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二丁目赤水   
98年優良経営食料品等小売店全国コンクール農林水産大臣賞受賞

 長崎県大村市本町325

営業時間:10時から19時。水曜定休。

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赤水清春氏と幸子夫人。かつては従業員もいたが、店舗改装を機に2人で営業。忙しいときだけパートを頼んでいる。赤水さんは常にネクタイを締め、トレードマークの帽子をかぶっている。「果物屋は嗜好品を扱い、格式がある商売なので、清潔感はもちろんだが、きちんとした身なりを心がけている。そのせいかうちは高級品が出ます」

売場面積は66u。営業時間10〜19時。毎週水曜日定休。ギフトが6割で、納めが1〜2割。市の中心商店街の1つ、本町アーケード通りに立地する。左の地図は長崎街道名店会が発行するパスポートに掲載されている。


 肥前大村は994年に大村真澄が大村藩を興して以来、2万7千石の城下町として栄え、1000年の歴史を誇っている。そして、長崎の出島が唯一西洋との窓口であった江戸時代には、多くの旅人が江戸への往来に、小倉と長崎を結ぶ長崎街道を利用し、大村宿は25宿あるうちの1つとして賑わっていた。長崎街道を通った有名人として、オランダ商館医シーボルトにまつわるエピソードが残されている。
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 長崎街道は現在、本町通り商店街のアーケードとなり、果物専門店「二丁目赤水」はかつて本陣のあった場所前に立地している。こうした歴史を生かして自店だけでなく、地域の活性化もしようと張り切っているのが店主赤水清春さんである。

 果物を販売するだけでなく、今後最も将来性があるとみられる製造小売に地域おこしの観点から取り組み、さらに商店街活性化事業へと広げている。ユニークな取り組みながら、「やればここまでできる」と希望を与えてくれる実例だろう。
高級志向の和風の店づくり

 本町通りの商店街を行くと、紅毛氈(ひもうせん)のイスに野点(のだて)の傘が目に入る。店に入ると、左半分は果物の売場、右半分は空間を多くとり、中程に円卓が置かれている。

 奥には大村の宿場風景が描かれたパネルが飾られていて、その下に同店手作りのシャーベット、右隣には地域おこしを図って開発した特産品が並んでいる。

 赤水さんは食料品の卸会社に勤めていたが、幸子夫人の実家が現在地で写真店をしており、何か商売をすればと勧められて選んだのが果物店だった。高度成長期が続いていた71年のことである。

 ところが、93年より96年までは景気低迷で4年連続して売上げが下がってしまった。ここで、赤水は「攻め」の姿勢に転じたのである。

 店舗を96年2月に改装して少人数で経営できるように売場面積を少し狭め、改装と同時にシャーベットの販売を始めた。それ以前から佃煮を委託加工し「花の肥前路」という特産品として販売していたが、今度は自社加工に乗り出したわけである。シャーベットに続いて、もなかにも取り組み、97〜98年と徐々に売上げは盛り返しつつあるが、何より利益率が上がっているのが心強い。
製造加工に挑戦−シャーベット

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  シャーベットは30個に1個の割合で、なんと大村湾の特産である真珠入り。これも長崎街道のエピソードをヒントにしたものだ。

 シーボルトが江戸へ向かう折り、真珠採取場で貝をデザートに振る舞われた。そのときに随行していたビュルガーの貝に真珠が入っていたことから、シャーベットのふたをとったら「中に真珠が入っているかも」というラッキーなプレゼントを始めたのである。それもシーボルトが江戸に旅立って171年後の2月15日に新発売し、長崎新聞でも取り上げられた。真珠は養殖を手がける商店街仲間の店より調達しているもので、1粒1000円の単位はする本真珠。当たった人はアクセサリーなどに加工して喜ばれているという。
ワイングラスのような器入り。大量に買い込むと冷凍室の足の部分の空間がもったいない気もするが、器自体はなかなかおしゃれだ。

 ――シャーベットを作るきっかけは。
「パインをお客様の要望でむいて売っていたところ、端っこが残るのがもったいないとジュースや冷凍にしていたのがきっかけで最初のシャーベットができました。1つができたら、あれもこれもと広がっていって、今では約20種類あります」

