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日経流通新聞でも紹介されました(2000.7.18)

(有)尾張屋果物店

 大阪市城東区鴫野東3-2-26

営業時間:07:00〜22:00

近隣にスーパーの進出が厳しくなった中で、高級品から普及品まで幅広い品揃えで健闘する。

仕入を担当する後継者雅朗さん、大崎一治良さん、和子夫人、親戚の北井幸子さん。ベテラン店長丹羽計弘さんはこの日休み。年中無休なので交代で休みをとる。


 大阪のJR環状線京橋駅で学研都市線に乗り換え、鴫野(しぎの)駅で下車、南へ徒歩数分の南鴫野商店街入口付近に尾張屋果物店がある。98年優良経営食料品等小売店全国コンクールで食流機構会長賞を受賞した。
 
 わずか16uの売場面積で最高1億5000万円の売上げがあった。このところの景気低迷により売上高は減少ぎみだが、経常利益は上昇させている。このバイタリティーはどこから生まれてくるのか。どんな販売をしているのか。不況でも「やり方次第で繁盛店になれる」という見本のような店である。
 
 一見すると、平台陳列の昔ながらの果物店。陳列台が低いので安さを売り物にした販売をしているかのように見える。確かに安い。だが、100〜700mにスーパーや小売市場が4店あって安売り合戦を繰り広げている状況では、高級品だけに絞った品揃えは不利になる。

「40年前に冷蔵ケースとレジを入れたら、売上げが減って平台陳列に戻した。この立地では平台陳列で対面販売がベスト」と経営者の大崎一治良さん。店構えは庶民的でも品質で勝負との経営姿勢を貫いてきている。

 この店で興味深いのはスーパーのどこよりも安い価格のものもあれば、1個数千円というマスクメロンが箱単位でも売れることだ。1盛り1000円のミカンしか買わない客もいる。「あの店は安いけれども、高級な果物も置いている」というイメージが定着して地域一番店になっている。駅前のスーパーがLサイズの柿を1個100円で売る時期に、尾張屋は商店街の特売セールで奈良産3Lサイズを100円で売る。勝負は明白である。
 
 品物に加え、大崎さん夫妻、後継者の雅朗さん、勤続31年のベテラン店長、女性社員2人の豊富な商品知識に裏付けされた接客技術が売上増に大きく貢献している。「買わなきゃ損」「あれもこれも買いたい」という気にさせられ、買物の楽しさも味わえる。売れるから商売も楽しいということになる。

 ●豊富で幅広い品揃えの秘訣
 
 店頭の平台を見てびっくりするのは幅広い品揃えだ。品種や産地といった種類も豊富だが、それらをさらにパック売り、箱売り、1個売りなどと一般消費、贈答用、衝動買いなど幅広い需要に対応できるように、販売単位、価格帯を細かく分けているところに特徴がある。

 富有柿、刀根柿、平核柿、江戸柿、次郎柿と幅広く品種を扱うのは、大阪が東京と同じく全国から人が集まってきているからだとか。それらがとにかく安い。

 取材当日(11月16日)奈良県産西吉野の柿が5〜8個280円という安さ。個数にばらつきがあるのは大小様々入っているからである。これらは産地の特定生産者に選果をせずに20kgのコンテナ箱で出荷してもらい、それを当店で様々な値段にパックし直している。

 生産者から南向きの木の一番よい部分だけを選果しないで当店に回してもらい、生産者の手間が省けた分、安く仕入れ、当店で手間をかけ利益をあげている。傷果や小さいサイズは安売りパックに回り、良質なものは大きさを揃えて、1個売りや贈答にもなるパック品で販売する。

 格安の品は店頭手前に置き、贈答になるものは中央の売り台というように同じ柿でも陳列を離しているのがミソである。ミカンもハウスミカンは贈答用のスペースに置かれている。売場の2ヵ所に置かれていても、客は不思議に思わずに買っている。真ん中の売り台に置かれているのは高級品という意識がインプットされているのである。

「果物はロスになる分をいかに売り切るかが大切。その意味で柿は傷があっても、やわらかくなっても売れるドル箱商品(笑)。では、なぜ他の店でやらないのかといえば、コンテナで仕入れて仕分けするのはとても手間がかかるから。でも、仕分けの手間を自店でかけることにより、うちでは安売りの品から贈答パックまでまかなえる。味には自信があるから絶対売れる」

 リンゴは7〜8種類を1個売り、盛り売りで対応する。

 「リンゴでもその人の味覚により甘酸、硬軟、好みが違う。好みに合わせたらこれだけの種類が要る」。弘前の産地市場に出回る原箱ごと仕入れることもあった。これから地方発送のシーズンに入るが、長野県の人から送ってと頼まれることもあるほど。

 ミカンも早生、ハウス、ふつう温州など3種類を250〜1000円まで5ランクに分け、「大きくて甘い」1個売りもしている。この中でも選果せずに入っているミカンは糖度も高い。ミカンがわずかに押されるので7mmだけ段ボール箱を高くしてほしいと要望し、3日後には実現させてしまったこともある。要は、それだけ発言できるだけの量を売り切るということである。

 イチゴは産地パックのほか、近郊産地より木箱3kgを仕入れて顧客の希望するだけの粒数をバラ売りもする。これは仕出しや料飲店などからとても喜ばれるそうだ。

 こうした販売は大阪東部市場との相互協力関係から成り立っている。生産者が特定されていても産直でなく、あくまでも市場経由で仕入れるようにしているし、卸売会社や産地から頼まれればできる限り協力するようにしている。

