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 ホウレンソウ 菠薐草 Spinach
 
 イラン(ペルシャ)からソ連のコーカサス地方の原産で、別名ペルシャ菜とも呼ばれるアカザ科の野菜。イランからアラビア北部,スペインを経てヨーロッパに伝わり、とくにオランダで西洋種として発達した。また、6世紀には中国ヘ伝わり漢名の菠薐(ほうれん)はペルシャの意味で、東洋種として発達、わが国ヘは江戸時代初期に渡来し「多識篇」(1631年)に初めてでてくる。これが現在の在来種の先祖になっている。その後、明治初期に西洋種が導入され、近年は両者の交配種も育成されている。

  生育適温は15〜20℃だが、耐寒性が非常に強く気温が0℃になっても生育を続ける。しかし、高温には弱く23℃で生育が鈍り、25℃を越えると病害が多発する。土壌は酸性が苦手で極端な場合は枯れてしまうので、石灰を散布して中和してから播種することも必要。在来種(平安日吉丸,次郎丸など)はとげのある種子で、秋播きに向き、葉肉は薄く葉先がとがって深い切れ込みがあり、根元が鮮やかな紅色をしている。ほのかな甘味があり淡泊なので、お浸しや汁の実,和え物によい。

 一方の西洋種(ミンスターランド,ビロフレーなど)は抽苔(ちゅうたい・とう立ち)しずらいことから春から初夏の播種に向き、収量が多い。丸い種子で葉肉が厚く葉先も丸く根元は白い、ちょっとあくがありバター炒めなどに適する。今日では、両方の長所を取り入れた交配種が栽培の中心となっており、アトラス,ソロモン,オラクル,マジックなどが栽培されている。とくに若いものはアクが少ないので、葉先をちぎってサラダにしてもおいしい。

  ほうれん草は、代表的な緑黄色野菜であり、ビタミンやミネラルが豊富で栄養価が高くいろいろな料理に向き食生活の多様化に対応できることから需要が増加している。カロテンは体の中でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の働きを高め病気への抵抗力をつけるとともにガンの予防,老化防止,心臓病予防などに効果がある。無機質の銅は貧血によく、ヨードは熱量代謝を促し、鉄は増血に重要な役目を果たす。カリウムは体内でナトリウム(食塩)とのバランスをとるのに役立つ。また、カルシウムは骨の育成に必要である。そして繊維が柔らかくて消化がよいので、老人,病人,幼児などの食べ物に向いている。但し、シュウ酸を多く含みこれはカルシウムの吸収を悪くするが、調理にはゆでてあくを抜き普通に食べる分には害はない。たっぷりと湯をわかして塩をひとつまみ入れることで、沸点を高めシュウ酸の流出を促し、またビタミンCの損失をも防ぐ。

 栽培は比較的短期間で夏で30日,秋で60日前後で収穫となるが、葉質が軟弱で輸送が困難なことから、都市近郊で行なわれることが多く、周年栽培がされている。いちばん味がのってうまいのは、霜を受ける晩秋からである。
選び方と保存 葉がみずみずしく茎のしっかりしたものを選び、なるべく早く調理する。

保存は水洗い後、ポリ袋に入れて冷蔵庫へ。冷凍するなら、固めにゆでてからしぼってラップに包む。

東洋種は冬、西洋種は夏。

 

ネーキッド種子

 種子の外側の固い果皮を除いて殺菌剤でおおって、ネーキッド・Naked(裸)にしたもの。特長として、
1.土中での吸水がスムーズで発芽率が早く一斉となりそのぶん収穫が早まる、とくに7・8月の高温期に威力を発揮する。
2.生育が揃うので収穫,出荷が容易。
3.株の大きさにばらつきがなく充実して収量が上がる。

収穫

 昼間に葉の光合成で糖分を作って夜は呼吸や葉の成長に栄養を使うことから、夕方に収穫した方が栄養分が優れている。北海道立農業試験場の研究ではビタミンCは朝が一番低く、夕方は朝の37%増となった。全糖含量も夕方は朝の十倍以上で、日持ちもすぐれていた。これからは収穫時期の見直しが必要になるかもしれない。


寒締め栽培

 収穫近くまでハウス内で栽培して、2週間程度ハウスのすそ裾をあげることにより寒さに当てて伸長を止めた状態を続ける栽培方法。低温の環境下ではやさいも自分を守るために、糖分を増やして水分を下げ凍るのを防ぐ機能がありこれを利用する。栽培条件,品種によっても異なるが、寒締めをすると糖分とビタミンCは約2倍程度に増加する。葉菜類によって伸長を止める温度は違うが、ほうれん草なら約4℃である。外観は色が濃く、寒風に耐えるため茎が短くタアサイのように葉が地面に対して横に広がった状態(上から見るとバラの花弁に似ることからロゼットという)となる。


アメリカの漫画・ポパイ

 1929年にエルジー・クライスラー・シーガーが新聞に連載した漫画「シンプル・シアター」に登場、1932年にマックス・フライシャーが短編アニメシリーズとして制作した。シーガーが死去した後も別の作家に継承され映画、テレビなどを通じて世界中の人々に親しまれた。水兵姿のポパイが恋人のオリーブを悪漢のブルートから救い出すときに、ほうれん草の缶詰めを食べるとその細腕に力こぶができてものの数秒でブルートを撃退,ポパイがオリーブからほっぺたにキスされるといったおなじみのストーリー。これをみても当時のアメリカではほうれん草の缶詰めが一般的であったことがわかる。

緑黄色野菜とガン予防

 太陽の光の中で紫外線が動物や植物に当たると、「活性酸素」といわれる毒性酸素が大量に生産される。またストレス,アルコール,たばこなどの生活習慣や体内でエネルギーを作り出すときにも発生している。この活性酸素によって生物を構成している物質は酸化され正常な機能が失われていき、ガン発生の元凶とも考えられている。
 
 緑黄色野菜をたくさん食べている人はガンの発生が少ないことは疫学的にも立証されている。その理由のひとつに緑黄色野菜に多く含まれているカロテノイドの作用がある。ほうれん草やにんじんなどに多く含まれるカロテン,トマトのリコピンなどが代表的なもので、抗酸化作用があって活性酸素を消去して正常な細胞がガン化するのを未然に防いでいる。もうひとつは、緑黄色野菜に含まれている食物繊維が大腸ガンを予防し,動脈硬化や心筋梗塞になりにくいこともわかってきた。腸内の老廃物や発ガン物質などを吸着して排泄し便秘をなくすことによって、発ガン物質を長く腸内にとどめないことが理由に上げられる。

 

2003-21-23