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(財)食流機構OFSI2003年2月号に掲載したものです。写真は別のものを使い、さらに増やしているので、写真説明等は違っています。 

七日町商店街振興組合
「魅力ある元気な七日町の復活」を目指す

第12回優良経営食料品等小売店全国コンクール農林水産大臣賞
*山形市七日町  

 

   優良経営食料品小売店等全国コンクールの商店街部門は第10回に新設された。そして、第12回(平成14年度)にして初めて農林水産大臣賞の商店街が現れた。山形市の七日町商店街振興組合である。全国的には苦戦をしいられている商店街が多く、各種事業は健闘していても商店街が閑散としていたり、組合幹部だけが奮闘していたりとさまざまなタイプがある。だが、ここは違っていた。商店街を歩いて感じた印象も、組合事務所を訪問して話を聞いた内容も最高の賞にふさわしいものであった。松倉公一会長にはお会いできなかったが、商店街事業をしっかりと把握した組合の佐藤克也氏が丁寧に説明してくれた。そこで、記事前半はいわば商店街のハード部分として感想などもまじえた「見て歩記」、後半は商店街のソフト部分を組合担当者に「インタビュー」した内容にした。

   
 
 *七日町商店街振興組合のホームページ

  
 ●環境美化により街を大切に

 山形駅前で市内循環バスを待つことにした。市内中心部どこでも100円で行けるから便利そうだ。町へ買い物に行くときに気軽に乗れる。200円だと節約したくなるが、銀行カードで引き落とすだけでも手数料がとられる時代に、このバスはなんと市民のことを考えているのだろう。

 ところが、七日町商店街に着いて通りを歩いているときにビックリ。なんと赤い車体に「ジャスコ」と大きく書かれたバスが走っている。山形市郊外の北ジャスコ店と市内中心部とを結ぶシャトルバスだそうだ。これでは、商店街ががんばってもきつそうだなぁ……とひそかに危ぶむ。

 七日町商店街振興組合の事務所を訪ねたときにはついつい「街の中をスーパーのバスに走られたら大変でしょうね」と同情めいた言葉が出てしまった。対応してくれた佐藤克也さんは「困ったことに、あのバスは手をあげれば止まるんですよ」と答えてくれたが、あまり気にしてはいないといった様子である。

 確かに、ジャスコ等量販店の進出は商店街に大きな打撃を与えた。だが、七日町商店街ではあきらめずに量販店対策を考え、街に買い物客を呼び戻すためにさまざまな手を打ってきた。まさにやる気満々なのである。

 市内を循環するバスはもともと商店街が提唱したものである。1988年と89年に2回視察に出向いたアメリカのコロラド州デンバー市で、郊外と店とを結ぶシャトルバスを見て、研究委員会を発足させ10年がかりで実現にこぎつけた。町の12カ所にバス停があり、約10分ごとに走るのは市民にとってうれしいサービスだ。

 七日町商店街が属する通り(約300mにわたる一帯で3万u)は、駅から約2km離れたところにあり、山形市随一の繁華街である。大沼百貨店、AZ七日町など大型複合店舗を核に、地元の有力専門店が集まっている。

 
 古めかしいとか、昔ながらのという印象はない。モダン(な通り)・おしゃれ(な店や街路灯)・POP(な若者向きの店)・整頓(が行き届き、通りがきれい)・フレンドリー(な街の雰囲気)といった言葉が次々と浮かんでくる。道行く人は、学生など若者と中高年の主婦が多い。歩道が広いので自転車が置かれていても気にならないが、雑然とした感じはしない。町の美化に力を入れ、一年を通してプロの業者に商店街の清掃を依頼しているそうである。腕章を付けて巡回している人を見かけた。かれらが定期的に見回りするだけでも市民の意識は違ってくるだろう。商店街のメンバーは毎月7日朝7時より歩道の清掃を40年間の長きにわたって続けている(その後ホテルの朝食会で情報交換会をするそうだ)。街路灯やブロンズ案内板、植木類など外見上のモダンさに目が行きがちだが、商店街の人たちの環境保全に対する取り組みが街の美しさを支え、1990年には、「美しい街並み賞」を受賞している。

 1987年には「街づくり協定」をつくり、改装時には3mセットバックさせる、閉店後もシースルーシャッターにするといった取り決めをした。その結果、各店のファサード改装につながり、町全体に統一感がとれたショッピング街になっている。

