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(有)アオイ農園

 大阪府高石市西取石8-122

営業時間:9:00〜23:00、年中無休

高石駅近くに青果店・果物店が4店、商圏内に青果を取り扱うスーパーが4店あるが、競合していない。売場面積99.9u

池内良一氏、まみい夫人


 国道沿いに広い、広い店舗

 (財)食流機構が主催する第12回優良経営食料品小売店等全国コンクール(平成14年度)で、(有)アオイ農園は農林水産省総合食料局長賞を受賞した。経営者の池内良一さんは「自分の店がどの程度の位置付けに評価されるか試してみたかった」と語る。
景気が悪い、売れないとボヤく人が多いなか、アオイ農園では2001年の売上げが前年比128%、2000年は前年比114%と伸ばしてきた。2001年度は、これまで目標としていた1億円も超えた。売上総利益も順調に伸ばしている。

 とはいえ、ずっと順風満帆で来たかというと必ずしもそうではない。
「会合などで出会った他県の同業者の人から店を見学したいと言われても、5年待って、と言っていたんです。来てもらってもいいぐらいに頑張るからって」
「うちの店はとにかく広いんです。改装して売場を狭くして100u、それ以前は132uもあったんですよ。ただ広いだけという感じでした」
 売場が狭まった分倉庫が広がって80uある。店が広すぎるのはぜいたくなようだが、逆に何を扱えばよいのか悩むことににもなる。

 アオイ農園は、南海本線高石駅から徒歩15分の西取石交差点近くにある。高石市は大阪市のベッドタウンとして発展しているので、今後のビジネスチャンスは見込めるが、当店に徒歩で買い物にくる客はあまりいない。和歌山市と大阪市方面を結ぶ国道26号線沿いにあるため、大半は車客だ。そこで、店に隣接する駐車場も40台分のスペースを確保している。駐車場を示す大きな看板、間口の広い店舗、総ガラス張りの店頭など、とにかく目立つ造りで、すぐに果物店だとわかる。

 独立後、ようやく黒字経営に
 
 この店は、池内さんが始める前は、父の楠松さんが経営する(株)アオイ屋グループのうちのひとつだった。池内さんは1989年に琉球大学を卒業し、考えるところがあってアルバイトなどを転々とした後、1991年夏に(株)アオイ屋に入社した。当時、果物屋は5店あったが、バブルがはじけた時期でもあり、そのすべてが赤字だった。赤字解消に努めつつ1996年にそのうち2店を譲り受けて独立し、(有)アオイ農園を設立。その後、2店では目が行き届かないと判断し、現在の店に集中させた。創業5年目の2001年度にやっと黒字に転換し、明るい兆しが見えてきている。

 「設立時の赤字や独立資金などは父からの長期借入金として毎月50万円ずつ返済しています。ほかにも建物や駐車場を賃借しています。ですから、気楽でいいなとか、店をもらったからいいよなとは言われたくないんです。父は、自分が商売をやめても(私からの返済をあてにして)やっていけるなぁと言いますが、実際にはあと6〜7年くらいで借金は終わるんですよね」

 コンクールの表彰式は1月20日に東京の全日空ホテルで開催された。この日もいつものように大阪市中央卸売市場に仕入れに行き、表彰式に晴れやかに出席、日帰りで夜の11時過ぎに戻った。それから着替えて市場へ。
 一日の仕事を終えると、早起きが苦手なので市場の駐車場に車を止めて仮眠を取り、目覚まし時計の音で起きるのが日課になっている。

「以前は仲卸を利用していたのですが、イチゴはどうしても自分で確認したくて6年前ころから市場に自分で行くようになりました。布団に入ると起きられないので、車のシートを倒して市場で寝泊まりしています。6時ころから仲卸の店を回りますが、イチゴの時期には5時に起きて行かないといいものがとれないんです」

 アオイ農園の良いイチゴは何なのだろう。
「とよのかとももいちごを主に扱っています。ももいちごは大粒12〜16粒入りが他店で5000円くらいで売られていますが、バラ入りを当店の化粧箱に詰め直して3000〜3500円という買いやすい価格で販売しています。変形果もときには混じりますが、粒が大きいのでお客様には好評です」

