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くだもの&食品 はらだ

 山形市大手町2-35

 

1987年に店を新築し、自宅は150m離れた所にある。果物60%のほか、野菜、一般食品を扱う。向かって右が文具店、左が菓子店。

原田次朗さん、祐子さん夫妻。贈答リーフレットには2人の顔写真を載せているので、地方の客からも親近感がもたれるという。父信夫さんは84歳だが元気いっぱいで、干し柿だけは自分で仕入れている。


 山形駅より徒歩10数分、大手町2丁目の一角に「くだもの&食品 はらだ」がある。周辺は個人商店や住宅が並ぶ通りで、はらだに来店する客は近隣に住むなじみ客が7割を占める。

 同店が昨年作った贈答用カタログ表紙には、3代目の原田次朗さん、祐子さん夫妻の顔写真の下に「こんな私と愛する妻です。7人家族で頑張っています」と書かれている。7人家族の内訳は、原田さん夫妻に2男1女の子供たち、それに現在地で商売を始めた父信夫さん夫妻である。
 
  ●地方発送が2割

 山形県は果物王国である。産地における果物店として、サクランボから始まり、スイカ、モモ、メロン、ブドウ、和梨、洋梨、柿、リンゴ、干し柿と、季節ごとに地方発送するものに事欠かない。中でもサクランボと洋梨(ラ・フランス)は山形が全国一を誇るだけに、特に力を入れている。

 6〜7月はサクランボを1日70〜100箱、11〜12月初旬にかけてはラ・フランスを1日40〜50箱は発送する。したがって、シーズン中に扱うラ・フランスは1500〜1600箱、これは原田さん夫妻にはほぼ限界の量だが、もっと大量に扱っている店もあるという。
 
 販売面で興味深いのは、産地だからといって、サクランボやラ・フランスの時期に、それらの果物が売場をほぼ独占するか思うとあにはからんや、ほとんど並ばないことである。親戚や知り合いに農家の人が多いので、「買って食べる」という人は少なく、観光客は駅や空港、観光地売店などで購入することが多いので、店売りはあまり望めない。だから、これから発送するという箱だけが大量に店内や店前に並ぶことになる。自分の食べるものはもらいものでも、山形の特産を地方に贈りたい、という時には最高級品質の品を扱っているはらだの果物を利用してくれるのである。

 この時期には得意先にDMを配布しており、注文があった順に発送していく。夕方には発送し終え、常に在庫ゼロである。ただし、それまでは場所も人出も少なくててんてこまい。店前にも箱を出すことになるが、それも「すごいと思ってもらえる演出」。発送分は毎年着実に伸びている。

 品質にこだわるだけに、サクランボ、洋梨、リンゴなどは生産者から直に仕入れるものが多いが、卸売市場とも良好な関係を築くために2L以上は生産者から、2L以下は若干市場から仕入れるといったぐあいに使い分けている。
 生産者から直に仕入れるといっても、産地にはすぐに行ける距離にあるから、しばしば足を運んで情報交換をする。そうこうするうちに、蜜入りリンゴかどうかなども木を見ればわかるようになってきた。また、いい品質の果物を作る人ほど農薬をかける回数が少ないということもわかってきた。

産地の人は、「買ってまでは食べない」。だが、地方発送の贈答によく利用してくれる。特産果実でも、山形では柿、スモモ、リンゴ、桃は硬いものが好まれ、幸水やラ・フランスは軟らかいものが好まれるそうだ

日頃は絵などを掛け、吊し柿のシーズンになると、吊して演出できる仕掛けを天井に作った。

 洋梨(ラ・フランス)などは市場で仕入れる場合も個選のものを選んでいるが、洋梨が上手だからといって、リンゴやサクランボも上手とはいえない。だから、「餅は餅屋」でそれぞれの生産者を畑も含めて知っていると強みになってくる。

 発送する場合、いかに大玉のものを集めるかが勝負になるそうだ。ラ・フランスも味にこだわると、ざらつきがなく食べておいしい大玉を選ぶことになる。だが、仕入れ値も高くなるので、利益はあまりのせられない。5000円で仕入れて5500円で販売するような時もあるが、果物は粗利20%あればよいとしており、たとえ儲けが少なくともはらだで買った人が喜び、再度の注文につながっていけばと期待している。

 ラ・フランスの食べ頃の目安としては、先方に届いて3日目に食べ頃になるように発送している。12個入りで4個ずつ食べ頃をずらしてくれという注文などにも応じている。
 宅急便の運転手には腹の足しにとして、毎日ジュースとパンをあげて喜ばれているが、ドライバーへのちょっとした思いやりが品物を大事に扱う気持ちにもつながっていくのだろう。

