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ジュース&クレープ ラランジャ
(有)伊藤くだもの店

〒460-0011 名古屋市中区大須3-25-27

伊藤くだもの店 9:00〜1800 年中無休
ジュース&クレープ ラランジャ 11:00〜19:00(毎月28日は11:00〜20:00)年中無休

大須はドーナツ化現象が進んで、夜は人がいなくなり、地元客が減って、それとともに果物の売上げが落ちてきた。それでなんとかしなければと思い、ジュースのテイクアウトの店を始めた。しかしジュースを飲む若い人たちがあまり果物を買って帰らないので、再びどうしようかと考え、クレープの店を始めた。アルバイトも含めて2店に従事するのは10人


 ●土・日・祝日は賑わう大須に立地
 
 名古屋市中区大須の万松寺通り商店街にある伊藤くだもの店を取材したのは1983年である。戦前から戦後にかけて名古屋一の盛り場であった大須は、隣町の栄に客が流れるようになり、大須に客を呼び戻そうと、大須大道町人祭などのイベントを催していた。大須の町を復興させたいと商店街活動に打ち込む伊藤寿昭氏が不在であっても、店は和子夫人ががっちりと守っていた。

 結婚して店を継いでからちょうど10年目の頃で、伊藤寿昭さんは「お客に便利さを提供する店にしたい」、和子さんは「四季折々の商品を通じてふれあいの店でありたい」と語っていた。二人はともに「基本に忠実に」「言葉づかいに気を付ける」をモットーにしていた。
 楽しい店にしたいと語っていたが、当時、伊藤さんが話した中で、今も強く印象に残っているのは、近代的な店づくりをする店が多いが、すごく昔らしい店にしてもよいのではないかという言葉である。1983年11月号の本誌には次のように書いてある。

 「改装したいという将来の夢がチョット変わっている。それは、できるだけ非近代的な店にしようということ。木造のつくりで、店内もどっしりと落ち着いた雰囲気、プライスカードも墨で書くようなイメージに。ある時はリンゴの木を置いてみたり、ブドウのツルで演出したり、できるだけフレッシュもぎたての果物を売るような工夫をしたいのだそうだ。
 また、これからは果物を量的に食べる時代ではないので、1〜2個でも気軽に買える店にしたいし、健康ジュースといった、お年寄りが飲みに来るのを日課にしてくれるようなものをいつか手がけたいと考えている。「人として生まれたからには、夢はでっかく。何かをやりたい」
伊藤和子さんは後継者と楽しく仕事に励んでいる

 このときの取材では、伊藤さん夫妻が学校から戻ってきた子供たちと一緒に家族6人で戻っていくのを見送っている。自転車の前後に幼い子らをのせた後ろ姿を見ながら「いいなぁ、こんな店」と思ったものだった。名古屋駅に近いこともあって、この後も何回か立ち寄ったが、店のことだけでなく、商店街についても熱く語ってくれた。商店街のことを優先するあまりに店のほうが心配されるほどだった。
 あれから20年近くが経過し、伊藤さんは50代で急逝された。だが、その後は子息2人が3代目として、和子さんとともに店を切り盛りしている。


 
果物屋さんの生ジュース

 伊藤さんが復活を願った大須は、パソコンショップや家電製品で有名な町、大須観音や万松寺などの歴史ある町、大道町人祭・大道芸・サンバカーニバルなどが行われる楽しい町、と様々な顔をもち、土曜日曜には若者であふれる「古くて新しい町」になっている。ファッション古着屋として有名なコメ兵パートIは、伊藤くだもの店の2店隣である。

 大須商店街全域で通行量は増えていて、伊藤くだもの店のある万松寺通りも20年前からすると、2倍の約2万人が訪れるようになった。インターネットのホームページ上で最も若者が集う掲示板サイトでも、大須は「名古屋人が誇れる場所」とされている。

 こんな好条件の立地を、ただ手をこまねいて見ているわけにはいかない。3代目の寿晃さん(兄)、綱規さん(弟/ラランジャ店長)は、若い世代にもアピールする店を考え、96年にジューススタンドを併設した。

 その後3年半の間に4回改装している。この日は弟の綱規さんが答えてくれた。
 「最初は店の一角に、ジュースのボトル4本で始めました。本当にコーナーという感じでちょこっとつくって半年やったら、これはよいというので、6種類くらいに増やし、次に果物売場のほうを改装しました。そうしたら、全体のバランスが変になったので、さらに改装して現在のようになりました」

