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*2004年8月、このお店は閉店または移転してしまったらしいことがわかりました。こうしたお店があったという記録の意味で、また、今後も役に立つノウハウを伝えていく意味で、HPのほうは残しておきます。 

アイデアのある販売で顧客をつかむ食肉店

 第7回農林水産大臣賞受賞。売場面積99u。第1・第3日曜定休。営業時間10〜20時。従業員数4人。小売の割合100%。小売市場で営業していたが、89年、札幌市の郊外、篠路地区(人口8万人)に独立して開店。競合がきびしい中で、和牛など高級牛肉と惣菜、こだわりの食品などで、幅広い顧客をつかんでいる。

尾崎輝美社長(右から2人目)、富貴子夫人(右)

北海道札幌市北区篠路四条5-2-13

和牛を扱い続けて20年

 食肉専門店の有限会社 ミートハウス尾崎屋は、札幌市北区篠路(しのろ)にある。

 札幌市は、北へ向けて造成が進んでいるが、JR札幌駅から札沼線で25分の篠路地区も、駅の北側は89年に造成された住宅地域で、現在は南側が造成中、ゆくゆくは区になる予定である。

 ミートハウス尾崎屋は、駅より北側に徒歩7分の商・住宅地に立地しているが、お肉屋さんらしくない店構えである。太い丸太でログハウス風に組み立てられた建物は、とてもモダンで、入口の小さな看板に気が付かなければ、お肉屋さんとは知らずにそのまま通り過ぎてしまいそうだ。

 店内もモダンな外観そのままに、ブティックのように洗練された雰囲気が漂う。店の隅に北海道らしい暖炉がしつらえてあり、ベンチの脇にセルフサービスの飲料コーナーがあるなど、ゆったりとくつろげる場所を提供していることが大きな特徴となっている。店内にクラシック音楽が流れる食肉店も珍しいだろう。

 「地域の人が店の存在を知れば来店してもらえるので、あえて食肉店らしいイメージにはしませんでした。ログハウスに憧れていたので、少しでもその雰囲気を出したいと、入口だけ丸太を組んでもらいました。

 斬新なイメージにしたことで、『お肉屋さんにしては進んでいる』とみられ、期待をもって来店してもらえるようになったようです。

 変わった外観から地元テレビ局にも紹介され、肉よりも建物のほうで知名度が高まってしまいました(笑)」
 イメージ戦略が功を奏したようである。

 北の大地のお肉屋さんは、建物のモダンさに経営の新しさが加わって、これからの食肉店のモデル的な店になっている。

 経営者の尾崎輝美さんは、食肉店営業を天職と考えている。
 「周りが食肉関係の仕事が多かったし、父も一時、肉屋をしていました。だから、自分も自然な成り行きで肉屋を志したんですね」

植木を飾り、暖炉や休憩スペースを設け、くつろげる雰囲気を演出
 1965年に食肉店に勤務し、78年に独立する前2年間は、恵庭市のローカルスーパーに引き抜かれ、店長として勤務した。新設する店舗で、店内のレイアウト段階から携わり、開店後も総体的に見ることを学んだという。それまでは食肉だけしか見てこなかったが、店長という立場で食品全体を見ることができた。

 当時その店では、冷凍肉しか販売していなかったが、生肉を扱うようにしたところ、売上げも周辺地域でトップクラスの店になった。ここでは、野菜の蘇生法、惣菜の陳列法やアイテムの工夫、幹部教育など、様々な分野を学ぶことができた。

 このときまで富貴子夫人は専業主婦だったが、いずれは独立しようと2人で話し合っていたので、スーパーの食肉部門を手伝ってもらい、店のノウハウを学ぶことにした。

 その後、78年に、小売市場内に店をもつことができたのである。当時の市場には珍しくドイツ風食肉店をイメージした造りで、ここでも繁盛はしていた。だが、惣菜をしたくとも、小売市場内に惣菜店が入っていると、その店に遠慮して取り組めない、などいろいろ制約もあった。このため、いつかは単独の独立店をもつことが夢だった。

 「15年くらいが小売市場の寿命といわれていますが、当時すでに、年配の客が多くなっていました。

 年をとると食も細くなって肉をあまり食べなくなるので、肉屋にとっては、高齢者が多いときびしい。 近くにスーパーが出店してきて商圏も移行しつつあったので、頃合いと思い、スーパー出店の1年後くらいに小売市場を出ました。今も小売市場はありますが、あのまま続けていれば、ちょっと苦しい状況になっていたかもしれません」

 合間を見つけて物件探しをしているときに、店舗兼自宅として、現在の土地を見つけた。通りを隔てて向かい側に生協の店舗があったが、逆に有利な要素に思えたという。生協は肉を扱っているが、和牛肉中心ならば競合しない、むしろ食肉専門店としてグローサリーが弱い部分を生協が補ってくれるだろうと考えたのである。