 ――やはり地域おこしに関係したものが多いのですか。名前もおもしろいですね。
「キャロット、牛乳、コーヒーは大村産のものを使用しています。コーヒーというと怪訝な顔をされるのですが、大村にコーヒー園があるのです。『未柑青(みかんせい)』は摘果された長崎産ミカンを使っているので、名付けました(笑)。『長崎街道』はザクロ果汁に牛乳を使ったもの、『大村桜』は春の淡い色を出すために、ザクロ果汁にカルピスをアレンジしたものです。同じザクロ果汁でも微妙に色合いが違うんですよ」

 このほか、静岡産メロン、リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、ブドウ、ウメなどのほか、カルビス(初恋)、牛乳、トマト、抹茶、ゴマなどがあるが、季節に応じてイチゴやモモなどのシャーベットを作っている。メロンや季節物が300円、500円(容量が多い)だが、大半が80ml入り200円。ワイングラスをした器に入っているシャーベットの味はとてもまろやかだ。

 シャーベットはクール宅急便で12個入り、24個入りで地方発送もしているが、牛乳瓶の蓋のようなビニールカバーを1個ずつかぶせて並べた上に、蓄冷材をのせるなど、品質保持に配慮している。売場の奥に13uの冷蔵庫と、5uの冷凍庫(-25℃)があり、真珠はショーケースに並べるときに入れるようにしている。

 シャーベットは時間のあるときや夜に加工するが、夏の時期には1日2〜3時間しか睡眠をとらない日々が続くほど。食品検査でシャーベットの大腸菌はml当たり1万以下であれば問題ないが、赤水のシャーベットは300以下と、検査技師も驚くような数値結果が報告されている。これはほとんど無菌状態といってよい。ふつうシャーベットやアイスは冷凍室から出すとスプーンが入らないくらい凍っているが、赤水のシャーベットは最初の一口からやわらかく、きめ細かで、まろやかな口当たりが特徴だ。これは誰もがびっくりするという。しかも添加物は入れていない。

 ――手作りだと衛生面に神経を使いますね。
「シャーベットはふつう高温殺菌しますが、それをすると味が落ちるので、紫外線殺菌と冷凍殺菌をしているんです。これだと果物そのものの味が落ちません。

 うちの特徴は、シャーベットにした本物を食べているという感覚なんです。果物の皮をむくという手間をかけずに、おいしいところだけを凝縮したと思って食べてもらいたい。自分でおいしいものを作って接客に使っているうちに売ってくれというので、商品化したものも多いんですよ。ただ、ビワのシャーベットだけはおいしくないので、商品化していません」

 ――さわやかな中に素材の持ち味が生きている。それに、もう少し食べたいという分量なのがいいですね。
「果物屋だからこそこういうシャーベットができたんです。簡単な製法だが独特なので、まだ気付く人はいないですね。よそにないシャーベットだと自負しています」


  手づくり加工第2弾−もなか

 シャーベットに続く加工品が97年末に発売した「もなか」である。「果物屋がお菓子を作ってもおもしろいのではないか」と約1ヵ月かけて研究し、お客様に試食してもらったところ、これも好評だったため、商品化した。シーボルトの好物がコーヒーだったことにちなんで、コーヒーあんと抹茶の2つである。

もなかもパリッとした皮が独特で、仕入れた皮にさらに加工を施し、どこにもない味わい。外皮とあんが別々になっていて、あんを詰めながら食べる楽しみがある。日持ちの点を考えて2個分の皮4枚を1パックにし、8個1000円。

 ここで、画期的な考えが赤水さんにひらめいた。それは果物をもなかに使えないかということである。かくて、ビワとメロンで実験を始め、周辺の特産品ということでピーナッツ、健康志向で人気の出始めたごまと次々に試作を始めている。

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大村市も郊外に大型店が進出し、小売店は苦戦している。その中で、同店は長崎県経営指導課が97年に発行した「繁盛店に学ぶ」(県内40数店紹介)でも紹介されている。

