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デザート&コーヒー
タキン

2006年夏に閉店しました

 東京都千代田区飯田橋4-9-10

営業時間:平日7:30〜21:00 土曜19:00 日祭日休み

JR飯田橋駅東口より徒歩数分、飲食には好立地

林誠一社長。「忙しいけど、張り合いがある」とこの笑顔。コーヒーなどドリンク類、生ジュース、軽食、フルーツ、フルーツデザートをミックスした。


 東京千代田区のタキン果実店が新業態、デザート&コーヒー「タキン」として生まれ変わりました。

 駅前に立地する果物店の今後の一つの可能性ともみられることから、どこよりも早くご紹介することにします。

 新業態「デザート&コーヒー」でスタート

 タキン果実店はJR飯田橋駅東口より徒歩1分のところにあり、ビル1階(66u)を果物売場とパーラーにしていました。周辺がビジネス立地に変化したため、通行客は多いものの、8000万円あった売上げは年々減っていく一方。自身も果物が大好きで、おいしい果物さえ販売すればお客は来る、と確信していた林誠一さんは「なぜ?」という思いの連続でした。そして、近くにあった大病院が移転するということを聞いたのをきっかけに、真剣に「商売をやめるか、それとも商売替えをするか」と考え始め、実行に移してしまったのです。

 出した結論は、駅前という立地を生かしてコーヒーチェーン店のように安価なコーヒーと生ジュース、軽食の店にすることでした。果物を扱うと未練が残るので、扱わない。長年親しんできたタキンという店名にも見切りをつけ、「オレンジカフェ」という店名を心づもりしました。

 そして、最終的に家族会議にかけたところ、貞江夫人を筆頭に猛反発にあいました。「おいしい果物を売るという実績があるのに、従来のお客様をどうするのか」「パーラーは各誌に紹介されて客がついている」「店名を変えると、元の果物店が経営しているとは思ってもらえない」等々。

 その結果、果物も入口近くにほんの少し置く、店名は「タキン」を残すということに落ち着いて、約2ヵ月の工事の後、9月26日にオープンしたのです。

 コーヒー関係などの企画はアートコーヒーの協力を得て、改装費用も極力抑え、ふつうならば4000万円くらいかかるところを1000万円台ですませました。

 良心的な価格と味が魅力

 オレンジと黄色をベースにした明るい店舗は入りやすい雰囲気になり、通行する10人中7〜8人は店を振り向いて通るようになりました。

 平日は7:30〜21:00。土曜は19:00まで。日・祭日は休み。数種類のコーヒー、紅茶やドリンクのほか、季節の生ジュースが売り物です。バナナ1本20円、ミカン1個50円で注文カウンター脇に置いたのが大ヒット。コーヒーとバナナで200円の安さというのが喜ばれています。

 軽食はホットドッグ類ですが、店内入口にあるチキン、野菜、ツナ、フルーツサンドなど(200〜280円)も店内で食べることができます。ランチボックス500円を買えばコーヒーが100円などというサービスもあります。サンドイッチ類は、朝だけ仕入れ商品を売り、以後はパーラーで利用していた奥の厨房で手作りしています。

 また、パーラー時代に人気商品に育ったフルーツポンチ、オレンジゼリー、グレープフルーツゼリーは引き続き販売し、フルーツヨーグルトも加えました。

 オープン4日間はコーヒー1杯100円、ハム・卵サンドを100円で販売したところ、注目度は満点で、それ以後もコンスタントに550〜700人が来店するようになりました。

 周辺に会社が多いため、昼前後と夕方以降が賑わいます。女性客が7割、しかも若い客が多くなりました。

「果物店は駅前に多いけど、1時間に1000人位が店の前を通るようなところはファーストフードが可能だね。ジュースにするよりも生で食べたほうがどれほどうまいかと思うけれど、これも時代かもしれない。1つの果物屋の生き方になるんじゃないかと思えてきた……」

 そう語るときはちょっと寂しそうだけれど、とにかく林さんは朝の6:30から片づけなどを終えて就寝する明け方2:00頃まで大忙し。でも、忙しいことが張り合いになっています。

