山陽電鉄と市営地下鉄が乗り入れている板宿駅から徒歩1分のところにある板宿市場は、約1万uの敷地に東西南北に走る大きな通路で隔てられ、小売店約90店で構成されている。1950年頃より市場らしいものができていたが、松上さんの祖父上野一雄さんが提唱し板宿公認市場として1968年にオープンした。一筋離れた本通商店街や新町通商店街とあわせると全体では約300店になる。ダイエーは競合店でもあるが、共存共栄する形となっている。生鮮食料品を扱う店が多く、活気ある神戸の小売市場として知られている。
島田伸助さん似の松上俊士さんの好きな言葉は、「逆境にくじけるな」。青年会議では、店に対する悩みを率直に語った。同じ板宿市場の中に果物店が3店(青果店は野菜物の扱いとはっきり分かれている)あるという厳しい立地、丸恵から細見果物店がつなぐ通りのほぼ中間、東西南北の通りが交わる地点にある。
そこで、母親名義の店を経験40年のベテラン社員の吉田義和さんと切り盛りしている。上野商店では、母方の身内が市場の仲卸であるということもあって商品は安価に提供することを心がけている。「神戸の粗利は2割前後が相場なんですよ」というから、多く売り上げないと厳しい。
今回仲間の指摘を受けて、店を明るくし、棚の陳列を1段にし、ガラスの柱に貼ってあった不要なポスターを外すなど、出来る限り改善した
店頭の陳列台や、店内に飾られている人形などお客が作ってくれたものだそうだ。店、そして店の人にお客がついていることが伺えるエピソードである。きっと気さくな入りやすい店なのだろう。
松上さんは、柿のパックをそのまま積み上げるのでなく、ちょっとずらしておしゃれに並べるなど、細やかな工夫をしている。
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| ●どんな店にしたいか |
2000年11月7日に開催された日本果物商業協同組合連合会青年会議という若手果物店の会合で、松上さんが発表した内容です。 |
私は神戸の板宿という地域にある小売市場の中で商売をしています。店を継いで3年目ですが、店のことはすべて自分が任されています。周辺には果物店が多く、私が店が入っている市場の中だけでも3店、その市場の回りを囲むように数店の店があります。その中にあって自分の店が市場に買物にくる人々にどのように認識されているのか。自分の店の存在感をアピールするためには、どのようにすればよいのか、自分の店のあり方について毎日頭を悩ませています。値段がどこよりも安いといった安売りの店にしてしまうのか。逆に、値段は高くとも品質、味ではどこの店にも負けないという高級品の店としてやっていくのか。自分としてはなんらかの方針を決定していかなければ、この不景気の時代を生き残っていけないのではないかと思っています。ですが現在、中途半端な店づくりになっています。
というのも、お客様は市場に値頃感も期待し、一方で、スーパーなどではあまり扱っていないもの、つまり専門店としてこの店ならば商品に関して間違いないといった「店の信用」を求める人もいると思うので、そのどちらのお客様も捨てがたい。だから、どうしてもどんなお客様がきても対応できるような店にしたいという気持ちがあるために、中途半端になりがちなのです。このままではいけない、何かをしなければと思いつつ結局ずるずると3年が過ぎてしまいました。
そんなときに神戸青年部の会合で、将来の不安を口にしたのですが、それをきっかけに今回の話題が持ち上がりました。その中で青年部に所属している果物店をそれぞれが見て回り、お互いがチェックしあうのはどうかという話にまで発展し、そのときに私は迷わず手をあげました。
各店で立地環境や客層に違いがあるので、はっきりした答えは出ないと思います。しかし、自分の商売に対する考え方や方法など、いろいろな方向・角度から改めて見直すことができますし、指摘されたことを一つのヒントとして自分なりに変えていくことができます。その意味ではこの企画は自分の将来のステップとして行動に移せるすばらしいものだと思っています。
青年部のみなさんから指摘を受けたことをあげてみます。まず始めに一番多かったのは、「店が暗い」ということでした。そこで、スポットライトの当て方を変えてみたり、二段棚の上の一段を外して棚の陰をなくしました。多少すっきりして明るくなったように思います。
次に自分として一番つらかった指摘は、「何が売りたいのか」「何を売っているのかわからない」ということでした。つまり、季節感がない、旬の商品などメインで売る商品があまりにもごちゃごちゃしすぎてパッと見たときに目に映らないというのです。自分の店は結構広いので、ボリュームを考えて品物を並べていました。自分では仲間の店に指摘されるまで全く気づかなかったので、早速改善してみました。以前は旬の商品をより多く出し、端からS、M、L、2Lサイズなど1〜2列並べてごちゃごちゃしていたのを今は2〜3種類くらいにサイズを限定して並べています。場所を広げてSサイズの目玉商品を積み上げ、後ろは一段高くして1個売りの2Lサイズを置くようにしてみました。見やすくなったせいか、商品の回転もよくなったように思います。
それ以外にも多くの情け容赦のない指摘を受けたのですが、まだ改善しきれていない部分も多いので、目に見えるような良い結果は出ていません。とりあえず売上げを伸ばしたい。でも思うように伸びない。その中にあって、何をどうすればよいのか、自分がこれからどうすればよいのか、漠然としていましたが、この企画をきっかけに、いろいろな人の話、経験などを聞いたり、その人たちからみたうちの店の印象とか自分の主張とかを織り交ぜながら、今の状況をどう改善していくのかを考えていくなかで、これからどうしていくか、自分なりの理想も夢も浮かんでくると思います。
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神戸有数の小売市場の入り口で
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パワーあふれる陳列
