●花農家が直売所をつくる
「ふれあいステーション大道」は、山陽本線大道駅から約2km、県道沿いにあり、付近に人家はほとんどありません。この直売所を経営する柳尚道さんは、漁師の三男に生まれ、農業高校を卒業後、花き生産に45年間打ち込んできました。直売所近くにもバラやカーネーションのハウス団地があります。シダの一種であるレザーファンは、台道地区が全国有数の産地になっています。
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花農家である柳さんが農産物の直売所をつくったのは、農業を通じて地域全体を活性化したかったからです。周辺は白ネギなど野菜の産地ですが、市場流通からはじき出された青果物を無駄にせずに、少しでも農家の収入にしたいと考えました。しかし、みんなの直売所として資金集めをしようにも、こんなに不景気だと勝算はないと反対意見ばかり。それならばと、42年間働いてきた自分に対する給料と退職金として4400万円、不足分は借金で補って、総額5000万円を土地買収・建設費用にあてました。
「ここ大道は、笑い講発祥の地なんです。農家自らが立ち上げ、農業の流れを変えたかった。失敗したらまた出直せばよいとあまり気負いもなく始めました」
オープンは2001年9月16日。初日の出荷者は25人、売上点数1062点、売上17万6230円でした。それが、いまでは70人前後が毎日出荷するようになりました。1日の最高売上げは2003年1月29日に156万1480円を記録。3年後の売上目標であった1億円を1年で達成するという好調を維持しています。オープン当初、売り上げに占める花の割合が35%でしたが、現在の商品構成比は20%になりました。花は下がっていないのに、野菜の売り上げがそれ以上に伸びているのです。 |
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柳 尚道さん。オープン当時事務所はもう少し広かったのですが、売り場の拡張で半分位の広さになりました。 |
●成功の秘訣、3つの要因
柳さんは、好調な滑り出しを次のように分析しています。
(1)好立地におしゃれな直売所
周辺は車で行動する人ばかりなので、地の利のよさを最優先して土地選びしました。建物の外観は、従来の直売所に多く見られる鉄骨、スレート張りは間に合わせという感じがするので、経費はかかるが直売所らしくないモダンな建物にしました。
「少しメルヘンチックな建物にしたら、不思議と男性客が多いんです。来店客にはおおむね好評で、最初はレストランか喫茶店かと思ったという話も聞きました」
店内の床はフローリング、壁面は落ち着いた色の壁紙で仕上げ、窓も多くとり、明るさがいっぱいにあふれています。
(2)数字を公開し、経営意欲を高める
会員登録者全員の販売点数、売上点数、売上高を毎日記した売上台帳をカウンターの上に置いているので、生産者は自分の数字を確認することができます。
「数字を公開すると、自分の商品の日々の動きを把握でき、他人との比較も可能になります。こうすることで、生産者に経営意識をもってほしいと期待しています」
(3)花が広範囲から集客
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新鮮な野菜もさることながら、花の種類が豊富で日持ちがよいことが口コミで伝わり、花の注文状況などからみても、かなり広範囲から集客しています。5000円前後の高額な買い物には小さな花束をプレゼントし、販売促進としてもひと役買っています。母の日や子供の日などにも花束をプレゼントし、思いがけないサービスがよりいっそうの口コミ効果となっています。 |
●朝市のイメージをなくす
では、この直売所ができて、どのような変化があったでしょうか。
野菜を納入する会員には、会費も、入会資格も必要としていません。売り上げの15%を直売所の運営費にあてているだけです。直売所だけの出荷で十分やっていける生産者も増えてきました。
「市場出荷向け農業は規格が厳しくて続けていけない、とあきらめかけている生産者もいました。そういう人たちも直売所での販売を始めて、農業はこんなに楽しいものかと実感できたから、もう少し頑張りたいと言ってくれたんです。感激しましたね」
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大阪から来た川上さんが生産しているイチゴ。 |
