ホーム 目次

(株)田又果物店

〒652-0042 神戸市兵庫区東山町2-2-1

営業時間8:00〜19:00  日曜定休

 神戸新鮮市場で最も活気がある東山商店街で果物販売50年、売場は約33u、田又果物店は日曜定休だが、定休日は各商店まちまち

 右から田又政夫さん、秀子夫人、田又善政さん、呉林隆之さん

 神戸一、日本一?の規模を誇る小売市場で
 
 
神戸市営地下鉄湊川公園駅(または神戸電鉄湊川駅)を出て北のほうへ大通りを歩いていくと、この土地に不案内な人は、一筋入ったところに広大な商店街があるとは思いもよらぬだろう。

 だが、3つの小売市場と2つの商店街の連合体から総称する「神戸新鮮市場」は約1kg圏に500店が集積し、その規模がはんぱではない。ここは食品小売店や商店街が元気を出したいと思ったら、ぜひ訪ねてほしい場所である。小売市場では黒門市場(大阪)、錦市場(京都)、アメ横(東京)、近江町市場(金沢)、二条市場(札幌)等々が全国に知られている。これらの特徴は、観光客も数多く呼び込み、地域の名所的にもなっていることである。その点、神戸新鮮市場は全国的な知名度はそれほど高くない。なぜなら、地域に根ざした生活商店街であるからである。

 神戸新鮮市場は次のような構成からなっている。

1)ミナイチ(74店)/1階は食品店が多く、地階は飲食店など
2)東山商店街(145店)/生鮮食料品中心
3)湊川商店街(205店)/「パークタウン」と「みなとがわプラザ」からなり、衣料品中心
4)ハートフル湊川/1階は小売市場が業態転換したスーパーマーケット、2階は食品中心の専門店街
5)マルシン(45店)/食品が中心の小売市場
アーケードのついた東山商店街は約150店が軒を連ねる。飲食店の買い出しも多いため、早くから開店する店が多い。田又果物店は朝8:00〜19:00まで。17:00を過ぎると人通りは減る
 このうち最も活気があるのが東山商店街で1日1〜1.5万人が訪れる。生鮮食料品店が多く、ほとんどの店が前出しして販売しているせいで、日中は車1台がやっと通れるほどの広さ。それだけに買い物客は車の通行を意識せずに、両側の通りを見比べながら買い物を楽しむことができる。

 朝9時頃にはたいていの店がオープンしているから、年配の人は朝から買い物に繰り出している。神戸随一の繁華街三ノ宮からも飲食店が買い出しに来るそうだ。

 生鮮食料品店が強く、魚屋の数多さは特に神戸新鮮市場の最大の魅力となっている。店頭で明石のタコやカレイ、カニなどがピクピクと動いている様はいかにも新鮮そうで壮観である。

 「このところ、全体に活気がありません。三ノ宮からくる飲食店の景気がよくないことも影響していますね」と田又善政さん。
 

 ●大震災〜浸水で、要らぬ出費は重なったが、元気に乗り切る
 
 (株)田又果物店は東山商店街と車が通行する道路と交差する角にある。
 
 「ここは盆地のようになっていて土地が低いので、3年前に新湊川が2年連続して氾濫したときは、この辺一帯が浸水したんです。堤防が今年11月に完成する予定です」
 
 神戸といえば、思い出されるのは1995年の阪神・淡路大震災だが、(株)田又果物店は震災前に訪問したときと変わっていないように見えた。
 
 「3日目に来てシャッターを開けたら、柱が歪んでいたのを無理にこじ開けたらしく締まらなくなってしまったんですよ。それから2〜3カ月は店をビニールシートで覆って店前で露天商のような形で商売しました」
 
 善政さんは笑いながらサラリと言う。
 「でも、うちはまだましなほうです。前の店は全壊だったんですよ」。現在は善政さんに経営を託している父、政夫さんが教えてくれた。
 
 全壊は免れたとはいえ、修理費に莫大な費用がかかり、「今も返済中」とか。7年という年月は完全復興するにはまだ短いようだ。
 
 この地で(株)田又果物店は1953年から営業している。神戸新鮮市場だけで青果店・果物店は20数店あるから厳しい競合といえるのかもしれないが、逆にこれだけの店があるからこそ多くの集客も可能になっている。
 