 出店したとき、競合店は1q圏に生協と地元スーパーの2店しかなかったが、現在は大小とりまぜて5店に増えた。扱っている肉の品質が違うので、直接の競合にはなっていないと自信を見せる。とはいえ、スーパーの安売り攻勢はすさまじく、札幌市内の専門店は年々減りつつある。
 だからこそ専門店の意地を示したいと、新しい専門店の姿を模索している。

調理方法を教える

 ミートハウス尾崎屋の好調を支えてきたのが、ブランド戦略である。和牛は岩手産前沢牛、豚肉は旭川産、鶏肉は伊達産など、徹底的に 「うまい産地」にこだわっている。

 特に、和牛は20年間扱い続けてきた。というよりも、独立以来、牛肉は和牛しか扱っていない。北海道は酪農が盛んなので、牛肉といえば「乳臭い」というイメージが強く、すき焼きでさえ、牛肉でなく、豚肉が利用されていたほど。そうした土地柄で和牛肉を扱うのは楽ではなかったが、ここ10年来で和牛肉のうまさが1般にも知られるようになってきた。

 「限られた売場でアイテム数が多いとロスが出るし、スーパーと同じものを扱っても勝ち目はないので、スーパーができない和牛一筋にきました」

 和牛肉は、肉の色や締まり方を納入先に指定して、最高ランクのものを置くようにしている。通常の食肉店では、A3からA4ランクの取扱いが多いが、前沢牛のA4から、いわゆる霜降りをさすA5ランクの肉しか扱っていない。しかし、ランクを信用するのでなく、これらの肉については長年数多く見続けてきた「自分の目」を一番の判断基準においている。

 和牛肉は、食べてこそおいしさがわかってもらえると確信している。前沢牛は神戸牛や松阪牛などの超ブランド品と違って、味のよさのわりに値段も手ごろな点も北海道向きと思って販売している。
 
 このため、まず食べてもらうことが大切で、情報提供をこまめにして、買う気を起こすための販売促進を常日頃から心がけている。
牛肉は最高ランクの国産和牛を取り扱う

 その1つが、食肉に旬を演出する試みである。具体的には、月1回の売出しを利用して、夏はバーベキュー素材や冷しゃぶ、秋から冬にかけてはすきやき、もつ鍋のスープなどを売り出し、料理提案で季節を感じさせている。その場合は、料理に必要な調味料も関連づけて陳列するように心がけている。

 さらに、調理法のアドバイスをこまめにしている。ステーキの焼き方1つにしても、火加減、塩、コショウのタイミング、ステーキソースの作り方など意外に消費者はわかっていない。こうしたことをきめ細かく説明するようにしている。

 「ステーキは、肉が厚ければ厚いほど強火で短時間に焼くことが大切。さっと両面を焼いて膜を作ることで外に肉汁が逃げないんです。ところが、肉が厚いと、弱火で長時間焼いてしまう人が多い。塩、コショウは焼く寸前にして、ステーキソースは鍋に出た肉汁を利用して作れば、さらにおいしくなります」

 「手づくり風焼豚は家庭で簡単にできるんですよ。小さな鍋に砂糖入り紅茶をひたひたに入れ、その中で40分煮る。その後取り上げて、ひたひたにかぶるくらいのしょうゆ、みりんと酢を各大さじ1入れたビニール袋に漬け込み、冷蔵庫に一晩おくんです。味付けはしょうゆの量で加減すればよく、おいしく仕上がります」

 こんな調子で、気軽に調理方法をアドバイスする。対面販売を生かすことはスーパーにはできない強みなので、パンフレット類の活用のほか、できる限り口頭で説明するようにしているそうだ。


惣菜で来店頻度を高める

 さらに、それらの素材を用いて作る和牛ハンバーグやロース味噌漬けなどのオリジナル惣菜が、売上げの20%を占めるまでに伸びてきた。

 入口を入って正面に目に入るのは、惣菜の売場だ。手づくりの惣菜、サラダやコロッケなどが並んでいる。

 「基本的に、おいしくないものはつくらないという方針なので、惣菜は手作りの味を生かすようにしています。惣菜は『物に心』と書くように、心がこもらないといけない。だから、ロス処理を目的に作ってもおいしくない。やはり新鮮な素材で作るべきだと思います」

 だから、市場のできあいのものは扱わない。惣菜は、夫人の担当だ。

 惣菜は、コロッケなど定番商品のほかは、半年くらいのサイクルで変化をつけるようにし、飽きられない工夫をしている。串カツは中身のカツを厚めにするとか、サラダのメインになっている中華サラダは中国産の春雨を用いるなど、原材料やおいしさにこだわって作っている。

