商店街の活性化を考える場合、新しく何かをすることが多い。豊後高田商店街も「新しい方向に目が向いていたが、それでは莫大な資金が要るから、現状のままで考えた」のが逆転の発想につながった。
中央通りは老舗の通りがたくさんあったそうだが、入り口にある旧共立高田銀行の後にはまだどこも入っていなかった。いまは隣の書店のガレージとして使用されている。窓を付けるとすぐ目の前に川が見えて景色は良好、どんな業種でもよさそうだなどと考えていると、「湿気の関係でシロアリが出てくるのですが、駆除すれば十分使えます」と案内の藤原さんから説明があった。
|
 |
 |
■12号館 瓦屋呉服店
創業年代/天保8年
建築年代/明治時代
一店一宝/呉服車、4代目が嫁いできたときの花嫁衣装
さて12号館は瓦屋呉服店。江戸時代の後期、天明8年に創業した老舗なので200年以上の営業を誇る。この並びに7店くらい呉服店があったが、もうここだけしか残っていない。ここで、呉服店で瓦屋というのはおもしろいなぁと気付いた人は好奇心旺盛です。
建物は明治時代のものだが、当時まだ瓦の屋根がなく、麦わら屋根しかなかった時代に、瓦屋根の店は珍しかった。それで、「瓦屋さんに行こう」と言ったのが店の由来になったそうな。 |
いまは呉服だけでなく、洋服や和装小物なども扱っていて、中に入ると6代目の高井博爾さん夫妻、7代目郁朗さん夫妻のどちらかがお宝について説明してくれる。
入り口のショーウィンドーには、昭和の子供たちを模した人形がいくつも並べられていた。これを一つ一つ見るだけでも楽しい。これらの人形は東京で作ってもらっているが、ここ「昭和の町」だけにしかないそうだ。
お宝は、4代目夫人が明治23年に中津から嫁いだときの花嫁衣装の振り袖。表と裏が総刺繍で、純金の糸を使用しているので、全く色の黒ずみなどがない。豪華絢爛でビックリ。当時着ていた襦袢、半襦袢なども残されていた。 |

昭和の子供たちの人形が楽しい
|
|
たまたまツアーの人たちと一緒になったのだが、店主のお宝説明を熱心に聞いている。小物などもよく売れていた。昭和の町の特別な土産というわけではないが、「瓦屋さんで買った記念品」として大切にしてもらえるだろう。
「気分的には大変ですけど、とても楽しい。昭和の町になるまではどうかすると1日1人の客もこないことがありました。いまはこの状態が毎日ですからね。商品の内容も少し変えて、小物も扱い、土産品にもなるような商品構成にしました。
この商店街では呉服店がうちだけなんです。呉服屋が売る小物といえば、和装小物、半襟、帯占めなどですが、そういったものは全く売れないので、ちょっとした小物や端切れで1000円以下のものを揃えています。 |
端切れは倉庫の奥に眠っていたのを引っ張り出してきました(いい柄がいっぱい。着物の端切れっていいですね)。今かなり古いものばかりですが、こうしたものを好む人もいらっしゃいます。
昭和の町に来るお客さんはもっともっと多くなると思いますが、だからといってこのために人手を増やすことはできません。うちは2階に30畳ほどの展示会場がありまして、年に5回展示会を開くのですが、それにたくさんのお客さんが来てもららないと困ります(笑)」とご主人。
 |
「昭和の町に参加してよかったのは、やはりたくさんのお客さんが遠方からも見えて、話ができることですね。心底喜んでくれるお客さんがいる。また来ますといわれるとうれしい。それが一番うれしい。3〜4回来る人もいるんですよ」と奥さんが言葉を添えた。
この店について、説明書には「昔の老舗の一族からは文人が多く出たようで、この店も4代目の弟が高井左用という有名な俳人でした。そんなゆかりからか、昭和4年に山頭火が立ち寄ったといわれ、その墨跡が残されています」と書かれていたのだが、これらのエピソードについては聞き忘れた。残念。
|
私たちはゆっくり話を伺う時間もあったが、ツアーの人たちは1時間で全部を回らなければいけないので、1か所だけにとどまっているわけにはいかない。そこで、心残りを抱きながら店をあとにすることになる。十分な買い物ができなかったという思いが、また今度ゆっくりこようという気持ちにさせる効果もあるようだ。
だから、何回も同じツアーで来る人もいれば、個人でやって来る人もいる。いったん気に入ってしまうと、何度でも行ってみたいという気にさせる。「昭和を素直に懐かしむことができる」大人のディズニーランドのような存在かもしれない。「ツアーを案内していると、この間きたよ、またきたよという人が多いんです。いろいろな目的を持ってきている人が多いのがうれしいですね」と藤原さんが本当にうれしそうに説明してくれた。
昭和の町は、表向きは昭和の町だが、中身は明治のまま残っている店も多い。だから、昭和だけでなく、大正・明治の雰囲気まで味わえる。一粒で二度おいしいといった感覚で楽しめるところが昭和の町の魅力だろう。

このお店のお宝である呉服車は江戸時代から明治初期のもので、得意先回りに使われていたという。
|

4代目の花嫁衣装。刺繍も鮮やかで、いまでもそのまま結婚式に使えそう。着物はスゴイ。
|
|