 手前がカウンター、奥がイス席で全35席。女性客が約6割だが、サラリーマンの男性客も気軽に入ってくる。世代の幅が果物店時代よりも広がった。他の喫茶店ならばゆで卵50円の時代に、バナナ1本20円というのが魅力。生ジュースもバナナミルク250円が一番人気。

入口を入ると、写真左が果物の棚、品物は絞り込んでいるが、生産者名を記した柿や、話題のブルーベリーの乾燥品など、魅力あるコーナーになっている。すべて1個売りのため、若い女性も気軽に果物だけを買っていく。かつて果物店だったことがプラス効果になっている。
 写真中央はサンドイッチコーナー、冷蔵を要するメロンやパパイヤなどの果物も置いている。自家製ランチボックス(コーヒーは100円でサービス)が人気だ。右はフルーツデザートの冷蔵ケース。

 季節の生ジュースに力を入れる

 元果物店が手がけたカフェということで、注文を受けてから作るフレッシュ生ジュース類の売行きが好調です。バナナミルク、キーウィ、オレンジ、グレープフルーツなどは定番で、季節のジュースを提供していきます。訪問した日には、このほか、リンゴ、ブドウ、マスクメロンなどがメニューにありましたが、最も高いメロンジュースでも400円。250〜400円で、どれをとっても良心的価格。そのうえ、1つ1つ甘さや濃度を決めたこだわりジュースです。

 市場で完熟品として仕入れてきたマスクメロンが1500円で販売されていました。
「1切れが400円のジュースになって8切れ分が3200円になるんだから、売るほうはジュースにしたほうが儲かるわけだけど……」と全国的に生の果実が低迷していることに納得がいかない様子。

 それでも新たな楽しみが出てきました。どんなジュースが売れるかということです。このため大田市場に行って珍しいものがあるとつい買い込んでしまうそうです。「ベリーAの後は、山形のナイヤガラでいこう。10月に桃って珍しいでしょ。だから、買ってきたんだけど、(ジュースを試飲してみて)結構いけるね」といった具合です。

「現在のところ、ドリンク類とジュースの割合は3対1で、生ジュースが売上構成からみても伸びています。軽食類の比重は3割で、大きいので自家製を増やしてさらに伸ばしていきたい」 

 パーラー時代から特に人気のあったメニューはフルーツデザートとして販売している。オレンジ、グレープフルーツゼリー、フルーツポンチ、フルーツヨーグルトなど。特にフルーツポンチはシロップの味が絶妙で、どこにも負けない味と自負している。

 アルバイトは情報誌で募集をかけ、計18名を採用したが、現在は12〜13名に落ち着いている。果物をさわったことがないというバイト君にも丁寧に教えているが、店の中で若い人が働いているということも、若い客層をひきつけるのに効果を上げている。

 
当初は、できた注文を客席まで運んでいましたが、効率を考えてお客にカウンターまで受け取りにきてもらうように変更しました。

 こうしたチェックを入れるのを貞江夫人です。「良心的な販売はいいけれど、うちも人手は足りないので、お客様に協力していただけるところは改良していかなくては」と、コストや効率を考えてアドバイスしています。

 スタートしながら、徐々に改善を加えているというのが実状ですが、手ごたえは十分とのこと。損益分岐点をシミュレートし、1日18万円と出しましたが、クリアする日々が続き、目標を30万円におきました。

 今回の店を出すにあたって協力アドバイスしてくれたコーヒー店主は「果物店の始めたデザート&コーヒーという業態は他にない。果物があることが逆にイメージアップにつながって幅広い客をつかんでいる。新業態としてこれからフランチャイズチェーン化を考えていってもいいほど」と高く評価しています。

 新しい店を始めてから、大学生の長男長女の関心も高まりました。彼ら各人が思う存分やれるように支店を出すことも夢ではないかもしれないと思えてきた林さんです。

 果物を愛してきたからこそ、果物店の新たな方向性を探りたいと周囲の反対を押し切ってチャレンジしました。このノウハウを積み立て、果物店の活性化に役立つことができればとひそかに願っています。