株式会社発行 園芸新知識 6月号掲載(2001)より

 

 

(岐阜県)
JAにしみの 
ファーマーズマーケット
〒503-0835
岐阜県大垣市東前町955-1
TEL0584-73-8144
面積:78764uの中に、直売所(504u),JA本所,ふれあい広場,温室などがある
営業時間:9:00-17:00
定休日:水曜日
駐車台数:62台
従業員数;25名(職員5名、パートなど13名他アルバイト)
出荷する会員:「ファーマーズマーケット生産者友の会」に登録している約1200名




生産者とJA職員がともに支える


 オープン3年目で軌道に乗る

 岐阜県大垣市の東端にある直売所「JAにしみのファーマーズマーケット」の朝は午前5時過ぎから始まります。

 川瀬文夫店長が3カ所ある入り口の鍵を開けて、生産者が搬入できるようにしています。春先はまだ外は真っ暗で、直売所の灯りが暗闇の中に浮かび上がっています。なぜこんな早朝に開けるかというと、兼業農家が多いので、直売所に搬入してから着替えて会社へ行く人に配慮したものです。驚いたことに、川瀬店長以外にもJA職員数人が早朝から出勤しています。

 JAにしみのがある広大な敷地の中に直売所があり、ほかにも広場や、子供用の遊具がある遊び場、ふれあいホールなどがあります。敷地内には「ナウマンの霊泉」という井戸があり、豊かな水が湧き出ています。この地域は「水都」と呼ばれるぐらいのよい水に恵まれ、その水を利用した稲作が盛んです。

 直売所は、1992年4月29日「緑の日」に、地域の産物は地域で消費してもらいたい(地産地消)という目的でオープンしました。開設当時は、お米の生産が主で、野菜などはおまけ程度に栽培をしているところがほとんどでした。当然、販売する野菜も少なく、商品としてもかなりランクの低い状態でした。宣伝も特にしなかったので、直売所の存在自体があまり知られていませんでした。そのため、オープン時から1年半くらいは大赤字が続き、この立て直しのために、直売所の企画段階から携わった川瀬さんがいわば「責任をとるために」店長になったのです。

 川瀬さんは、就任直後から早朝出勤を開始し、生産者とのコミュニケーションを深め、趣味の野菜作りでなく、商品としての野菜づくりを理解してもらうように努めました。と同時に、外へ向けてはチラシを作って存在をPRしました。

 こうして設立から3年経過した1995年頃からようやく軌道に乗りはじめ、先が見えるようになってきました。オープン時には9万人弱だった来場者数も1999年には30万人に増えています。

 直売所に出荷するのは「ファーマーズマーケット生産者友の会」約1200人、そのうち定期的に出荷しているのは700人です。平日は100人前後が出荷し、土曜、日曜には200人前後と増えます。出荷制限もなく、価格の設定も生産者に任されています。

 生産者は、午前5時半過ぎからにパラパラとやって来ます。早く来るとよいスペースを確保でき、ゆっくり価格をラベルに書き込んだり、貼ったりすることができます。空いている場所を見つけて並べていくので、ホウレンソウでも生産者が違うものがあちこちに置かれています。目当ての生産者のものを探して歩くのも買い物客の楽しみになっているそうです。1日に何がどれぐらい出るか分からないという楽しさは確かにあるようです。そのかわり、雨が降ると出足が鈍くなるということもあります。

 
 生産者が安さで横並び

 生産者は兼業農家が大半で、近い人は車で5分くらい、遠い人でも15分くらいの範囲から運んできます。特に地域の特産野菜や果実があるわけではなく、米の休耕田を利用して生産しているので、量も少しずつです。したがって、販売点数は120万点くらいと相当多いのに対し、販売金額は約3億円と少ないのが、この直売所の特徴になっています。それは、販売金額があまりにも「お値打ち価格」になっているからです。