 「和牛肉が高級イメージなので、惣菜が来店頻度を高めるうえで役立っています。現に、惣菜を買いにみえるお客様が、何回かに1回は和牛肉を購入してくださいますから」

手づくり惣菜が売上げの20%を占める
 惣菜のアイテムは、揚げ物類を中心に10数種類。串カツ、エビフライ、ロースカツ、イカリングなどのほか、ホッケフライなど北海道らしい揚げ物もある。コロッケ類は、カレーコロッケ、カニコロッケなど6種類あり、中でもカボチャコロッケやジャガイモの甘みがそのまま生きる野菜コロッケは好評だ。これらは注文を受けてから揚げている。

 このほか、シュウマイやギョウザ類、サラダなどで、約30アイテムがオープンケース内に並ぶ。肉に高級感がある分、惣菜はコロッケが70〜80円、サラダ類が100g100〜120円というように、手頃な価格に設定されている。

 人気の惣菜は、和牛ハンバーグ。ハンバーグは合い挽き肉でつくる店が多いが、同店では和牛肉でつくっているので、味の違いが際だっている。「目で見てよいと思う挽肉と、できたものをおいしいと思ってもらえる挽肉とでは、全然違う」と言い切る自信作である。

 ジャガイモは生産者からの産直品、タマネギは篠路産、揚げ油はサラッと油切れがする特定メーカーの植物油といった具合に、原料や調味料にこだわっているので、味や満足度の違いが人気につながっている。

 惣菜コーナーは、これから最も伸びる分野だと考え、おかずだけでなく、ごはんものも置いている。これがヒットし、納豆巻きや太巻き寿司などはよく売れている。特に、節分の日に恵方を向いて太巻きを食べると無病息災という言い伝えがあるため、その日はふだんの数倍売れるという。食肉店の太巻き寿司として名物にもなってきているが、ごはんを加えた弁当類なども、これからは検討されていってよいだろう。


食肉店ならではのサービスを工夫

 北海道といえば、ジンギスカン料理のイメージが強い。材料や調理用具の貸出しだけでなく、後始末まで行う同店の「ジンギスカン鍋出前サービス」は、いまや地域の名物にもなっている。小売市場の頃より続けていたが、独立店になってからさらに注文は増えている。

 出前の仕組みは、調理鍋1台とラム肉をセットにして、10人分で6960円というもの。この内訳は、5s分の肉が6000円、炭代850円、焚き付け代110円となっている。さらに、オプション料金として、野菜が120円、箸・とり皿が20円となっている。

 6〜11月がシーズンになるが、地元町内会、学校、企業関係などで、毎年コンスタントに注文が入るようになった。通常は12〜13台の注文が多いが、100台近い鍋を用意している。最も多いときには、80台(800人分)の注文を受けたという。

 これは、材料・調理用具をセットで届け、炭火をつけるまでを尾崎さんが担当する。会が終わったら、片づけをして引き取る。

 慣れれば大変ではないというが、このサービスをすることにより、地域にもすっかりとけ込んでいる。

 専門店として、和牛肉、惣菜のほかに、近年は関連商品の販売にも力を入れている。そうめん、豆腐、納豆、ぶどうジュースやトマトジュース、ようかん、菓子類など。それらは一般には入手しにくい、小メーカーのものや地域の特産品ばかり。いずれも味にこだわった食品ばかりである。

 「商品の仕入先との関係で、岩手県産の特産品が多く入るようになりました。食肉は季節感が乏しいので、こうした特産品で季節感を出して、興味をもってもらえたらと期待しています。

 例えば、JA平取町のトマトジュースなどは、生食用の桃太郎を使っていて、トマトが苦手な人にも好評です。こういう品物は、まず自分たちが飲み、食べてみるんです。それで、おいしければ自信をもって販売できます。こだわった商品を置くことにより、それらを求める層が来店してくれるようになりました」

 尾崎さんのモットーは、「敬客・愛品」である。客を敬い、品物を愛することを常に実践するようにしている。これから取り組みたいのは、インターネット通販。ジンギスカン用生肉の宅配を通じて北海道の味を全国に知ってもらい、このほかにも、こだわったものとの出合いを大切にして、お客様に提供していきたいという。

 素材のよさや味にこだわった商品は、食肉関連での商品開拓が見込めるし、自店のオリジナル商品として北海道ならではの特産品をつくるという道も残されている。これから、専門店としての真価をますます発揮することが期待される。

繁盛店のノウハウ
☆和牛肉などブランド肉を取り扱う。
☆惣菜は、新鮮な素材とよい調味料でつくる。
☆ジンギスカン鍋の貸し出しで地域サービス。
☆関連商品のこだわりが、客を呼ぶ

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