右の空間は円卓を置き、コミュニケーションの場にしている。奥に「花の肥前路」など特産品を並べている。

 ――ビワは特に味は感じられないのですが、メロンは風味がしますね
「でも、とても味わいが滑らかでしょう? あんに何割かの果汁を加えて、日持ちをよくするために火を通しているのですが、果物を使うと風合い、口当たりがよくなるということでお菓子の加工用隠し味に使えるのではないかと思っているんです。すると、果物の新しい加工用途が考えられます。でも、あんに対する果汁の割合や、果汁をどの段階で入れるかは試行錯誤の連続です。メロンは途中から入れないと茶色っぽい仕上がりになるし、抹茶やコーヒーも色合いや苦みを出さないためには、何度も試してみました」

 ビワなどは1時間半、火にかけてあんを練る。

 抹茶は宇治のものを使用しているが、当初試作してもらったときにはお客様の反応は「苦い」というものだった。ここで、赤水さんは量を減らすのでなく、さらにグレードの高い抹茶を使ってみた。おもてなしなのだから、おいしいと思うものを作りたいという発想だった。すると、「おいしい」と反応は変わった。その味がそのまま商品になっている。

「もなかにしても、シャーベットにしても共通点は原価計算はしていなかったことです。すべて自分が食べるため、接待用に作った。接待は心からのもてなしなので、よそにないおいしいものを食べてもらいたいと作ってみたところ、おいしいからぜひと頼まれ、売り出したのです。おみやげや引き出物にと、よく利用されています」

 ここにも果物店ならではのマル秘製法が生きてくる。和菓子「ギョーカイ」の常識ならば及びもつかない発想で、砂糖に工夫をこらした。赤水さんはシャーベットが先にできたからこそもなかができたという。

佃煮で特産品づくり
「しめじの里」「ふき美人」などオリジナル佃煮は約10種類。小袋300〜600円、後ろの徳用袋300g・750円。
 特産品の販売についてはすでに基盤ができていた。大村出身の人がいるメーカーに委託加工した佃煮類を「花の肥前路」と名付けて販売していたからである。

  佃煮類はおいしくても色が暗い。そこで、無地の明るい色調の和紙で包装して、1個でも気軽な手みやげに利用できるようにしている。さらに徳用袋については、紙店に型どりしてもらったものを自店で折り畳み、ひものリボンをかけている。また、贈り物については有田焼きの窯元より大量仕入れのメリットを生かして安価に仕入れ、付加価値の高い商品として販売している。

  こうした包装資材の工夫により、完成品ならば徳用袋で100円くらいかかるところを40円くらいにコストダウンしているといった陰の努力もみられる。スーパーと同じような透明な容器ではおいしそうに見えないので、値段が安いうえに見栄えがいい商品づくりを工夫した。

  ふだんは簡易包装の徳用袋が人気があるが、中元・歳暮、引き出物には贈答箱が出るそうだ。このほか、委託加工の商品としては、江戸時代高級品だった砂糖が長崎街道を通って全国に広まったことちなんで、来歴を書いたしおりを添えて『金平糖』を販売している。

  美味の追求

次に、「本業」の果物販売について。

   大村市にも地方市場があるが、高品質の果物を求めて長崎中央卸売市場の仲卸経由で大半を仕入れている。長崎県はミカンやビワが特産だが、その時期の最高級品を回してくれるほどだ。このため、ギフトの割合が年々増えてきて、現在は6割ほどになっている。

 ――昨年産はミカンの値段が安くて苦労しなかったですか。
「うちは最初から値を崩さずに販売したので前年対比の20%増になりました。毎年ミカンを送る人は予算が決まっています。お客様にとっては値段が同じで、ランクのよいものを送ることができたので喜ばれたのです。 

 
年末には伊木力の佐瀬葉付きミカンを扱いますが、うちは注連縄(しめなわ)を入れたりして付加価値をつけているので、少々値段が高くてもこちらで買おうという気持ちになるのでしょう」

 ――産直はしないのですか
「今は青果市場からだけです。生産者は自分のところのだけだ出来がよいと思いこんでいるんですが、もっと食べ比べてみてほしいですね。それと、イチゴにしてもミカンにしても、上のほうだけ、いいものを詰めるという生産者もいる。うちは詰め替えるのでよくわかるのですが、これでは果物離れにつながりかねないので、やめてほしい」 