 生産者たちはJAの職員が早朝からいると安心して、「今日はいくらぐらいに設定したらよいか」とか「この価格で売れるか」とか相談しています。

 持ってくるのは1人数品目。露地栽培のものが大半です。昨日、あるいは朝収穫して調整したものを運び込みます。直売所に運び込んでから、周りの状況に応じて、価格をラベルに書き込んでいる人を多く見かけました。先に持ち込んだ人の価格を参考にするので、安めの価格でも一斉に横並びになります。ほとんどの野菜が40〜90円といった値段で販売されています。主に栽培は奥さんが行い、ご主人が手伝っているというケースが多くありました。野菜を運んでくるのも、女性が目立ちます。

 JAの女性職員も早朝からの出勤です。前日の売れ残りは、生産者が朝持ち帰ります。さらに残った野菜は女性職員がてきぱきとかごに入れて処理していました。「商品から野菜に返るときです」。岩田通子(みちこ)さんが残念そうに言ったのが印象に残りました。「生産者が丹精込めて作ったものだけれど、商品としては売れなくなるので」。売れ行きを見ながら、午後になると職員の手で値下げが断行され、即日完売を目指します。

 学校や会社が休みの時には、家族が搬入や陳列作業を手伝う姿もみられました。「120円でもだいじょうぶ」とJA職員が請け合ったにもかかわらず、ほかの人に合わせて100円に付け替えた人もいました。残るのがいやという理由が最も多く、定年退職した人たちの趣味的な色合いだと、売れるのが楽しいのであって、金額はあまり問題にしない人が多いようです。

 このような状況では、若い人たちが農業で生計を立てていこうとは考えなくなると危機感をもち、何とか改善して魅力ある農業にしていきたいと川瀬店長らはがんばっています。地域の農業情報を作物を通じて消費者に直接伝えることができるのが、このファーマーズマーケットであってほしいと願っているのです。

 朝どり野菜が食べられる食堂

 直売所の販売開始は9時からです。入り口には20人ほどの人がオープンを待って並んでいました。オープンと同時に入ってきた人は、どこかで見たことがある人だと思ったら、さっきまで野菜を並べていた生産者の一人でした。この直売所では、比較的若い層が家族で買い物にきます。交通がやや不便で、車がないとアクセスが難しいせいもあるのでしょう。1週間分の野菜を買い込んでも1500円くらいですから、ほぼ市価の半値です。時にはスーパーや八百屋さんの車が止まっているという笑い話もあるほどです。

 売上げは生産者が野菜に貼ったバーコードで管理し、手数料として10%が引かれ、清算は月末締めの翌月10日に生産者に支払われます。売上げは多い人でも年間数百万円レベル、少ないと年間で数千円という人もいます。直売所へ出荷するための野菜作りが生きがいになり、病院通いがなくなったという生産者もいました。

 ユニークなのは、直売所内にある食堂です。直売所で販売する野菜を使って昼の食事を提供します。10時ごろになると調理担当の中川育子さんがかごを下げて野菜を見て回り、献立を考えます。地元産の有機栽培米「れんげのかおり」を使ったご飯、大垣みそを使った赤だし、おかず5品を食べ放題で400円。とれたての野菜のおいしさを消費者に知ってもらいたくて始めたそうです。「ここの売りは朝出た新鮮な野菜を食べさせること」(川瀬店長)というとおり、素朴な家庭料理なので素材の持ち味がよく分かります。

 直売所はアンテナショップとして大垣市内に3カ所の売店を持っています。注文に応じて、この直売所から野菜を運んでいきます。

 川瀬店長は、生産者の名前と顔をすべて覚えています。今後直売所がどんなに発展しても、自転車の荷台にわずかばかりの量を積んで出荷し続けて、直売所を支えてくれた生産者たちを大切にしていきたいと語ります。将来の展望として、ここへ出荷できない生産者も参加できるように、大垣市の西側の地域にも直売所を開設していきたいそうです。

 「ファーマーズマーケット生産者友の会」の佐竹茂会長が「JAの人たちは本当によくやってくれる」と感謝しきりでした。JA職員と生産者の信頼関係が印象に残りました。

ファーマーズマーケット生産者友の会佐竹茂会長「JAの皆さんには本当に感謝している」

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