  ●地元の個人客を大切に、配達サービス

 地方発送が多いといっても、全体でみれば地方発送は約2割で、その他納め1割だから、近隣の買物客を相手にする販売割合が圧倒的に多い。
 原田さんは学生生活を東京で送り、経済学を学んだが、「まず考えよ」「経済を動かすのは人である」という教育を受けたという。会計学を学ぶだけでは金は生み出さないことを知った。だから、仕事で関わってくる生産者も、仲卸も、最も重視するのは人間性だという。

 「生産者はおおざっぱな人はだめ。洋梨でいくら置いておいても軟らかくならないものがあるでしょう。それは早くもぎすぎてしまうからなんです。積算温度などをきちんと管理している生産者の品物はいい。だが、ラ・フランスが上手だからといってリンゴも上手とはいえない。果物でも餅は餅屋なんですね」

 仲卸も知識が豊富でいろいろ教えてくれる担当者がいる店を選んでいる。
 生産者にも仲卸にも高いレベルを要求するから、自店もお客様からの高い要求にこたえられるだけの店になりたいと望んでいる。
 このため、POPなどで産地の情報を添えるようにしているし、主力となる果物については、品種名のほか、「食べ方」「食べ頃」「ちょっと一言」「ご注意」などを記した紙を用意している。

 たとえばサクランボはこんな具合である。

おちゃめなチェリー効能書

【次の諸症状の方に】
・おちゃめな方
・くだものを切ったり、皮をむくのが面倒な方
・好奇心の旺盛な方
・おいしいものに目がない方
【用法・用量】
・いつでもどこでも、お一人様何個でも、お召し上がりください。
・なくなりましたら、当店までご用命を
【使用上の注意】
・あなたの健康のため、食べすぎには十分に注意してください
・生物です。品質が落ちないうちに、お早めにお召し上がりください

 デコポンの「ちょっと一言」には「ほとんど種がありませんから、皮をむいたら袋ごとそのまま食べるとおいしく頂けます。まァー食べ方は個人の自由、貴方の勝手ではありますが!」

 グレープフルーツでは「たまに種があるのは、他の品種の花粉と浮気をしたためで、あまり怒らないで下さい」
 西瓜は「クシ形に切った西瓜にかぶりつき、種を機関銃のごとくはき出し、ゴクンと丸飲み、顔のまわりは汁だらけ、こんな品のない食べ方をあえてお勧めします」

 といった具合に、いろいろな情報提供する中に原田さんのユーモラスな人柄がかいまみえるところが好評だ。時には山形弁を交えたりする。ちょうど情報カードの大きさぐらいの説明用紙をパックや贈答品などにこまめに入れている。

 これらはワープロで文章を作成したものを打ち出し、カラー用紙にコピーしている。隣が文房具店なので隣近所のつきあいも大切にしているのだそうだ。

 販売の様子を見ていると、何品か購入した後ごく自然に配達を頼む人が多いのに気が付いた。この時、販売とレジは主に祐子夫人が担当していたが、年配の客はレジに立ったままで口頭で注文する人も多く、その度に祐子さんは品物を選んできてはレジに運ぶという作業を繰り返していた。

洋梨はマルゲリット・マリーラ、ゼネラル・レクラーク、オーロラ、バラードなどいろいろ扱うが、贈答や地方発送はラ・フランスが主役

配達は客単価をアップさせる効果

 客がレジ前に立った時に、「いらっしゃいませ」と頭を下げ、帰る時にも「ありがとうございました」と軽く一礼する。スーパーで口先だけの挨拶を見慣れていると、誠意ある接客は新鮮に映る。「親しんで狎れず」の対応もよい。

 原田さんはリーフレットに果物の「味力」と書いているが、「人間味力」も魅力になっているようだ。「お願いね」と気軽に配達を頼んでいくのを見て、近所ならばそれぐらいの荷物は自分で持ち帰ればよいのにと思ったが、配達するからこそ1回に買う量も多くなるのであり、どんなに近所であっても配達はとても有効なのだそうだ。

 「個人客がいなくなると地方発送する人がいなくなってしまう。だから、日頃のお客様は大切にしているんですよ」
 そう言って、こまわりのきく小型バイクで配達に行く。平均して1日10件ほど、業務用には3〜4件だが、真夏の暑い時や天気の悪い時ほど配達を頼まれ、電話注文もあるそうである。

 果物60%、野菜20%、一般食品20%の割合だが、果物以外の商品も扱っていることが配達するには役立っているようだ。

 原田家にとってラ・フランス発送で明け暮れる12月はめいっぱい忙しく、これを乗り切れば1月は「商閑期」になるという。今、家族経営としては限界に近い約7000万円を売り上げているが、高品質にこだわって販売している割には利益が伴っていないものがあることも感じている。これから先、販売促進に力を入れて、「山形にはらだ店あり」と全国へ向けてアピールしていくことが適性利潤を得て、労働に見合う対価を得られるということにもなっていくだろう。