 ――これからビワの季節には店頭いっぱいに並ぶのですか。
「旬の時期に絞り込んで販売するのでそうなります。でも、ビワの発送はそう多くはありません」

 ――産地なのにどうしてですか? 
「ビワは傷みやすいので、クール便で送る店が多いのですが、冷蔵庫に入れたビワは1晩おくと黒くなってしまう。だから、運送業者には常温で送るようにと言っているのですが、他の店から頼まれると送らざるをえない。それで、ビワは送るのに向かないというのが定説になって地元の人もあまり送らないんです」

 ミカンなどの季節にはDMを出すが、昨年はプロに撮影してもらった店のカラー写真を入れた。「こういう店で取り扱っている」という責任をもち、安心してもらおうと思ったからだ。贈答に力を入れている店、他地域からの注文が多い店などは参考になるだろう。

年末は伊紀力の佐瀬葉付きミカンを取り扱う。注連縄(しめなわ)を入れるというやさしい心づかいが喜ばれている。

冠婚葬祭のかごは中にクッションとなる「枕」を入れずに実質本位。それでも見栄えよく工夫している。

  カードやパスポートで商店街活性化

 こうした地域活性化を赤水さんの店だけで取り組んでいるわけでない。L字形になった2つの商店街全体では、東京の烏山商店街のようにカード事業に取り組んでいて(加盟店約100店)、さらに赤水さんは仲間を募って長崎街道名店会を結成し、「長崎街道のパスポート」を発行している。

 最初は、長崎奉行にちなんで、厄除けにもなる「幸福の手形」を500円で発行したが、かさばらずに持ち歩けるようにパスポートに切り替えた。ここにカードをはさんで示せば、ふつうならば100円に1ポイントのところ2ポイントになり、加盟7店の売出し時にはポイント5倍などの特典がつくようになっている。

 こうやって盛り上げる中から、「長崎街道を空港の待合室にしよう」ということで街づくりをしていきたいと抱負を語る。郊外に大型店が進出してきて商店街活動が停滞しつつあるからだ。

「この商店街も3年前まではもっと人通りが多かったのですが、今は空き店舗のモデル事業に指定してもらおうという動きもあるほどです。パスポートは長崎街道に少しでも関心をもったうえに買物を楽しんでもらえたらと思い、始めました」

 年に数回売出しセールを実施するチラシも店主や店主夫人の写真を交代で入れたりして、親近感をもってもらえるように工夫している。


  時代に合った美味を追求

 もう1つ赤水さんがひそかに続けているのが、地域への貢献である。40歳の厄年をきっかけに今日まで21年間、毎月市内の養護施設に寄付を続けてきた。「何か社会に役立つことをしたい」と店の前に無人売店と募金箱を設置して売上金を寄付したことから始まり、現在は「赤水奨学金」の名称で、親のない子どもたちの進学資金にあてられている。子どもたちから年賀状が来たりするのがうれしいと顔をほろこばせる。

 ――最後に、これからの抱負を。
「お客様がおいしいとおっしゃるから満足するのでなく、もっともっとおいしいものを製品化していきたい。だから、常に研究していかないと(笑)。今は甘みを抑えないとおいしいと言われませんが、次の時代にはお客様がどう言うか。お客様の嗜好に合わせた味を追求していきたい」

 ――加工品の卸はされないのですか
「流通のワンクッションを設けるとお客様は高いものを買うことになる。だから、卸は考えていません。ひたすらいい材料を使って、おいしいものを提供していきたい。製造直売はお客様にとってもいいし、売り手にとっても励みがあっていいものです。私の製法は果物店のオリジナルといってもよいものなので、果物店の発展のために、ぜひ手がけてみたいという希望者がいれば教えてもあげてもいいと思っているんですよ」

 食べてみれば店主がいかに「おいしさ」にこだわって商品づくりをしているか、その心意気がわかる。若い人の果物ばなれが言われる中で、シャーベットにより若い客の来店が増えた。客層が若返り、話題の輸入果物が売れるという状況もおきてきている。「果物に付加価値をつける」といえば、従来ならばジャムやゼリーだったが、新しい試みだけに今後も大いに期待される。