 看板などは昔の「伊藤くだもの店」の名を残しているが、間口を果物売り場とジューススタンドとほぼ半々にした。果物は店内に入っていけるが、あとの半分はジュース用果物の加工コーナーで、ジュース希望者は通りで飲むことになる。このため、テーブルと椅子も通りにしつらえてある。アーケードがあるので、雨降りでも安心だ。
伊藤綱規さん(店長)

 ジュースは平日で6〜8種類、土・日・休日ともなれば10数種類が並ぶ。常時1〜2人がスタンドにいるが、多忙な日は3〜4人が朝から作業しないと追いつかないほど。バナナジュースだけは200円だが、ほかはすべて税込み280円。このため、マスクメロンジュースが安くてお得と紹介されるぐらいだ。

 バナナジュースはモンキーバナナ、モラドバナナ、エクアドル産ハートバナナなど数種類を使い、家庭のバナナジュースでは出せない味を提供している。
 
 日頃なかなか飲めないようなジュースを出しているのも特徴で、アボカドミルク、マンゴー、オレンジ&パインなどがある。このほか、仕入れの都合によって、季節のジュースを出している。

 手作りPOPには、果物の写真と効用が書かれていて、「今売れています」と表示されているとつい注文したくなる。また、店頭には、「フレッシュジュースBEST5」と書かれ、第1位アボカドミルク、第2位ミックスジュース、第3位オレンジ&パイン、第4位パパイヤミルク、第5位バナナリンゴと貼りだしてある。

「本当はベスト5なんて正確には数字がとれないのですが、迷う人のために年間によく売れるものを出しているんです。夏場は桃、すいか、なしなどが出てくるから、夏バージョンになるんですよ(笑) 

 要は、売りこみたいものを上位にもってくることだろう(なかなかグッドアイデア!)。ジュースを始めて雑誌や新聞でもよく紹介されるようになったが、アボカドミルクは度々取り上げられている。「果物屋さんの生ジュース」と銘打っているように、果物の旬と味を知っているから、他ではまねできないジュースを作り出せるのが強みだろう。洋梨、ザクロ、イチジクなど季節感あふれるジュースもその時期はとても好評だそうだ。

 「ジュースの味は誰でもできるようにレシピとして残しています。それに加えて、自分の舌で必ず飲んでもらうようにしています。最初にバイトに来た人には、半年くらいして自分で味見してよしと思えば出していいよといっています」
 ジュースを飲む人たちの目をひくように、店頭にはなるべく話題性のある果物を置くようにしている。

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●果物を食べてもらう試み

 99年11月には、現在の場所から徒歩数分、大須観音に近い通りにクレープのショップを出した。クレープのメニューは約30種類。生クリームにフルーツの組み合わせが基本だが、カスタード、生クリームとカスタードのミックスもある。

 いちご、バナナ、チョコ、キーウィなど定番品は250円、その上が280円、300円、310円、340円となっていて、最も高価なのは360円(いちご・あんバナナ、いちごチョコバナナ、いちごキーウィりんごの各ミックスタイプ)。生クリームに比べてカスタードは30円、ミックスは60円一律高くなっている。

 このほかクリーム増量やチョコトッピングなどはいずれも30円で注文を受ける。
 クリームは乳脂肪分18%で甘さは控えめになっている。その分果物の持ち味が生かされる味になっている。
 ドリンクがほしい人にはウーロン茶が50円と超サービス価格で提供している。

クレープのほうは責任者として任せられる人材がいるので、伊藤さん一家は果物店とジュース販売に専念している
春巻きのように四角く包んだクレープを三角の紙に包んで出してくれる

 また、ジュースとクレープをセットで利用できるラランジャチケットも割安感のある500円に設定されている。名古屋人が大好きな「お値打ち価格」である。

 ジュースは11〜3月の冬場に売り上げが下がるが、クレープは逆に30度を超える暑さになると売れ行きが鈍る。どちらも気温に影響され、年間を通して売れるのは果物だという。

 「専門店だから、いろいろ追うとわからなくなってしまう。クレープは順調に伸びてきてジュースと同じくらいの売り上げになるかなぁと思っています。以前は万松寺通りは平日閑散としていましたが、今では平日でも人が通るようになりました。土・日・祝日ともなると、ジュースは平日の2〜3倍、クレープは3〜4倍売れます」

 改装は繰り返しているが、外装や看板は昔の面影が残されている。約20年前、先代が「こういう店にしたい」と語っていたことが、後継者の代になって実現していたことに感銘を受けた。(2001年5月号)