 島根県産西条柿や長野県産の新品種のスイカなど、キャンペーンを兼ねて販売を頼まれることも多い。西条柿は試食品も提供してもらい、また、スイカは11月前半までカットスイカで販売した。産地の試験的な販売にも協力し、アンテナショップ的な役割も果たしている。

 大阪地域でキンショーメロンを普及させたいというときには産地も手伝いにきて2日間で400ケースを売った実績がある。

コンテナ箱で入荷した柿。値段の上下はあるが、それでもどこよりも安く提供できる。

産地から応援が来てキャンペーン。ここから大阪全域にキンショーメロンが広まっていった。

 客に喜ばれる販売

 客に喜ばれているのが1個売り、小分け売りである。キウイ、ミカン、バナナなど1個でも買えるという商品が多い。サクランボも高い時期には小分けして販売した。あくまでも顧客が買いやすいと思う値段に設定している。

 また、近年気をつけているのが安全性を重視した果物である。雅朗さんに子供が生まれて、より一層「安全性」を意識するようになった。「うちの子供でも食べている」というのが売りの決め手になっている。

 イチゴ、ブドウ、イチジクなどそのまま口に入れるものはできる限り低農薬栽培の果物を扱うよう心がけている。イチゴは「宝交」だからとびきり美味だ。これらは近郊の生産者に農薬を使わないように頼み、生産者から荷を運んでくれる「かつぎ屋」を利用して仕入れている。「かつぎ屋」は大阪地域ならではのものだそうだ。

果物の加工見本を出しておく
 
 健康ブームでザクロやカリンが売れている。そこで、同店では果実酒や砂糖シロップ漬をサンプルに出し、対面販売でつくり方を教えている。

 カリンのシロップ漬は、氷砂糖の上にスライスした果実をはさみながら瓶いっぱいにすると、カリンのエキスがしみ出して氷砂糖を溶かし、瓶の底に沈んで3分の1くらいの分量になる。その上にさらに氷砂糖と果実をのせていくという作業を2回ほど繰り返し、数日間かけてつくる。

「こういうものでも置いておくと、どないすんねんと聞かれ、こうやって作るんですよと言うと、そのまま売ってくれと言われる」。こうして加工品も売れるようになった。完成まで数日かかる間、壁面に飾られているが、13本あるうちすでに11本が予約ずみだった。

 このほか、イチジクのワイン煮や洋梨のコンポートなどをつくり、サンプルとして出している。「ここまでやったけど、次どうすんのん」とやってくる土地柄である。調理見本を出し、加工方法を教えることで、本来は売りにくい商材の販売が伸びている。

 秋になると季節感を演出するために、干し柿ののれんが下がるがこれも自家製だ。産地からコンテナや箱で大量に入手した渋柿を加工して自宅のベランダに干し、半乾きになったものから順次店に吊しておく。すると次々に買い手がつき、予約取置きの意味で購入者の名前が書かれた白い札が下がる。6〜7個くらいで1000円だから、自家製の強みをいかんなく発揮している。このほかに市田柿、あんぽ柿、ころ柿など各種干し柿を販売する。おもしろいのはこうした販売を見て渋柿まで売れるようになったことである。

効能が話題のザクロは店頭に置いておくと回転率が高い。加工品を展示しておくと効果がある。

支店(写真は98年8月撮影のもの)ではジュースも販売。

 同店では最近倉庫を改良して商店街の50mほど離れた所に10uほどの支店を置き、果物とジュース(4〜11月)の販売をしている。ジュースは家庭でもつくってもらうことを目的にしているので、メロン、ミックスジュースが定番で80円、季節によって苺ミルク、レモン、マンゴージュースなどが出るが、どれも格安で提供し、タイムサービスではなんと50円のジュースも出る。

 「早起きは三文の得」早朝営業で顧客獲得

 同店の営業時間は朝7時から夜10時まで。90年から早朝営業を始めた。一治良さんが早起きをするため、店を開けてみたのが発端だったが、リンゴ1個、ミカン数個、バナナ数本という単位で通勤客に売れるようになった。こうした小口の買物客が週末には車で盛りかごを買いにくるようになり、まさに「早起きは三文の得」が商売にもいえる結果になっている。

 『週刊文春』に上前淳一郎氏が連載している「読むクスリ」でも95年6月29日号で「朝の果物は金」として紹介され話題になった。それだけ早朝の営業は珍しかったのだろう。夜は10時までの営業も、仕事帰りの近所の人に重宝がられている。

 そして、基本的には年中無休である。年に2回、盆・暮れだけは休業するので、その前に半額で「売り尽くしセール」を実施するのが、早朝から行列ができるほどの名物になっている。「半額なので売上げは上がらない」と謙遜するが、それでも1日の売上げが80万円に及ぶ。北へミカン、南へリンゴという地方発送も多く、「宮崎のマンゴー」など百貨店で見てきた客が問い合わせをする要望にも良品安価でこたえ、まさに「果物の何でも屋さん」。景気が低迷していても、500円で売れないものは250円にして2品買ってもらうなど客の心理をくすぐるように徹底的に販売の工夫をしている。

 「商売は定年がなく、楽しく仕事ができて幸せ」と後継者の雅朗さん。専門店が減ってきたから、果物の目利きができるというプロの技量を発揮したいと張り切っている。この元気を日本中に蔓延させたい。

夏はスイカとイチジクが季節の風物詩になる。