 このほかにも電線の地中化、アーケードの撤去、雪降りの日でも歩きやすいように無散水消雪設備を全国で初めて設置等々、関係機関の協力も得ながら、商店街のハード面で画期的な取り組みを実現している。

 七日町商店街の組合員は83店。そのうち食品店は青果1店、総合食料品1店、その他菓子店などで計6店しかない。ただし、大沼百貨店地下食品売場があり、またファッションビル地下1階には山形県などで約50店展開している食品スーパーが入っている。

 商店街がモダンになっても昔ながらの食品店が景観の足を引っ張るというような街もあるが、商店街理事長の洋菓子店「十一屋」、ふうき豆が名物の「山田家」など集客力も高く街のイメージにも貢献している。空き店舗がない、ということが何より街の活力を示しているといえる。商店街の端にあった山形松坂屋が閉店2年後、2002年9月28日にNANA-BEANSという新店に生まれ変わった。3階までは若者に人気があるショップが入り、4〜8階は公共フロアになっている。

洋菓子店「十一屋」

ふうき豆が名物「山田家」

おしゃれなパン店


 先見性と情報発信、組合の熱意が決め手

 
 商店街事務所で話を聞いた佐藤克也さんは、東京で住宅関連の会社に勤務後、戻ってきたという。まだ36歳。やりがいがあるので現在の仕事は楽しいと語ってくれた。こうした人たちが商店街を支えてくれれば日本の商業環境もよくなることだろう。
 
 ─郊外にできた量販店の影響は大きかったですか。

 1997年に北ジャスコ店が出店するというニュースは、商店街に危機感を抱かせました。ここから本格的に郊外大型店対策事業を始めたのです。商店街の客層として抜け落ちていた家族連れは量販店へ流れてしまったものの、被害を最小限にくいとめるとともに商店街を活性化させ、新しい客を開拓できたと思います」

 ─具体的には。
 ◆市内9つの振興組合で、街づくり協議会を結成して活動しています。協力してさまざまなイベントをしてきたことが大きいと思います。
 街の中心部で3つの商店街を結ぶ通りは「ほっとなる通り」とネーミングしました。安心して歩ける商店街ということと、HOTな商店街ということ、また本町(ほっ)、十日町(と)、七日町(なる)の頭文字を結びつけてネーミングしています。
 それと、郊外に移転にした家電量販店の空き地を商店街で借り受けて「ほっとなる広場」とし、約10年間いろいろなイベントを実施してきました。2003年には広場を兼ねたショップ街をつくる予定です。

 ─入り口に空き缶のエコステーションを設置している場所ですね。
 そうです。あそこではここ2年ほど商店街女性部会が朝市「七日町 朝どりほっとなる金曜市」を開催しています。5〜11月の毎週金曜日11:00〜13:00までですが、生産者が朝どり野菜や農産加工品を販売にやってきます。商店街女性部では設営を手伝い、農家女性との交流も行われるようになりました。


ほっとなる広場

 ─一般の人への告知は?
 毎月「女性部からのお知らせ」として手作りのチラシを各店が掲示したり、配布したりしています。8月中は週末に「ほっとなるビアガーデン」を開催しますが、季節ごとに広場を使う催しを提供するようにしています。

 ─こうした販促チラシを商店主に代わって組合で作成するわけですね。
 そうです。それと、1993年から始まってすっかり定着したのが第4日曜日に開催している「ほっとなるフリーマーケット」です。出店料1000円で、18小間ですが、30〜40代の関心が高く、人気のイベントになりました。このほか8月5〜7日の花笠祭りや、歩行者天国になる催しのときなどに、商店街としても各種催事を実施するようにしています。

 ─商店街のあちこちの店に情報誌が置かれていましたが。
 
フリーペーパーの「なな」です。創刊した2001年から大学生バイトを使って各戸にポスティングするほか、組合の店、コンビニ、ゲームセンターなどに置いてもらっています。A4三つ折サイズなので受け取りやすいし、両面印刷なので情報が豊富、10店分のクーポン券が付いているので、多くの利用者がいます。内容も親しまれるものを目指しています」

 ホームページも情報が充実していますね。
 商店街のイベント、ショップ紹介、駐車場リスト、クーポンなどのほか、掲示板を設けて商店街への要望も伝えてもらうようにしています。ホームページを見て、来店客が増えてきているといった話もチラホラ聞きます。
 