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左から上山兼司さん、上山洋一さん、藤田勝久さん
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1992年に板宿市場すぐ入口の(株)丸恵を取材した折、昭和40年代前半(1965〜1970)には500g入りイチゴパックを1日で約9000パック売ったり、夏には500個ものカット西瓜を真夜中すぎまで販売したという話を伺った。当時と比べれば人出は約半分と嘆いていたが、さらにその後阪神淡路大震災もあった。仮設店舗で3年もかけて営業しリニューアル後、3年しか経過していない時だった。
「周辺の人口が3分の2以下に減少し、商圏も移っていった。この近辺はお年寄りの夫婦が多い」
朝から近所の人たちが買物にきてにぎわうのは、板宿市場ではごくふつうの光景だそうだ。朝10時頃に第一次ピークが訪れる。
丸恵は鮮度のよさ、ボリューム感で目をひく。売上げが2億円以上であったのが、ここ数年やや減少が続いている。それでも後継者がいるので、活気がある。次男の上山洋一さんが午前中保育所や小学校への納入に回っていた。
店を視察した同業者が「バナナの切り口を見ただけで、お店の果物に対する愛情が行き届いているのがわかる。ブドウの1房1房でも気配りされている」と評価していた。
旬の果物をかご盛りだけでなく、安価なものでも1個売りするなど、買物客が買いやすいような配慮をしている。マスクメロンも1500〜5000円と幅広く品揃えしている。
営業時間8:30〜19:00、店に従事する人6人、1日来店客数は500〜800人。平均客単価は700〜800円とのこと。
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細見果物店
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*神戸市 |
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営業時間:8:30〜19:00(木曜定休) |
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小売店舗ではそれぞれの店に客がついている。売場は小さいが、品質では他店に負けない。果物が生き生き
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細見琢美さん(中央)、春子夫人(不在)、昌美さん(左)、明子夫人(右)の2世代夫婦の営業
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板宿市場のたてに長い幅4mの通りの両脇に44店(うち37店が食料品を販売している)が軒を連ねる。果物店は、丸恵(駅側からの入口)、フルーツうえの(中間地点)、細見果物店(出口側から5店目)で、果物店がほぼ等間隔で並ぶ。
細見昌美さんは、仕入れを始めて5年たつ。「味にこだわりたい」が、「あまり高いのは売れない」というジレンマがあり、どのあたりの商品を扱えばよいかという線引きが難しいそうだ。旬のものなど主力商品を店頭で勝負するという販売になっているが、味と品質にこだわった品揃えは何よりもお客が一番理解しているようだ。「おいしかったよ」の言葉を何よりも励みとしている。好きな言葉は、「成功の半分は忍耐である」。
商品のPOPにはひとことメッセージを添えるが、なるべく味や食べ方については説明するそうだ。
3店の中では、最も間口が狭いので、500〜600円を買いやすい価格にして、陳列を工夫している。イチゴの時期には一斉に店頭がイチゴになるなど、季節感を最も重視している。やや昨年は下がったというものの家族だけの営業で1億円前後を売り上げるという好成績をあげている。
「市場全体は明日が定休日で、休み前はよく売れたのですが、最近は金曜日がよく売れます」と神戸果協の専務理事を務める細見琢美さん。
売場の狭さが欠点とならずに、対面販売がよく生きる買いやすい空間になっている。
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元気が出る商店街として必見の神戸新鮮市場の一角で営業
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田又政夫さん夫妻と田又善政さん(右)、善政さんは神戸果協青年部の相談役を務める
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神戸新鮮市場は、神戸電鉄湊川駅近く、湊川公園周辺の3つの小売市場と2つの商店街が連合体となって1990年に誕生したもの。500店以上が軒を連ねる生活商店街で、神戸最大の小売市場である。
(株)田又果物店が立地するのは、東山商店街入口で、生鮮食料品店を中心に150店ほどが並ぶ。ここも震災後の影響を受け、来店数は落ちたというが、1日に3〜5万人が訪れる神戸新鮮市場の中では最も人通りの多い商店街で9000〜1万5000人ほどの来街客がある。新商業施設も誕生し、アーケードが建設されるなど、着々と元の活気を取り戻しつつある。
日本で唯一ここだけで椿油を搾って販売する人や、七味だけを売る人など、マスコミでも数多く取り上げられている。
田又果物店の創業は1931年。小売市場ならでは、「安さと新鮮」をモットーにしながらも、数多い他店と差別化するためにも味と品質を心がけてきた。庶民的な雰囲気を出しながらも細やかな配慮で、整った陳列に高級感があふれている。ボリューム感を出すために、柿やみかんなど似たような色合いを並べる店も見られるが、ここは柿(橙)、林檎(赤)、マンゴー(黄緑)、グレープフルーツ(黄)と果物ごとに色のメリハリをつけているのが印象的である。
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