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くだものタカミヤは、2001年12月に閉店しました。でも、このページは大阪中之島にあった果物店の歴史として残しておきます。 

くだものタカミヤ
(株式会社 朝日ビル タカミヤ)

大阪市北区中之島3-2-4 朝日ビル1F

営業時間:9:00〜18:00(日・祭日、第2土曜定休)

創業は1946年1月。営業時間9:00〜18:00。ビジネス街のため、土曜日は9:00〜15:00。休日は日曜・祭日および第2土曜日。1995年に改装している。

高宮邦太郎さん(左)、長男康太郎さん。父は明治屋、息子は新宿高野で修業した。


   大阪中之島は、淀川の支流となる堂島川と土佐堀川の間にある地域で、大阪市の経済、文化、行政の中心地として発展してきた。周辺には、国際化や情報化に対応した高度な業務施設が建設される再開発プロジェクトが進行中で、今後情報化最先端をゆくビジネス街として変貌をとげることが期待されている。
 
 タカミヤはそんなビジネス街の一角にある。地下鉄四ツ橋線の肥後橋駅4番出口を下車して数分、朝日新聞社の入っている朝日ビルの一階で、贈答用果物とフルーツパーラーを半世紀以上営んできた。
 
 「私の父は千葉県佐倉市出身で、巨人の長島監督と同郷というのが自慢だったんです。銀座千疋屋に奉公し、戦前に銀座千疋屋の大阪支店長として朝日ビル内の店に赴任してきました。けれど、戦争が激しくなって商売できなくなった後も父はこちらに残ったのです。終戦後、朝日ビルの社長が、高宮がやるのなら場所を貸してやろうということで、父が昭和21(1946)年にタカミヤをオープンさせました」(高宮邦太郎さん)
 
 当時から店名はタカミヤというカタカナ書きだったそうだから、かなりモダンな店だったろう。現在店を引き継いでいるのは2代目社長の高宮さん。明治屋で3年間修業し、1963年に戻ってからは阪神百貨店地下のフルーツパーラーを主に担当していたが、先代が亡くなった1989年に現在の店に集約させた。後継者の康太郎さんは1992年に大学を卒業後、東京の新宿高野で3年間、主に百貨店での果物販売に従事し、戻ってきた。現在は高宮さん、康太郎さんが柱となって、女子社員1人、パート2人、助っ人的に高宮夫人、臨時パート1人といった陣容で、常に5人ぐらいで店を切り盛りしている。

 ●得意先へFAXで果物情報を送信

  ビジネス街であるだけに、顧客はほとんどが法人関係になる。このため、果物は贈答用の高級品に絞り込んでいる。
 
 仕入れは主に大阪市場から。かつては先代からのつてで東京市場から仕入れた商品もあったが、取引先の仲卸が後継者がいないなどの理由から廃業してしまった。「うちは幸いに息子が果物屋を継ぐと言ってくれたから続いたが、息子がやらないならば張り合いがないので、私も適当なところでやめると思う」と高宮さん。
 
 仕入れに行くのは康太郎さんだ。自宅は尼崎なので、電車で約40分かけて店まで通い、それから自転車で市場に行く。前日にFAXで必要分をある程度注文してあるので、品物を確かめて買いたいというもののみ市場に出向いて品選びしている。このほか、青年会議などを通じて独自に親交を築き、産地の果物店からも荷をひいたりしている。
 
 パーラー用と区別して仕入れることはしない。パーラーがあることで、果物の回転をよくさせて、常に新鮮な果物を扱っているイメージを出している。「珍しくても、おいしくないという果物は扱いません。うちの場合は金額を任され、タカミヤで推薦するおいしいものという注文が多いので、旬のおいしいものを置いているんですよ」と若い康太郎さんから頼もしい言葉が返ってきた。東京から戻って5年目だが、好きなようにさせてもらっていると、控えめ口調ながら、満足げだ。
 
 父、息子、それぞれが意見を出し合い、よいと思ったことを取り組んでいる。
 
 タカミヤの主な取引先は、朝日ビルに入っていたり、近隣地域の銀行や大手企業などが多い。こうした得意先が約8割を占める。法人関係者は、用事のあるときには来店するが、そう度々は顔を出せないので、高宮さんは果物情報をFAXで顧客に配信することを考えた。当初は手書きだったが、ここ2年ほどは康太郎さんがパソコンで作成し、月に1〜2回「くだもの食べ頃 贈り頃」として発信している。その月入荷した季節の果物やギフトの提案を3000円、5000円、7000円、1万円と4ランクに分けて行い、その月の重点品目や新入荷あるいは好評な加工品を紹介している。当初は40社程度だったが、現在は約120社の「注文担当者」にFAXを出している。こうした日頃の地道な取組みがあったからだろうか。バブルがはじけて、企業が軒並み贈答需要を節減したときにもさほどの影響が出ずにすんだ。しかし、長引く不況の影響がここにきて売上げにもジワリと陰を落とし始めた。
 
 「これまでの売上最高から1000万円ほどは下がってしまいました。1億円は目標ではあるけれど、かなり遠いという気はしています」
 
 法人関係の客のほかには、近くの大病院に行く見舞客、それにタクシーを利用して果物を贈答に用いる客などだ。ビルの1階といっても、ビル内にあって表通りからは目だたないので、知らずに通り過ぎる人も多い。こうした人たちをどうやって顧客にしていくかが今後の課題である。

果物と加工品を店頭で販売。奥がパーラーになっている。旬の味のよいものに絞って取り扱う。

パーラーは20席。マスコミではフルーツサンドが取り上げられることが多い。自家製プリンが好評だ。

●テイクアウトにも力を入れたい!