 それと、日中ラジオを聞いている主婦層が多いので、中心商店街が主体となって山形コミュニティ放送(株)を設立、1995年4月に開局しました。資本金6550万円には商店街をはじめ、多くの市民も出資し、会長には商店街の前理事長が就任しています。山形市全域18万世帯をカバーしているコミュニティFM局「ラジオモンスター」は地元ではかなり知られています。このなかに商店街ではウィークデーの午前中15分間「ほっとなる七日町情報」の番組名で駐車場情報や役立つ情報を流しています。ホームページは更新にメンテナンスを含めて年間30万円、ラジオのほうは年間180万円かかっていますが、どちらも効果はあげていると思います。

 ─組合の隣にある駐車場が商店街の駐車場ですか。
 はい。この商店街は他にさきがけて駐車場事業を手がけました。先見性があったと思いますね。1977年に平地駐車場、1981年に225台収容可能な立体駐車場を造り、1987年より全自動式精算システムをオープンさせました。1997年からは市内近隣の駐車場と提携した共通駐車券システムを開始し、全体では4000台以上利用可能です。
 
 駐車料金は1時間300円で、組合員の店はサービス券を255円で購入し2000〜3000円以上の買い物客に渡す。利用分量に応じて割り戻しが出ます。買い物客にとってはどの駐車場を利用しても一定金額の買い物でサービス券をもらえるので便利です。商店街では山形市中心商店街駐車場地図を配布し、加盟駐車場と加盟店を呼びかけています。現在は20の駐車場が加盟し、月平均の回収も約1万5000枚になりました。

 七日町商店街駐車場では24時間営業で夜間にも対応し夜間駐車料金を60分100円でサービスしています。いまでは山形市内全域からの車客が40%を占めています。自転車利用客も1日3000台と多いので、商店街専用駐輪場がないのが残念ですが、巡回整列するようにしています。

 近年は職住接近で、市内に中層のマンションが増えてきているのが商店街にとっては追い風になってきています。土・日曜は平日の1.5倍くらい、1万9000人程度の人出になります。
 
 駐車場事業収益のおかげで多彩な事業が展開できるといっても過言ではありません。フリーマーケット、ほっとなる広場での出店料、情報誌「なな」の広告料でも収益をあげています」

 ─お話を伺っていても、みなさんが一致団結して商店街活性化に取り組んでいる熱意が伝わってきます。小売店というと店主夫人の役割も大きくなりますが。
 女性部の活動はマスコミでも数多く掲載されました。2002年6月には第10回全国商店街おかみさん交流サミットでおかみさん大賞・元気賞を受賞し、いっそう励みになったようです。

 ─大型量販店が進出するというピンチを商店街活性化のチャンスに変えましたね。
 組合全体で「魅力ある元気な七日町の復活」を目指しています。そのために街の環境保全、地産地消活動、空き店舗の活用、情報発信など可能性のあることは前向きに取り組んでいます。やればやるだけの成果はあげられます。空き店舗が出てもすぐ埋まるのはありがたいことです。かつて商店街が賑わっていたころを知る人たちにとっては人出の点でまだまだという気持ちかもしれませんが、客観的にみても商店街としてはよくやっていると思います。働いていても達成感のある職場です。

 ─商店街を構成する組合員の地道な努力も大切ですが、商店街を支えるのは組合事務局の力も大きいということがよくわかりました。ありがとうございました。 

 (文・川島佐登子  取材2002年9月、記事に出てくる数字は2003年2月時点で最新のもの)

 

【取材を終えて】
 (財)食流機構がコンクールに商店街部門を加えてから最初の農林水産大臣賞です。郊外にジャスコが2店(新しいから規模も大きい)出店していたら、弱気な商店街ではきっと勝ち目はないと思うことでしょう。おまけに、町とスーパーを結ぶバスが町中を堂々と走っているのです。でも、この商店街は「我が道を行く」で、様々な試みをして町に人を呼び戻すようにしてきました。それと、何事につけ、人材の大切さを身にしみました。全国の商店街に、佐藤さんのように熱意あるスタッフが揃うと、もっともっと活性化していくことでしょう。小売店、商店街を支えていこうという意欲にあふれていました。私もホームページで活動内容を紹介することで、小売店、商店街の素晴らしさを伝えていければと考えています。