●業務用販売が7割!!
見た目は商店街の中にあるごくフツーの店。しかし、実際は表の店構えから想像した以上に頑張っているという店。神奈川県秦野市のフルーツヤナギヤ(有限会社柳屋商店)はまさにそんな果物店かもしれない。
小田急線秦野駅からは東京副都心の新宿駅まで急行で約70分なので、通勤圏として秦野市は人口も増えつつある。駅の近くと市の周辺部に大型量販店が2店出店している。しかし、商店街はまだまだ元気で、駅周辺には3つの商店街がある。このうち、市内を流れる水無川にかかる秦野橋から続く「上宿(かみじゅく)通り商店街」の最も奥、四ツ角交差点の所に位置しているのがフルーツヤナギヤである。
競合店は、花や果物を扱う店と、青果店があるが、どの店も古くから営業してきた家族営業の店という感じでフルーツヤナギヤも例外ではない。 |
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| 従事者数5人。左手に妹夫婦が営業する喫茶店入り口がある。ドリアンなど話題になりそうな果物は店頭で目をひくように陳列。 |
「秦野は寒いでしょう。盆地になっていて丹沢おろしが吹くんですよ」と笑って出迎えてくれたのは3代目経営者の柳川達夫さん。そして電話で親切に応対してくれた母親の道子さん。当初は、この2人だけかと思った。ところが、社員、パートで他に3人いるという。
「とすると、業務用などがあるんですか!?」
「はい、洋菓子店がほとんどですが」
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洋菓子店の得意先は約50店、支店をもっていてイチゴの注文が毎日1梱包20パック以上来る店もあれば、1箱4パックという店まで様々。
店頭に並んでいるイチゴは大粒の「章姫」が中心だったが、洋菓子店への納めは、今(1月下旬)の時期ならば「とちおとめ」のMサイズとのこと。ほかにもキーウィ、メロンなど。ブルーベリー、ラズベリー、ハーブ類などは洋菓子店ならではの果実で、店頭に出していなくとも注文に応じて仕入れることもあるそうだ。「洋梨もラ・フランスをしぶとく追いかけています(笑)。それからリンゴは紅玉がほしいという注文が多いですね。アップルパイがおいしくできますから」
トロピカルフルーツなど新しい果物が入荷したときにも説明して使ってもらうことがある。入り口は別だが、売場の裏手に妹(英子さん)夫妻が経営する喫茶店があり、ここにも納入している。 |
| 店前に立ったお客が最も目につく中央陳列台に、手土産的なギフトとして、イチゴとデコポン、イチゴとメロンなど、イチゴを中心に提案。 |
洋菓子店の注文は先方から入ることもあるが、大体は午後4時すぎになるとヤナギヤから電話をかけて注文取りをしている。
FAXでの注文でもよさそうなものだが、あくまでも注文を受けるほうがサービスの一環として電話でご用聞きをし、その折に商品情報も伝えられるのだろう。相手先によって、毎日、あるいは週に決まった曜日に電話をかけている。
注文内容はイチゴ、リンゴなど何品かを頼む店が多い。1週間に1〜2回ではあるが、西は真鶴、小田原といった遠方まで配達していて、配達エリアはかなり広範である。
「特に営業活動をしたわけではないのですが、20年ほど前から口コミで増えてきました。一般に食べる果物と、ケーキの果物とではちょっとずれがありますね。ケーキだと見た目と日持ちのよさが求められる。ショートケーキのイチゴは酸っぱいぐらいのほうがいいんです。仕入れが終わったのに追加注文が大量にきて仲卸に電話したり、イチゴ農家まで行ってイチゴを摘んだりしたこともあるんですよ」
10年くらい前には得意先も80店ほどあったが、徐々に減ってきてしまったという。得意先も値段にシビアになってきて、安く納入する店に攻勢をかけられてしまうのだとか。
現在売上げに占める割合は、洋菓子店や飲食店への納入が7割、店頭販売3割となっている。利益を確保する経営をめざす場合、今がちょうど曲がり角に来ていると感じるそうだ。
●地域と商店街のために貢献する
同店の創業は大正時代である。2代目が亡くなってからは道子夫人と祖父母で店を支えてきた。柳川さんが店を手伝い始めた1970年頃は果物と菓子を扱っていたが、20年ほど前から果物専業に切り替えた。
現在は、柳川さんとお母さんが店での販売を担当し、勤続20数年というベテラン社員李沢郁夫さんが外商、他にパート2人が午前中の配達を担当している。
仕入れは大田市場が6〜7割、残りが車で10分ほどの秦野市場(地方市場)から仕入れてくる。大田市場の仲卸から発送された荷が平塚のターミナルに届くので、洋菓子店納めに行く途中で早朝6時頃立ち寄って荷を確保してくる。一方、地元の市場からはJAはだの特産のイチゴなどを仕入れる。1月下旬の時期、店の贈答に提案されているのは、こうした地元産のイチゴたちである。神奈川県は果物の生産も盛んなので、地元で味の良好なものは優先して仕入れている。
店裏にある冷蔵庫も右側が店頭売り用、左側が洋菓子店納入用と並べられている。
店自体はごく一般的な果物店といえるのだが、柳川さんが好きなジャズをバックグランドミュージックとして流し、果物を描いた絵画があちこちに掲げられ、商品に添える絵手紙も飾られているのが、他とはちょっと違うところだろうか。
店自体はごく一般的な果物店といえるのだが、柳川さんが好きなジャズをバックグランドミュージックとして流し、果物を描いた絵画があちこちに掲げられ、商品に添える絵手紙も飾られているのが、他とはちょっと違うところだろうか。
飾ってある絵画はプロの作品もあるが、多くは絵の好きなお客様が持ってきてくれたものを飾っている。だから、果物をテーマにしていても「絵描き」の年代も作風もいろいろ。