 ももいちごは昨年2月のテレビ番組「どっちの料理ショー」で全国に知られるようになった。徳島県佐那河内村で生産され、数年前から大阪の市場だけに入っているイチゴである。大阪では今シーズンから始まったテレビCMや電車の吊り広告などにより、かなり知名度は高い。12月から5月ころまで出回るが、最もおいしいのは2月までだそうだ。

 ももいちごも産地の贈答箱はあるが、バラで入荷したものを点検しながら自店の箱に詰め直すという手間をかけることで、自社ブランドの格上げにもつながるし、売値をさほど高くしなくとも利益をとれる商材にすることができるのである。
黒い箱にイチゴの赤がよく映える。斜めに入る帯には「ももいちご」と桃色で書いてある。


 家庭用をしょっちゅう買い求めにくるような立地ではないので、ギフト商品を中心とした品揃えになっている。旬の商品、話題商品だけでなく、新商品や珍果なども他店で置いていなくとも十分に置くスペースはある。

 ギフト中心に味本位の品揃え

 仕入れで最も重視するのは、味と鮮度、そして外観である。味さえよければ多少外観がよくなくても「アオイ農園の品物だから」と納得してもらえるだけの信用もついている。「何でも揃っている店」という口コミで広まり、ギフトの割合は7〜8割にもなった。
「1個売りで置いていても家庭用には売れないような高級果物でも、ギフトの詰め合わせには喜ばれるので仕入れています」

家庭向きの安価な商品はスーパーにも負けない価格

広い店なのに、陳列台近くに前出しして変化をつける

 

 店内は、一見すると果物産地のロードサイドに見られる果物土産店のようである。新鮮な穫れたてを販売しているという思いを「くだもの王国 アオイ農園」という看板に託した。

 果物土産店では果物は並んでいるだけで陳列などにはさほどこだわっていない。しかし、この店では「小売業」という販売のプロらしく、とてもきめ細かに神経を行き届かせている。POP類はすべてパソコンを使って、見やすく、きれいに作成されている。


 店が広いので、丁寧なPOPが生きてくる。店の人が接客中でも、客はPOPを見ながらゆっくりと品定めできる。いかに通路を広くとってもスペースは十分すぎるので取り扱う果物の種類も多くなるが、それらのすべてにきちんと産地表示を行っている。

 冬季ならば、入り口にミカンをバケツに数多く並べ、安さ、入りやすさを演出。店内は腰までの高さの平台が多いので店内を見渡せ、通路も広く歩きやすい。贈答需要が多いといっても、価格がすべて高いかというとそうではない。食べ頃が来てしまったり、たまたま安く仕入れられたり、等級の割にお値打ち品などを思い切って安く提供する。このため、おいしいものがお買い得で売られているかも……という期待感を客にもたせる。

 通りすがりにたまたま看板を見て立ち寄るという車客にも配慮し、年中無休、朝9時から23時までの営業である。あの店はいつでも夜遅くまで開いていると記憶されるから、何かあったときに、たとえ回り道になっても寄っていこうと思う客が多いはずである。

 コンビニエンスストアのような蛍光灯の配置をしているから、夜にはことのほか明るく目立つ。

 目立つといえば、駐車場の存在を知らせる看板に描かれているマークもユニーク。子象をイラスト化しているが、鼻はバナナ、目はサクランボ、耳はリンゴ、王冠(くだもの王様と銘打っているからか)の上にはパイナップルというデザイン。一度見たら忘れられないユニークさ。何事も他人とは違ったことをしていこうという姿勢も伺われる。