ご主人と2人で種苗会社(タキイ種苗)を退職して、生産者の仲間入りをした中島さん。
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新規就農者(現在5人)も直売所の恩恵に浴しているといえます。最初のうちは高品質な野菜を生産するのは難しいのですが、一生懸命作れば消費者は応援してくれます。種苗会社を退職した中島夫妻がつくるトマトとイチゴは早くも人気商品だそうです。
基本的には、品出しも、売れなかったときの引き取りも生産者の自主性に任せています。ただし、あまり品質の悪いものを出す生産者は何回か注意して、改善されない場合には出品をやめてもらいます。気の毒ですが、やはり一定の品質は保たないと、直売所の信用が失われるのでやむを得ません。
出品した商品については、途中の販売状況を見ながら、値下げの了承を得て売り切る努力をしています。「売れ残った商品を持ち帰るのはみじめ」であると、柳さん自身が生産者として身にしみているからです。
搬入時間の制限はありません。遠くから来る人や、農作業の都合で早朝搬入したいという人には、直売所の鍵を預けておき、いつでも搬入できるようにしています。多くの生産者は、午前8時頃から搬入を始めます。棚の場所も定位置はなく、早い者順に自由に置いていきますが、やはりどうしても遅く来ると陳列場所がなくなってしまいます。
こうなると、早朝出番の「名物パートさん」中村さんの出番です。中村さんは、生産者が出品した品物を見事な手さばきで並べ換えていきます。開店時間の午前9時近くには棚も満杯になります。このころには、お客がやってきますが、開店時間を待つことなく、店内に入って買い物を始めます。
商品ラベルには生産者の番号と価格が書かれているだけです。買い物客を観察していると、購入する生産者はだいたい決まっているようで、ラベルの番号をチェックしながら、あまり迷うことなく買い物かごに入れていきます。人気がある生産者の商品は、開店後数時間で完売ということも週末や祝祭日では珍しくありません。レジでは生産者番号と価格を打ち込んでいきますが、そろそろバーコードの導入を考えているそうです。
買い物客が集中することはあまりなく、開店時間から閉店時間まで、コンスタントに来店します。近くには大手スーパーもありますが、お客のほうで上手に使い分けているようです。近隣だけではなく、車で1時間くらいのところからも多く来店するそうです。
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スタッフの中村さん。売り場の整理をてきぱきとこなす。
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商品ラベル、生産者番号と価格を生産者が記入する。
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柳さん夫妻とスタッフの皆さん。 |
商品がなくなりそうになると、生産者に電話をして追加してもらいます。生産者の手元にない場合は、他の生産者からも都合してもらい、買い物客に迷惑をかけないようにします。いつでも商品があるということが買い物客に行き渡っているので、買い物のピークが分散されているのです。
開店当初は事務所スペースにしていた場所も、お客や生産者からもっと売り場を広げて欲しいとの要望を受け、裏手に移転させました。「それでも、手狭になってきました」と柳さんは苦笑します。
直売所を開設した当初は、野菜の端境期などに売るものが少なくなったこともありましたが、現在では、出荷すればやり方次第で売れることがわかり、生産者も年間計画を立て、商品の切れ目がなくなりました。値付けについては、生産原価から逆算して儲かるような設定にするようにアドバイスしています。
レジは2台で、パートの女性が2人ずつ交代で担当します。お客さんと話をしながら仕事をする雰囲気が対面販売の専門店といった感じです。
野菜の販売から成功点を探ってみると、(1)直売所は「朝市」というイメージをなくしたこと、(2)「地産地消」をアピールできる上手な販売法を考えたことがあげられます。陳列台には各生産者の番号付き写真パネルが飾られていますが、写真に添えられたメッセージがユニークで、親近感がわきます。
今後は、業務の電子化、売場の拡張、野菜の消費拡大を図る事業の多様化などを計画しています。 |