同様に、絵手紙もその雰囲気に合った果物に添えて飾っていて、心和むものになっている。 |
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| お客から贈られたという果物の絵画の多さからみて、いかに地域の人たちに愛されていることがわかる。 |
また、小学生たちが店を手伝っている写真や、店に対して感謝の言葉を述べた作文もいくつか飾ってあった。これは地元の小学3年生が社会の授業の一環としてと商店街の店を訪問したときのものだという。
「私、商店街(上宿商栄会)の会長も務めていまして、地元の子供たちに商業のことを知ってもらおうと思い、小学校に働きかけました。商店街で30店以上が参加してくれたので、2日間に分けて各店へ3人の小学3年生が行きました。昨年9月に2回目を実施しましたが、子供たちが売る側に立って経験してみて、明らかに変わりましたと親御さん達から礼状をもらいました。うちでも、掃除、陳列、販売など午前中2時間ほど働いてもらったけれど、みんなとても興味をもってくれて、礼状も来てうれしかったです」
商店街は、どこも大型店の進出で厳しい状況にあるが、幸いにも同店が属している上宿通り商店街は、空き店舗もなく、団結力は強いという。 |
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| 「今日はどうもありがとうございました。すこしの時間しかできなかったけどとってもおもしろかったです。わたしはフルーツのいちごとブドウとすいかがすきです。こんどフルーツをかいにいきますね。お店がんばってください」。小学生の礼状がほほえましい。柳川さんは商店街の「上宿商栄会」会長として、お店での実習を小学生の社会学習に採用してもらった。 |
この商店街では日頃100円で1枚の「エーススタンプ」を発行し、枚数に応じてプレゼントをするという企画(各店の負担率は2%)を実施しているが、そのほかにも通りの中程に上宿観音堂の上宿観音市に合わせて毎月チラシをまいている。チラシは商店街の図に番号と店名が書かれていて、それぞれの店がひと口PRをしている。昨年11月のフルーツヤナギヤのコメントは「お買い上げのお客様に2002年カレンダーを差し上げます。全品消費税なし!!」というもの。商店街加盟店約100店のうち、49店が参加し、参加費用は毎月3000円。これで、その月のプレゼント類をまかなっている。いわば、このプレゼントやイベントが商店街全体の集客力につながっているといえる。
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11月の景品は引換券で2日間 1)各先着150人に「延命長寿てぬぐい」をプレゼント、 2)観音堂の参道で「おしるこ」をふるまう、というもので、チラシに各引換券を刷り込んだ。
12月はスタンプラリーを実施。商店街で3000円以上お買い上げの人に現金つかみどり。1月はミニチュア熊手のプレゼント、と毎回楽しい企画を考えている。スタンプカード事業は世田谷烏山商店街、観音様事業は、東京巣鴨の地蔵通り商店街、そして、チラシでの各店PRでは、静岡市の「一店逸品運動」を目標にしているそうだ。観音様の年間イベントとして8月に開催される「四万八千日」があるが、これも浅草観音様の「四万六千日」のように盛大になることを目指している。
とはいえ、商店街のある「かみじゅく通り」は、路線バスが通り、交通量も多いので、人よりも車のほうが多いような印象さえ受ける。昔からの商店街だけに業種も多様で、これらを全店まとめていくというのは至難の業ともいえそうだ。だが、全国を画一的な商店街にしているファーストフード店や携帯電話取扱い等の店がほとんどないことが、逆に商店街としての個性を発揮していることにもなっている。こうした商店街は各々の小売店が元気に経営して、その集合体としての魅力で生き残りを図っていくしかないだろう。
「まちを守るのは商店だと思うんですよ。商店は自分の店のことだけでなく、まちのことも考えていかないといけないですよね。 |
| 商店街の地図を書き、イベントに参加している店はひとことメッセージを掲載 |
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厳しい時期だけど、希望を失わないようにしていきたい。いろいろ学ぶ中から、おもしろいことを考えていきたいと思っています」
果物を食べようとキャンペーンすることも大事だが、地域を大切にする果物店で買い物をしよう、元気な商店街をまちの財産として大切にしていこう、と呼びかけたい気にさせられた。こうした店が21世紀の小売店、商店街を支えていくのかもしれない。(2002.1取材)
店内に絵画の先生の絵や、お客様から贈られた絵を飾っている。
さりげなく商品に合わせて添えられている絵手紙もお客様の作品。文章と絵がマッチしていて楽しい。 |
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☆切ってビックリ 食べて二度ビックリ(ピタヤ)
☆フランス生まれ、にいがた育ち すごくおいしい
(ル・ルクチェ)
☆ふっくらと私の心と一緒(みかん)
☆小春日和に命輝いて(柿)
あなたのお店でも、絵画、人形作りなど、プロ並みの腕をもつお客様に、ギャラリー的な場を提供するのはいかが。軒先を貸して販売しても喜ばれるかもしれない。 |
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