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ハンドルネームなにわのおっちゃん、あっこママのお二人でがんばってこられたフルーツ村まるえは、果物店が2002年10月12日(土)、隣のパーラーが2002年10月26日(土)に閉店しました。 黒門市場にこんなに素敵な果物店とパーラーがあったということを歴史にとどめておくために、このホームページは残しておきます。


フルーツ村まるえ

 大阪市中央区日本橋2-13-14

営業時間:8:00〜18:30 パーラー17:00 日曜定休

黒門市場のミナミ側入口。右側がパーラーでテントに「生ジュースの店」と書かれている。周辺の店も業務用需要が多いだけに17:00〜18:00に閉店する店が多い。

沖居義一さん、晃子さん夫妻。


  黒門市場のミナミ側入口で

 大阪のミナミに行って「黒門どこですか」と聞けば誰でも教えてくれる。

 地下鉄千日前線日本橋駅を出てすぐ、本通りが南北に伸びているのが大阪で名高い黒門市場である。黒門市場は明治末期まで日本橋にあった寺にちなんで圓明寺市場と呼ばれていて、圓明寺に黒い山門があったことから、後に黒門市場と呼ばれるようになったという。

 その歴史は古く、19世紀前半、魚の売買から始まり、1902年(明治35年)に公認市場となっている。1912年の浪速の大火災(このとき圓明寺も焼失)、1945年の第二次世界大戦で焼失したが、戦後めざましい復興をとげた。「中央市場に行かなくとも黒門に行けば」といわれるほど活気のある市場になり、「大阪の台所」とも呼ばれてきた。ミナミの繁華街が近く、昔から業務用小売の多いことが特徴である。

 スーパーが全国的に隆盛だった70年代にも黒門は客足が伸び悩む程度で踏みとどまり、80年代以降は対面販売のよさが生かされ活気を取り戻していたが、ここへ来てやや低迷しているという。

「37年間商売しているけど、こんなに売れないなんて経験したことがありません。ここにきて、商売のやりかたが間違っているのかと不安になる毎日です。黒門市場内の店主や仕入れ先の人、得意先の人に聞いても同じ答えが帰ってきます。不安、不安、こんなぐちを言ってもしかたないねんけど、つい言ってしまう。(略)

 それでも、なにわのおっちゃんは頑張るデー」「なにわのおっちゃん」とはパソコン通信をするときに用いているハンドル名。実は黒門市場のミナミに近い入口で果物店を営業しているフルーツ村マルエの経営者、沖居義一さんである。数か月前に沖居さんは果物店仲間のパティオでつい弱音をはいた。だが、その真相も店を訪問して話を聞いてわかった。ミナミの繁華街の客足が減ったため、飲食店が軒並み売上げダウンし、そのあおりをくらって業務用取扱いが多い黒門市場もかつてないほど低迷しているのだ。だが、「なにわのおっちゃん」が言うと、あまり深刻味は感じられない。実際に訪ねてみて、この店ならばどんな不況でも乗り越えられるという気がした。それは、黒門市場のキャッチフレーズにもなっている「ええもん、うまいもん」を扱っているからである。

 7月号で黒門市場のホームページ内で紹介されている沖居さんの文章を掲載した。

「新鮮で、おいしい果物なら、まかしといて! 少し位、値段は高くても、おいしいものを少しほしいねんと思っている方、まかしといて! おいしい果物ジュース飲んでみたい人、まかしといて! 店内で飲めまんがな、食べれまんがな! 怪しげなパーラーで!」

 黒門市場のホームページでは、鮮魚40、青物・果物11、肉8、菓子等7、その他食料品24、飲食8、衣料品15の店が写真とコメント入りで紹介されている。その中でも上記のフルーツ村マルエの自店PRは客を店までひきつけるパワーをもっている。そして、「怪しげなパーラーで」という言葉以外は、まさにここに書かれてある通りである。

 マスコミで話題のパーラー

 初代は戦後(父・一夫さん)、青果業を始め、やがて鮮魚も扱った。次第にミニスーパー的な形になっていったが、2代目世代に任せようと75年に店を分け、長男の義一さんが果物店を担当、店に向かって左隣が弟の康弘さんが経営する鮮魚店、向かいがのれん分けをした青果店となっている。

 果物店の右隣のスペースは、初代が皆に経営を譲った後も乾物を商っていたが、「しんどくなって」やめることになり、果物に関連のあるものとしてパーラーに取り組むことにした。

若い女性も情報誌を見て来店する。「おいしい」を連発し、互いに食べ合っている客の反応を見ていると、口コミでの広がりも納得できる。

「いちごばたけ」や「バナナボート」などオリジナルメニューは写真入りなのでよくわかる。

 始めはメニューも少なかったが、「これはいける」と手ごたえをつかみ、パーラーの奥半分を広げ、メニューも増やしてきた。といっても、細長いスペースなので、16席しかない。だが、ここは名物メニューがテレビでも度々放映されるなど、難波界隈では「ちょっと知られた店」なのである。

 このあたりを沖居さんがパソコン仲間にメッセージした文章から引用させていただこう。

「パーラーを始めて12年になります。始めはてっとりばやく100円、200円のジュースの店をやろうかなと思ったんですが、同じするならジュースの極みをめざして、徹底的に勉強をして、また果物にこだわって店を造りました。お陰様で小さな店なのですが、口こみから口こみにひろがって、大阪では、食べ歩きの本や、JRの大阪のくいだおれの本、その他いろいろの本に載せてもらっています、あまり自慢たらしくゆうつもりはありませんがテレビにも何回かでました。ほんとに自慢になるようなことではありません。しかし本をみながら若い女性がよく来店をしてくれます。今となってはよくこの店を造ったな−といつも思います。