では、パーラー部門はどうだろうか。パーラーは売場の奥にあり、約20席。客層は周辺に勤務するOLが約7割を占める。果物自体は贈答用が主になるので、OLはメインの顧客にはなっていない。したがって、パーラーが最もにぎわうのは昼食時で、あとの時間は打ち合わせに利用する男性客が来る程度になる。ビジネス街で客がひけるのが早いため、閉店時間は夕方6時までで、土曜日は人通りが少なく周囲も閑散としているため、午後3時までの営業になっている。
 
 このため、パーラー部門は月額約100万円。法人向け販売で健闘している果物に比べると、やや物足りない数字か。
 
 「これからテコ入れするとすれば、営業時間を伸ばすしかありませんが、家族営業なのでちょっと……。常時、客の流れがあるところではないので、売上げが落ちないように保っています。うちは、休日と第2土曜日が定休日ですが、土曜日は極端に客が少ないので、実質20日間が勝負。ですから、1日5万円で20日分を維持するのが理想なんです」(康太郎さん)
 
 そうなると、やはり果物の販売をよりいっそう伸ばすほうが効率がよいということになる。だが、内心では、おいしい果物を使って作るパーラーのメニューをもっと多くの人に味わってもらいたいと願っている。話題になったザクロジュースでさえ、タカミヤでは本物にこだわって、加工品は販売しなかった。売上げを追求するのでなく、スーパーとは一線を画して、ザクロは生ジュースで提供し続けている。
 
 パフェ、ジュース、ヨーグルトはそれぞれ十数種類。このほかナタデココを工夫したハロハロシリーズやバジルココシリーズなどのメニューもあり、とくにフルーツサンドイッチはOLが好む定番商品になっている。
 
 持ち帰り商品としては、予約で作っているフルーツサンドや、自家製プリンなど。テイクアウトの種類を増やしたいと思うが、厨房や冷蔵スペースなどが狭いため、ままならないのが残念というしかし、康太郎さんは土曜日の集客アップを図るなど少しずつでも現状を打開しようといろいろな試みを始めている。
 
 「土曜日は人通りも少ないので、許可をとってボードを飾るようにしました。うちの場合はフルーツサンドイッチはテイクアウトできますが、注文を受けてから作っています。でも、これでは昼食時のテイクアウト需要を逃すことになるので、昼の短時間勝負で販売しようかとも考えています。ジュース類も容器やサイズを工夫して安価に提供するなど、もう少しテイクアウトを増やしていこうと思っているんです」(康太郎さん)
 
 店の存在、テイクアウトの内容などを知ってもらおうと、チラシを配ったり、近所のビルにポスティングしたりもしている。このほか口コミの利用も図って、店内にもフルーツメニューやフルーツサンドを紹介するチラシを置いている。これらはすべて康太郎さんの手作りだ。 

店内ではドリンク・デザート付きのフルーツサンドセット(680円〜がオススメ)。POPやメニュー紹介もパソコンを活用。

 管理などに利用している。「パソコンをやり出すと仕事が増えてくるんです(笑)。でも自分で作成したPOPがきれいに仕上がるとうれしいし、写真が入ると見やすくて、インパクトも強いと思う」
 
 写真などを貼り付けたりして時間のかかるPOPについては自宅で作成し、簡単なPOPについては店内にパソコンを置いて操作している。
 
 パーラー部門では「Apple Card」を発行している。400円から捺印し、12個たまると規定金額内(600円)フルーツメニューが楽しめるというもの。約10%の割引になる。この券の引替えが毎月30人程度。着実に固定客として定着している。
 
 このほか、リクルートがインターネット事業として展開しているISIZE  Club会員向けのサービス(http://www.isize.com)店としても4月1日から参加した。ISIZE Club のカードを持つ客に10%の料金割引サービスを提供するという仕組み。
ISIZEのホームページでは、「大阪・中之島のオフィス街にあるフルーツパーラー。老舗の果物店が直営しているので、新鮮でおいしい果物をつかったメニューがいっぱい。ジュース、パフェ、ヨーグルトのほか、自家製のケーキやプリン、クレープも好評。6種類の果物が入った人気のフルーツサンドは、テイクアウトもOK(¥450)」と紹介されている。
 
 インターネットを利用する層がどれだけ来店につながるかは未知数だが、これからは康太郎さん自身もパソコンを活用していろいろなことにチャレンジしたいと張り切っている。
 
 場所柄、パーラー部門に変化をつけてテイクアウトを工夫していけば、売上げ向上が期待できそうだ。果物とパーラー部門がもっと連動すれば、康太郎さんのめざす売上げも可能になってくる。後継者が張り合いをもって仕事をし、社長である父が信頼して任せている姿勢がうかがえる。

「息子が継いでくれたから、張り合いをもって仕事ができる」。二世代の知恵と努力で、専門店の可能性をますます追求していってほしいものである。