宮崎へ行く機会があればぜひ訪れたいと思っていたのが、1999年度の優良経営食料品小売店等全国コンクールで入賞したフルーツ大野である。何にそれほどまでひきつけられたって? それは、パーラーでフルーツの加工に取り組んでいる姿勢にひかれたからである。まず、この店のノウハウを記した第9回経営ノウハウ集((財)食品流通構造改善促進機構発行)から、その部分を引用してみよう。
【果実のままでは消費者ニーズを充足させられない。消費者はおいしいものを、ちょっとずつでよいから手頃な価格ですぐ食べたい」ということが顧客とのコミュニケーションを通じてわかった。店の全員でフルーツの具を工夫しながら、消費者の嗜好にそって「さっぱり味」に仕上げるようにしている。
フルーツパフェ:旬の果物をパフェに用いて、常時10種類(650〜1000円)のメニューを用意している。極力豪華に印象づけ、中程にマンゴー、パパイヤ、スターフルーツ、ブドウ、日向夏、スイカなど、旬のものや高級なもの、珍しいものを味見をしてもらう意味でも入れている。また、健康によいとされるハーブの種(スイートバジルシード)やアロエのシロップ漬なども入れている。イチゴを上から下までたっぷり入れたのも顧客の要望を入れたものである。】
そう、このフルーツパフェが食べたかったのだ。場所は宮崎市内の繁華街の一角で、大通りから一本入った通りだが、ワシントンホテル周辺で「フルーツ大野」と道を聞けば地元の人はわかるはず。店に入って左半分が果物、右半分がパーラーになっている。
■豊富なパフェ類
メニューを見てびっくり。
ごく一般的なパーラーならば、せいぜいフルーツパフェ、チョコパフェ、いちごパフェ、バナナパフェくらいだろう。ところが、驚くなかれ、パフェと末尾についているメニューが、柿、日向夏、メロン、キウイ、ブドウ、マロン、マンゴー、ワッフルコーン、抹茶ゼリー、高くても1000円で、トロピカル、マンゴー、パパイヤ、ドリアン(一体どんな味だろう!!)。 |
果物は贈答用中心で年配の女性が多く、パーラーはOLや学生が多い(パーラー側から果物売場方向) |

珍果が味わえる機会になるパーラー |
この日は季節のメニューとして「たまたま金柑のパフェ」も登場したばかり。期待に違わぬメニューの豊富さだが、一度に食べられるわけにいかないのが残念だ。フルーツパフェを注文しようと決めていたのに、迷いに迷ってしまう。
店主の大野勝市さんに「どれが人気がありますか」と聞くと、「年間を通してだとフルーツパフェです。12月から4月頃まではいちごパフェですね。いまはオーストリア産マンゴーを使っていますが、4月頃になると宮崎マンゴーを使いますからマンゴーパフェがおいしい。今はパパイヤも完熟しているからおいしいと思います」
宮崎産果物をパフェにし、よそにないものを出していきたいそうだが、日向夏も、たまたま金柑(糖度18度以上のブランド)も最高級品を用いているから、採算に合わないのではないかと心配になってしまう。
「いちごパフェは当初イチゴだけを入れていたら、それでは飽きると言われて他の果物も入れました。途中で他の果物を口にするとホッとするらしくて…(笑)」。生クリームを少なくして、といったお客の要望に応じられるのもアットホームな果物店の雰囲気があるからか。
イチゴは上のほうには甘く、形がよい章姫、中央から下のほうには。甘く、身がしっかりしているさちのかを入れている。こうしてこだわりを示せるのも果物店ならでは。上にのせるイチゴは地元の生産者に頼んでツルを付けてもらったそうだ。 |

ツル付きイチゴがのる
イチゴパフェ |
■見て、食べて楽しめる
迷った末、最初に目にとびこんだトロピカルパフェを注文。
すると、見よ。この豪華さ。ランブータン、マンゴスチン(これらは生があるときは生を使用)、キーウィ、パイン、マンゴー、バナナ、グレープフルーツ、オレンジ、パパイヤなどが入っている。見て楽しめ、思わず歓声をあげてしまう。「若い人は携帯で撮影していますね」というのも納得。
トロピカルフルーツは高級品であるし、珍果を購入するのは味がわからないので決断が要るが、パフェにすれば様々なトロピカルフルーツを味わえる。果物売場でトロピカルフルーツを販売し、最も美味な時期に加工に回せるからロスにはならない。パフェの味が即、店で売っている果物の味ということになる。したがって、トロピカルフルーツパフェといっても、メニューレシピが細部にわたり決まっているわけではなく、季節の珍果が楽しめることになる。
見た目の豪華さとボリュームにまず感激、多種類のフルーツ(フルーツパフェで約15種類)が入っているのにまたまた感激、おいしさに満足といった具合である。
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トロピカルカフェ |
ジュース類も10数種類ある。
おもしろいメニューとしては、チーズフォンデューにヒントを得たチョコフォンデューがある。フルーツをホットチョコレートに漬けて食べるものだが、2人で1皿を頼むケースが多い。バレンタインデーには人気があるそうだ。
この店ではあくまでも果物屋さんがやっているフルーツパーラーというイメージがあり、フルーツがふんだんに入っていて店売りと同じ味が楽しめるのが来店客にとってはうれしい。
オリジナルフルーツケーキは、パーラーで人気があったメニューで、予約注文に応じている。約15種類ものフルーツを使った円形のケーキは、15cm(1500円)、18cm(2300円)、22cm(3000円)と3サイズある。
とはいえ、こうした高いメニューばかりでなく、同業者が行けば、「これで採算がとれるのか」と思わずききたくなるフルーツ加工品も数多くある。

