フルーツギフトカードの加盟店は九州地区で2店しかない。そのうちの1店が宮崎県日向市の(資)日向農園である。店を実質的に経営する則貞通純さんは昨年フルーツギフトカードの存在を知り、果物店のネットワークに参加したいと考え、フルーツギフトカード加盟店になった。
日果連の傘下組合に所属していても、組合事業だからしかたなくという人もいれば、則貞さんのように大きな期待を寄せて前向きにとらえようという人もいる。
「フルーツギフトカードがもっと全国に広がってほしい」「もっと積極的にPRすればよいのに」と考える人も多いに違いない。日果連だけでなく、日本中のすべての果物店が扱うようでなければなかなかフルーツギフトカードの効果は出てこない。
それでも、則貞さんから不満の声は聞かれない。むしろカード加盟店になったことをきっかけに昨年の青年会議に参加したり、そこで知り合った果物店を訪ねたり、と日果連の元気な店をあちこり回って話を聞き、自店の経営にフルに生かしている。地方では情報が得にくく、同業者も少ない現状では、日果連の存在自体が素晴らしく思えてくるそうだ。
■地方だから、学ぶために出ていく
日果連加盟店は大都市に多い。そうした地域であれば優良店は1日にいくつも見て回れる。だが、則貞さんの経営する日向農園が良い店だからといって、宮崎市内から1時間に1〜4本しかない日豊本線の列車に乗って63分(特急で43分)もかけわざわざ情報交換に訪ねる人はいない。だから、則貞さんのほうから外へ出て、様々吸収したことを自店にも採り入れてきた。
駅前の整備計画が具体化し、日向農園も現在地から移転、2004年秋完成予定で新店舗(売場面積66u)を建設することが学ぶ姿勢に拍車をかけた。ドライフルーツがよいと聞けば扱っている店で話を聞き、新しい盛りかごを提案する店の見学に出向く。売れそうな加工品を探すという目的のためだけに展示会を見に上京する。こうした様々な経緯を経て、今現在、夢に描いた理想の店が具体化しつつある。新店舗完成後は、遠方からも見学者が数多く訪れるかもしれない。なんといってもこの店は(財)食品流通構造改善促進機構主催第13回優良経営食料品等小売店全国コンクールで最高の賞である農林水産大臣賞を受賞した店なのだから。旧店舗で受賞したわけだが、新しい店になってさらにどうステップアップするかが期待される。
■日向夏、金柑、マンゴーを地方発送
日向市駅から徒歩5分ほど。パイナップルの看板で果物店だとわかるが、現状では特別好立地というわけではない。これが、場所を移転し、4階建てビルになって2006年に高架になる駅舎からも日向農園の看板が見えるということになると、事情も変わってくるかもしれない。駅前も再整備されて人の流れも呼び戻されるだろう。
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初春の店内は、一年中で日向農園の最も活気ある売場になっていた。宮崎特産の日向夏、金柑(たまたま)の箱が店内にズラリと並んでいるだけで力の入れようがわかるというもの。4月からは宮崎産マンゴーの赤色が加わってさらに鮮やかになっているに違いない。
こういえば、「産地の果物店だから」という声も聞こえてきそうだ。だが、果物王国日本では産地の果物店はいくらでもある。そして、そのどれもが成功しているかといえばそうではない。産地が東京市場を向いていて良い品が入手できなかったり、産地であるだけに地元の人はもらいものが多く逆に売れなかったりする。日向農園では産地であることを最大限に生かしている。自らの足で、舌で、良い生産者を探し、それをリーズナブルな価格で、インターネットも活用しながら販売している。 |
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店舗左側は地方発送用の日向夏、たまたま金柑が並ぶ。盛りかごにも力を入れている |
■産地が認めてくれるまで販売努力
宮崎県の特産である日向夏は、リンゴの皮ようにむいて白い綿の部分を残して切る食べ方が定着している。とはいえ、一般の店では試食させづらい商品であるので消費者にはなじみが薄く、高級店が扱う程度である。こうした特殊な商品は産地や生産者も販売に力を入れるから、産地の果物店であっても良い品が入手しにくい場合がある。
だが同店では、自他ともに日本一の生産者を扱って、通販では日向夏とマンゴーで半分以上を占める人気商品にした。
「冬は12月から日向夏、デコポン、ポンカン、1月末から金柑のたまたま、4〜7月マンゴー、全国に通用する宮崎の特産しか通販しません。ですから、9月から11月まではネット通販はオフになります」
では、その生産者をどうやって見つけるのか。
市場でこれはと思って着目した生産者番号を3年間くらい追いかけることから始まる。ひどい生産者になると上にだけ良いものをのせるのはどの果物でもあること。だが、「おいしいものを生産している人のものは全部よい」そうだ。生産もやはり正直であることが大切。味のよさだけを頼りに実際に訪ねて行くと、宮崎県で一番最初にブランドをとった人や、名人クラスで作り方が違う人であった。こうした生産者や生産組合に所属する人は、後継者がいるから継続した取引ができる。今では宮崎市場にオーダーを入れると、生産者が日向農園用として出荷してくれるようになった。
その陰には、産地が認めてくれるまで頑張るという販売努力があった。産地を大切に、なおかつ量を売るということになれば、産地も特別価格で出すようになる。
もちろん生産者自身が通販を手がけている場合もある。これを苦々しく思ったりせずに日向農園では他の通販サイトで生産者ブランドの知名度が上がるように仕掛けをした。1社だけが儲かればよいというのでなく、生産者のために黒子となってPRするのである。その姿勢が生産者にも伝わって信頼関係が築かれ、良い品質のものをコンスタントに特別価格で出してくれるようになった。したがって、注文者としては送料を支払っても得になり、「産地の果物店」であるという強みを十分に生かすことができる。 |