 ですから、普通の喫茶店、パーラーにはないメニューがたくさんあり、季節、季節によりころころ変わります、ちなみに、ヤシの実ジュースとか、メキシコ人に教えてもらったアボカドジュースとか、オリジナルなざくろジュースとか意外と人気のある三宝柑ジュース、うちの店にしかないフルーツを7種類を入れたモーニングサービスとか、いろいろやっています、けっこうおもしろいですよ」
「とにかくお金もらうからには、お客さんに納得してもらわんとお金なんかもらえるかいな。そうゆう意味では大阪はきびしい」

 とにかくお金をもらえるジュースを、と研究してきた結果が数々の名物ジュースになった。

 アボカドジュース(500円)はメキシコの家庭でごくふつうに作られるジュースを教わり、アレンジしたもの。飲みやすく、おいしいと大好評である。

 マンゴージュースは、商品を納めている喫茶学校の友人から作り方を聞き、応用したもの。

フルーツにどんな効用があるか、とか「柑橘がガンに効く」などの新聞コピーが壁面に貼ってある。

対面販売でなにわのおっちゃんの元気さが伝わる。

 オレンジ、グレープ、メロン、レモンといった定番商品のほかに、夏ならばモモ、ブドウ、スイカ、巨峰などの季節のフルーツも出ている。

 6〜7月頃には、生のヤシの実ジュースが大人気。「3年前にNHKテレビでヤシの実ジュースが紹介されて、いっきょに1000個くらいの注文がきました。この売り上げを別勘定でよけておき、パソコン(MAC)を買ったんです」とパソコンを購入した「裏事情」を説明してくれた。

 テレビでよく紹介されるのが「持ち帰り」も扱っているかき氷。オレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの果汁をかけたものが人気が高い。

 モーニングサービスも特徴を出している。フルーツの小盛りにコーヒー、または生ジュースがつく。トーストセットはフルーツとコーヒー、バタートースト。あくまでもフルーツにこだわったメニューを提案する。メニューは約50品、パフェ類などは写真入りなので、すぐにイメージが伝わる。
 店内壁面はフルーツの栄養などのPOP、それに8月号に掲載した北川先生の「ミカンが日本を救う」といった内容の新聞コピーが貼られている。

 若い女性2人が店奥に陣取って食べている間にも壁面を見ながらの話題になった。「人気があるんだよ、ここ」「おいしい〜」「グレープフルーツって疲労回復、風邪予防になるんだって」。
若い人も栄養には十分関心があるようである。

 パソコンをPOPにフル活用

 栄養や商店街の案内などのPOPやプライスカードはすべてパソコンでの手作り。イラストなどを入れて、見た目もきれいだし、読みやすい。店構えはオープンで、庶民的な感じだが、POP類がきれいだと、果物も高級感がより増してみえるから不思議だ。

 プライスは1日の間に変更になるときがあるが、その場合でも時間がある限り50m離れた自宅に戻ってプリントしてくる。

 黒門市場ではまだパソコンをもっている店自体が少なく、若い店主たちからは「教えて」と声をかけられるそうだ。

コンパクトな売場に高品質な旬の果物を揃える。

黒門市場のイベント紹介

 贈答品のしおりなど多彩に作成できるので、沖居さんにしてみれば「果物店には必携ではないか」と思われるくらい使い込んでいる。

 黒門市場は人口密度が低くなって、いわば繁華街の業務用小売が多いが、マルエも例外ではない。業務用は約2割を占める。マルエの1日はパーラーのモーニング客が一段落すると、近くの道具屋街、でんでんタウンといった問屋街からの客が買いにきて、一般客は午後に多いといったパターンになっている。

 店は沖居さん、晃子さん夫妻が主に従事し、パーラーは外部の人に手伝ってもらっている。パーラーの入口は別だが、果物売場とパーラーは脇でつながっていて、店の人間は自由に行き来できる。

青果店が多いだけに果物は高品質のものを扱い、季節に応じて「奈良より直送、もぎたてイチジク」などの直送品で特徴を出している。経営方針は「おいしかったよと言ってもらえること」と、明快である。

 店頭には出さなくとも、業務用需要に応じられる態勢はとっている。夏の時期にイチゴを求めてやってきた客もいるそうだ。

商品のPOPもすべて手作り。

 黒門市場とともに歩む


 黒門市場という大きなバックボーンがあるだけに、実は黒門市場の活性化が沖居さんにとって最も気がかりな点である。その1つが年1回開催される黒門の夏祭り。年々祭り自体が寂しくなってきているように感じている。

「黒門には、戦災をくぐり抜けて、今なお高津神社に眠っている大みこしが2基あり、みこしをかつぐのに100人は必要といわれています。これを7月17〜18日の高津の大みこしとして、7月24〜25日の天神祭りと9月14〜15日の岸和田のだんじりとともに、関西の3大祭りとして残していけないものかと夢みています」

 黒門だけの祭りでなく、地域住民全体を巻き込んでいこうという構想である。

 店には黒門市場のキャンペーンやイベントのお知らせがオリジナルPOPで紹介されていた。沖居さんは、店の発展は市場とともにあるという意識で黒門市場のことを熱っぽく語ってくれた。

 閑散とした繁華街のあおりを受けて、今少々黒門市場は元気がないが、それでも「なにわのおっちゃん」の店は元気である。店の果物が何よりもそれを物語っている。
 ファイト、おっちゃん!