 どちらかといえば、ボリュームや安さを訴求する店が多い中で、同店では常に良い品質のものを手頃な価格で販売するように努めてきた。売場は約33u、間口が広いので、一目で見渡せる。

 仕入れを担当するのは善政さん、店のシャッターは8時頃に開けるが、バイクで約10分ほどの神戸市中央卸売市場へ買い出しに行くのは朝10時頃。神戸では仲卸を利用する小売店が大半で、(株)田又果物店でも仲卸5店を利用している。
 
 最も重視しているのは品揃え。専門店として、味が伴っていればハシリのものから取り扱い、とにかく食べてみて味を確認するようにしている。
 
 「父の代には産地と密接な関係があったと聞いていますが、今は産直はやっていません。全国的に有名な産地の商品でも、自分の舌で確認してそう思わなければ扱いません。市場に入る中から、品質、価格ともに、お客が今好んでいる売れ筋に力を入れていますが、味の点では我ながらがんばっていると思います」
 
 そして、お店の魅力は小売市場全体の店に共通する対面販売のよさだろう。どの店にも固定客がついているように見える。善政さんのほか、政夫さん夫妻、5年以上勤務しているアルバイトの呉林隆之さんが販売に当たっている。
奥の冷蔵ケースでは贈答品を扱う。手前は旬の果物で、その日重点を入れて販売したいものを陳列、通路を隔てて右側にはバナナを数種類置くが、16時過ぎには売り切れていた。
 小売市場に来る客は、会話を楽しみに来る人も多い。(株)田又果物店では昔からのなじみ客らしい高齢者を多く見かける。商店街の駐車場がないので、ほとんどは近隣に住む人たちとなると、重量のある買い物はできない。そこで、皿盛りなども4個入りなど1回にもちやすい分量にするように配慮している。また、昔から高級果実を取り扱ってきた実績があるので、後方の冷蔵ケースにはメロンや贈答品が陳列されていて、おつかいものの需要も多いことが伺われる。この日だけで10件の宅配注文を受けた。贈答の最もよく出るのは8月のお盆の時期で、リンゴや梨は九州方面、北海道の人には早めのお歳暮として富有柿を送る人が多いそうだ。 
店頭のショーケースの中で販売するカットフルーツが好評
 店頭の目立つところには、幅1mほどの冷蔵ケースが於かれ、ハーフカットしたメロンや食べやすくブロック状にしたパイナップル、すぐ食べられるように冷やしたピオーネなどが並べられていた。

 「スイカやパイナップルは皮がゴミになるのが敬遠されるので、カットして少ない量で食べていただくようにしたところ、とても好評です」。
 
 商店街が売り出しを一斉に行うことがなくなった今では、個々の店に任されているが、(株)田又果物店では駅側から来る入り口のところにパラソルをたてて、その日おすすめの品を特別価格で出している。 

 「テレビ番組で果物が紹介されるとすぐに反響があるのですが、せいぜい3日でブームが終わってしまいます。ブームに流されずに果物を食べてもらう働きかけが必要なんでしょうけど」
 
 果物の消費を伸ばし、店の売り上げにつなげるにはどうすればよいかを考える日々だそうだ。
ショーケースの上にはシークヮサーが置いてあった。今、話題の商品だけにお客との会話も弾んでいた。「どうやって食べるの」がほとんど


 ●喫茶のノウハウを生かしたい

 (株)田又果物店では隣接して「珈琲館 東山」を経営している。ここを切り盛りしているのは善政さんの夫人の正代さん。ここでは一般の喫茶メニューのほか、「果物屋さんのフレッシュジュース」として、リンゴ、オレンジ、キーウィ、グレープフルーツ、バナナ、メロンといった単品のジュースのほか、リンゴにニンジン、コマツナ、ホウレンソウを組み合わせた健康ジュースなども400〜500円で販売している。ほかにも果物を使ったデザートを十数種類扱っている。

 「果物もこのごろ見舞用が減ってきてしまいました。メロンはギフトとしては魅力はありますが、もっと安い単価でギフトを使ってもらえるように工夫していきたいと思っています。また、果物売場のほうでもフレッシュジュースを販売していきたいと考えています」

 ガンバロー神戸の合い言葉のように、これからまだまだガンバルゾという意気込みにあふれていた。
喫茶店では果物のジュースも豊富。せっかく安くて買い物してきても、ジュースに400円と考えるお客がいることも事実、そこで、果物店のほうでもっと手軽に味わってもらうことも考慮中だ。