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店舗右側も宮崎産の柑橘が豊富。デコポン、ノバ、ぽんかんなど 4月からは完熟マンゴーが贈答品に加わる |
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| 果物も加工品もおしゃれなギフトにして提案している |
インターネットを開設して以来、足繁く産地を訪ね、園地の様子を動画でアップするなど情報発信をこまめに行うようになった。
土も質が違えば作り方も違ってくること、同じ宮崎のマンゴーであっても斑点がどうして出るのか等々、産地の微妙な違いなどもわかってきた。目で見、さわってみて、品質の違いがわかり、他産地の事例を参考にしながら、生産者にアドバイスまでできるようになった。これはもしかすると、かつて卸売会社の担当者が生産者に対して行っていたことなのかもしれない。
ネット通販にしても、生産者は直接やればもっと売れるのではないかと考えがちだ。そこには自分の作っているものが一番うまいという自信がうかがえる。だが、生産はプロであっても、専門店のほうが販売面では一枚も二枚も上を行く。味は他人が評価するものだが、専門店は産地の食べ比べをして味を知っているからだ。だからこそ「むしろ小売店と一緒に頑張っていこうというほうが生き残れると思う」という確信めいた言葉になる。
産地(生産者)は販売するために一大消費市場である大都市をめざすが、実のところ「青い鳥」は近くにいる、熱意ある地元の店と組むのはより効果をあげる可能性があるということを日向農園の事例は示している。「秋に収穫できるおいしい果物を今生産者とともに探しているところです」。通貞さんはすっかり生産者の応援団になって笑う。
売れてくれば、より一層売れるにはどうするかと考える。それがネット通販であり、ネットの商品を拡大するためのオリジナル加工品であった。
2002年に日向夏の果肉入りゼリー、2003年に平兵衛酢ゼリー(平兵衛酢はスダチ。日向市の平兵衛さんの庭で見つかったので日向市では平兵衛という)、2004年にはマンゴーのプリンを予定している。これらはPB商品(味・容量・パッケージ等の商品開発は同店で行い、厳選した原料を外注先の工場に送り、生産されたゼリーは同店だけで販売)で、規格外の果物の利用、自社イメージの向上にもつながる。「昨年、マンゴーに傷みが出て、キズの部分を除けばとてもおいしいのに、キズがあるだけで販売できないということが残念でした。加工することで季節商品である果物でも知名度を年間保つことができます」
当面は卸をする予定はない。まずできる範囲で成功させ、次段階のことは時期がきてから考えるつもりでいる。 |
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■ネット通販で可能性が広がった
ネット通販も行うホームページ作成には最初から気合いを入れて取り組んだ。ボチボチから始めるというのでなく、どうしたら売れるかを考えた。そして、2001年にウェブサイトを立ち上げ、昨年は約1万個の注文が入った。
気を付けたのは
・注文のメールは自動返信し、内容確認など24時間以内に再度メールで確認する。
・法人需要をターゲットに、顧客から信用されるコンテンツを考える。なぜ法人かといえば、一般消費者よりもハードルが高いから。
・店のことをすべて知ってもらう。1年目は店舗、2年目は地方の果物店の日々、3年目は地域の活動やまちづくりをテーマに展開。
・毎日更新して情報を増やす。情報が多ければ検索にひっかかる確率も高くなる。
その結果、当初の予想以上に売れ、またマスコミ等に取り上げられる機会が増えた。よい方向へ転がり出せば、ますます弾みがついていく。
則貞さんは宮崎県商工会議所青年部連合会の会長も務め、店の外の活動もあれこれ忙しい。だが母の孝子さんも現役で、妻の真由美さんは経理と販売で店を支え、よき女性従業員(2人)もいて、店を安心して留守にできる(父親の則貞正雄氏は日向農園の卸部門を分離して青果市場を設立、その責任者として勤めていたが、数年前市場統合で公設になったのを機に市場を退職)。地域の行事にも積極的に参加していて地域からも愛される店になっている。
景気が悪くても良い店は業績を上げているのである。まだまだやり方しだいで果物店の可能性は広げられるのではないだろうか。
「南国リゾートの果物屋というイメージ」の新店は、入ったときに中庭があるスタイルにするそうである。店内は木目を生かし、オープンケースも木で囲んだものを特注する。新店舗のコンセプトや売場レイアウトは当初店の人だけでなく、建築士にも反対された。そんな店は見たことがない、うまくいかないというものであった。だが、則貞さんは専門店はかくあるべきとの理想があり、譲らなかった。店全体がディスプレイになり、夜も一部ライトアップする果物店というのは、日向市のランドマークになるかもしれない。
日向農園の新店舗は10月に完成するが、そのときを心待ちにしながらもまだおもしろいことはないか、他にもやれることはないかと常に考え続けている。
インターネットの時代だからこそ、店構えが信用されるはずと、思い切って投資した。働く人々が最も居心地のよい店になりそうである。しかし、店の人たちが働きがいを感じつつ楽しく接客すれば、お客のもてなしもさらに向上していくに違いない。
優良経営食料品小売店等全国コンクールに参加したことで取材が相次ぎ、旧店舗のよい記録となったことだろう。
今回字数の都合で盛り込めない事柄もあった。興味のある人は、(財)食品流通構造改善促進機構(経営指導部 電話03-5543-8023、FAX03-5543-8029)が同コンクール第13回入賞店のノウハウをまとめた冊子を600円(税込価格)で頒布しているのでごらんいただきたい。
(2004.4) |