 広い店ならば、ほかにもいろいろ置きたくなるものだ。だが、商品構成をみると、果物81%のほかは、乾物と缶詰にすぎない。

 これからもあくまで果物を主力にした経営を考えている。そのために、ちょっとした心遣いの積み重ねを重視する。ポラロイド写真を活用し贈答品に添えるサービスもそのひとつ。誕生日、敬老の日など希望を聞いて贈る人の写真をポラロイドカメラで撮影し、コメントを書いてもらってギフトに入れている。肉親、知人、友人などに近況報告ができる思いがけないギフトになる。年配客が多いが、しゃれたラッピングなどにより、若い客も増えてきた。

 外販にも力を入れる
 
 現在、小売は55%、それ以外が45%である。実は年中無休と長時間営業が、葬儀社向けの外販取引に有利に働いた。独立前は少ししか手がけていなかったが、他の納入業者が休みのときに急遽入った注文に対して閉店後も仕事をして納入したことにより、厚い信頼を得た。いまでは取引数15社、1日平均18万円も売り上げるようになり、果物全体の粗利益(約43%)にも大きく貢献している。大量に注文が入ると商品の回転率もよくなるので、常に鮮度よい商品を扱えるというメリットもある。

「夜11時に仕事が終わってから配達に行くことが多いです。翌朝は何があるかわからないので、できることはその日のうちにすませています」 。こうしたことは、なかなかできるものではない。
 葬儀社に向けてお供え用盛りかごの商品紹介パンフレットを作成したり、ダイレクトメールや訪問活動を行ったりと、営業活動にも力を入れている。また、配送車3台にはカーナビを付け、どこでも迅速に配達できるようにしている。

 外販専用部門を設置したので、市内を中心に個人客の宅配にも応じられるようになった。特に、高齢者や身体の不自由な人にも喜ばれているそうである。これらは口コミにより広がってきている。


 夫人や従業員の力があってこそ

 池内さんの店は、店長を務めるまみい夫人のほか、8人のパート社員が互いに融通のきく勤務シフトを組んで長時間営業を支えている。

 最も重視するのは接客サービスの向上であり、池内さん夫妻が模範になるような接客を常に心掛けている。毎月目標売上げを達成した月には手当てを全員に出したり、盆と年末には売上げに応じて特別手当を支給したりしている。また、ラッピング講習会などには積極的に参加させている。

 小規模であるだけに、まずチームワークを優先し、労働面、金銭面、技術面などでも不満が出ないように、なおかつ気になったところはすぐに注意するようにしている。

社員のみなさん

 店内の販売促進はパソコンの得意な社員に負うところが大きい。これから社員を確保するときには、笑顔のよい人もよいが、パソコンに強い人もおすすめかもしれない。アオイ農園のPOP、商品ラベル、チラシ広告、のし紙、お供えカードetc.を見ると、そう思う人が多いことだろう。社員にとっても、POPづくりは楽しく、じっくりと見てくれる人が多ければ、それだけ励みにもなる。気分のよさが接客に反映し、ますます店全体が向上するという構図である。

パソコンを使ってカードやDMも作成。DMには、フリーダイヤル、電話、FAXのほか、E-mailアドレスも記している。ホームページは作成中だが、自社ドメインhttp://www.aoinoen.comを取得している。

「独立して大変だったけれど、ここまでこれたのも、うちの奥さんのおかげと感謝しています。それと社員のみんなにも感謝したい。商売をしている人は、よく消費者のためにと言いますが、私は自分のため、家族のため、従業員のためを第一に考える。かれらにとってよいことは何かと考えると、お客様を大切にすることなのだとわかってくる。商売のおもしろさは安く仕入れた商品をいかに利益をとって売るかだと思います。他にない商品を作り出せば利益がとれる。こちらが手間をかければ付加価値を高められるのですから、お客様が納得して喜んでくれればいいんです。店に並んでいる商品でもおいしくなければ売らないこともあります」

 さて、これからは?
 「外販の拡大は、社員を増やす必要があり、これ以上は無理。現在の陣容で果物の販売を深めていきたい」

 入賞したことで見学があるかもしれないので、入賞にふさわしい店にしていこうと社員たちと決意を新たにしたそうだ。これからは家族のため、社員のため、あまり無理をせずに、アオイ農園にきれいな花を咲かせてほしい。