店入り口のメニュー |

値頃感のあるフルーツ加工品 |

果物がふんだんに使われている |

特産の日向夏を使ったゼリー |

壁面に写真入りでメニュー紹介 |

新商品も写真入りでよくわかる |
当店人気ナンバーワンというイチゴカップは、地元の「さちのか」をふんだんに使用し、尾鈴産と原産地表示までされている。これで300円。フルーツのクレープはキウイ、バナナ、パパイヤなど約7種類、各150円。売上げの7%を占める。
日向夏ゼリーが130円、グレープゼリーが200円、ハーフカットしたポメロが250円では、店売りの生果の半値とほとんど変わらない。
「ま、いいか〜。生活していければいいという考えなんですよ。味を覚えてもらうために始めましたし、これでなんとかやれてますから。いまのお客様はそのままでは食べない。ポメロも皮をむいて出すと売れるんです」と大野さん。話しぶりがサラリと自然体である。
内容と値頃感で地域におけるオンリーワンの店といえるだろう。「値段で良心的な店だというのは必ずお客様に伝わるようです。うちはケーキ屋さんが果物を仕入れるのとは違うので、その分安くで作れる。生クリームは果物と合うものを選んでいます。夏には宮崎の地場物を使ったアイスクリームを作ってもらおうと考えているんですよ」。地域の情報誌にも紹介されるようになり、冬場以外は週末に行列ができるほどになった。
行列対応策として、開発されたのがワッフルコーンパフェ。
「持ち帰りや食べ歩きもできるということで売り出したのですが、食べるのに両手がいるので荷物をもっていると食べられない(笑)。スタンドに立って食べてもらっています」
ケーキ類は全部手づくり。朝9時頃から作り始める。新メニューは本を見たりしながら研究し、みんなで食べ、話し合って意見をワイワイ出しながら考案するのだそうだ。大野さんはケーキの修業はしていない。だが、全国各地の評判店を視察し、話を聞いて、自らも研究し、ここまでの店をつくりあげた。これは果物店におおいに勇気を与えてくれる事例だろう。
トロピカルフルーツのように、高額であるためにロスになりやすい果物は、通常で20%ほどの粗利のところ、加工すれば50%近い粗利をとれる。ジュースよりもパフェ類のほうが手間がかかるが、メニューとして差別化がしやすく、パフェ類は約半分を占めるパーラーの売上げの8割を占めている。
■果物売場は品質重視
売場面積(約56u)の半分以上はパーラースペースだから、果物の陳列は絞られる。しかし、宮崎市内でも最高級品を扱っている。マンゴー、日向夏など特産の贈答品を扱うほか、イチゴやリンゴなども種類を豊富に品揃えしている。
周辺が繁華街だけに夜来店する人も多く、営業時間は11:00〜23:00まで。デザートだから食事をしておなかいっぱいでも、別腹ということで女性客が多く来店する。納めもクラブで使う果物(パインなど)はカットして渡し喜ばれている。歓楽街がひまになってきているので高いものは敬遠されるようになり、200円の加工品をまとめ買いしていく店もある。
大野さんは自分が起業しただけに、「店」のありがたさを痛感している。
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青果仲卸会社に6年間勤務したが、健康を損ねて1982年4月に現在地の斜め向かいに店をもった。わずか15uほどの店で10年営業し、92年に現在地に移転した。
「最初の店も苦労しましたが、この店も初めは1日の売上げが1万円くらいしかないときもあって今月は50万売れた〜と喜んでましたよ。でも、あきらめずよいものを継続して扱ったのがよかった。軌道に乗せるのに1年くらいかかりました」

入ってすぐに宮崎県の特産果実 |

高品質な果実を扱い続けてきた |

贈答需要も多い |
果物販売は約6割が固定客で、そのうち業務用需要も4割と高い。売場用に仕入れた商品をパーラーに用いていて、仕入れは宮崎市中央卸売市場を中心に、地元優良産地をもっている延岡市場や佐賀市場、果物店の紹介で取引が始まった東京大田市場の仲卸、大阪市場などを使い分けている。宮崎市場には毎朝行って、個人出荷のものなど自分で納得した味を仕入れている。
夜は11時まで店に出ているので、帰宅して就寝は1時頃、朝は6時に起きて仕入れし、9時には店に出るという生活が続いている。夜の21時〜22時前後の客が多く、それにつれて果物の売上げも上がるそうだ。また、営業開始時間をこれ以上遅くすると、果物の一般のお客に影響があるので、9時にシャッターを開け臨機応変に対応できる態勢をとっている。
大野さん夫妻とアルバイト3人。この時期、店主夫妻が風邪で体調不良になり、アルバイトの人たちが頑張って仕事をこなしていた。
「風邪をひくと1か月くらい治らないんです。体にはどうしても無理がくるので、少しのんびりとマイペースでいこうと思っています」
大野さんの家族は高齢の両親が健在で、104歳の祖母もいるそうだ。今後、彼らの介護をどうするかが、店の経営と同じぐらいに重要課題になりつつある。どこの店にもそれぞれの悩みがあるが、現実をそのまま受け止め、むしろ「がんばりすぎない」こと、自然体であることが大切ではないかと思えてきた。
フルーツは、おいしく、珍しく、すぐ食べられ、手頃な価格であれば売れるということを実証しているような店である。「お客様に得をさせる」ことが、結局は自分の利益をつながることを教えてくれる。
だが、最後にひとこと。くれぐれもお体を大切に――。
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