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マルカン神田
2006年12月22日で閉店しました

東京都豊島区西巣鴨4-12-4

営業時間10:00〜21:00 定休日日曜、祝日


神田勝さん、ますみ夫人、舜さん(お母さん)


甥の中村光志さん

店主の神田勝さんは2005年10月に急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。
店舗は家族の方々で営業されています。


 果物を食べて自らの体でダイエットを実践した店主がいると聞き、早速訪ねた。都内豊島区西巣鴨でマルカン神田という青果中心の食品店を経営する神田勝さんである。

 ――ダイエットしたきっかけは。

 「2年半くらい前に、医者から糖尿病予備軍だ、やせなきゃだめと言い渡されたんです。たまたまそのときに松田麻美子さん(著書「常識破りの超健康革命」など)の講演を聞いて、フルーツ朝食のダイエットならばうちでできるじゃないかと始めました。果物をたくさん食べるからかなりお金がかかるけど、果物が豊富にあるのは我々の特権ですからね(笑)」

 ――それ以前はどういう食事でしたか。

 「もう暴飲暴食。(体重が)108kgあったんだもの。これを朝だけ果物を食事代わりに食べるようにした。果物は消化がいいから、胃を通過して腸で消化される。だから、胃に何も入っていないときに食べれば全部いい糖になるわけ。胃に何かを入れた後に果物を食べると胃の中で消化されて太る糖分になるので、食後のデザートはいけないと教わりました。それを信じて、フルーツ朝食を続けました。市場へ仕入れに行くときに果物を持参するので、今の時期はブドウが多いです。

最初から本当にガタンとやせましたよ。ズボンがだぶだぶになるくらい。92kgまで下がったから、16kgやせた。体調がいいですよ」

 ――朝の果物だけで本当にやせるんですか?
 「まぁ、試してみてください(笑)」

 ――神田さんがやせたのを見て、お客さんから秘訣を聞かれた?
 「もちろん教えました。実際にやった人もいます。お金がかかる〜と言われました(笑)」

 ――フルーツ朝食が役立ったことは。
 「自分が食べているから、お客さんに自信をもって教えられる。それがプラスになっています。自分で食べないでおいしいよという店も多いけれど、やはり食べて売らなければいけないと思いますね。以前よりは品物に対して自信があります」

 ――そのほかの運動はしていますか。
 「月に1回市場が休みになる水曜日に、うちから豊島園(往復13km)まで歩いてお風呂に入って帰ってきます。これが楽しみです」
 とはいえ、陰には家族の協力もあった。
 
 【お母さん、舜さんの話】「生まれたときには2500gしかなかったのに、小学校にあがってから太り始め、中学生のときには相撲部屋から迎えにくるぐらいだったんですよ(笑)。中学校、高校と柔道部で体はじょうぶでした。

 夕食も私たちがおいしいものを食べているのに、食べちゃいけないとは言えない。それで、別メニューで夜は一人で食べてもらい、1週間に2回くらいは家族で食べるようにしたんです。それもあってだいぶやせましたね。私たちの食事作りも含めて、栄養管理してくれたますみさん(嫁)には感謝しています」
  

***

       
 今回は、「フルーツ朝食でいかに健康的にやせたか」をテーマに伺った。ところが、店の内容も素晴らしいので、急遽お店紹介をさせていただくことにした。果物店だからこうしなければならない、といった論理は通用しない世の中になってきた。いかなる業態であってもヒントにすべき点はあるが、家族経営中心のマルカン神田店もおおいに参考になることだろう。

  ■客層に合わせて、売れる商品を品揃え

 同店は1948(昭和23)年12月、現在の店からひと筋離れた通りで創業した。やがて現在地に2号店として出店。周辺が住宅地なので青果を主力にした総合店スタイルにしていたが、2000(平成12)年に2号店だけに販売を絞り込み、本店は、バックヤード、倉庫、惣菜加工場にした。本店のほうの人通りがあまり見込めなかったことも販売一本化を決断させた。

 現在地は都営三田線A2出口から徒歩1分未満、大通りには面していないがすぐに看板が目に付く。周辺は近年大通り沿いにマンションが建ち、客層は昔ながらの住宅に住む高齢者とマンション住民の若い世代が中心。生鮮食料品を扱う○○屋といわれるような店はなくコンビニ店が2店あるだけ。1駅離れた巣鴨駅にスーパーが2店あるが、毎日の買い物には不便である。

 
売場は約27u。高所得者層、食への関心が高いファミリー層、一人暮らしの人向けに品揃え。従事する7人のうち、5人が家族や親戚

 いわば地域住民の便宜のために総合化したわけだが、その内容は客層の変化にまで対応したものとなっていて、「おもしろいものがある店」として評判である。営業時間は10:00〜21:00、家族で可能な限りやりくりして長時間営業をしている。

 店は約27uしかない。野菜は少量多品種の品揃えで、ルッコラ、空芯菜、ベビーリーフなど若い世代向きの野菜があるかと思えば、青じその実など中高年が懐かしく思うものもある。ニンジン、キュウリなど袋入り商品も要望に応じて1本でも販売する。入り口近くの壁面は低い陳列にして、後方に鏡を配しているので、狭い店内を広く見せる効果が出ている。   
 
 ■肉、魚はグレード高く

 その日の買い得な野菜で作った野菜中心の惣菜がレジ近くにある。「惣菜を作るとロスも少なくなるけれど、ロスが出るようなものを売っていてはだめと言っています」(舜さん)

 関連商品や豆腐、納豆などの日配品は、小メーカーながらも味や品質がよいものを多く取り扱い、生ハムまで置いてある。

 奥は肉と魚のコーナー。ショーケース1台なので陳列スペースは限られるが、その品質が吟味されている。牛肉ならばステーキ用、焼き肉用、細切れ肉をパックしている。豚肉、鶏肉も含めいわば必要最低限の品揃え。これらは肉の卸から調達するが、見た目にも品質がよいのがわかる。

 驚かされたのは魚である。マグロは大トロ、トロ。「お寿司屋さんに行かないと、こんなにいいのはないよ」。他にはスズキのたたき、カツオのたたき、ホタテ、イカなどの刺身、サンマ、シジミ、アサリ等々、産地にこだわって仕入れている。

 高級魚とされる1尾1500円前後のキンキも1匹ずつパックされ十数パックも並んでいる。スモークサーモンも自慢の一品だ。
 これらを仕入れるのは神田さん。朝5時すぎに車で5分の豊島市場で野菜を仕入れ、マイテーカーにのせておくと、甥の中村光志さんが取りにくる。その後築地市場に魚を仕入れに行って9時半頃に戻る。青果物の品揃えがすむと、午後は刺身などの準備に入るから一日中忙しい。来店客が「この前のタカベ、おいしかった」といいながら、今日のおすすめを聞いている。

 ■お客のためにメニュー提案

 「若い人はメニューを決めずに、今日は何にすればいい?と聞く。今日はこれだよと言って料理方法を教えると、次には旦那にほめられてうれしいってやってくる。キンキみたいな高額品だと買う人は大体決まってくるよね。だけど、あのお客さん、このお客さんってイメージして売り切る自信があるから仕入れてくる」 

 総合的に扱っていると、アドバイスをした料理の具をすべて買ってもらえるという強みがある。

 

少量多品種品揃えの野菜売場  エダマメは食べ比べの試食を提供   話題の野菜も豊富

 「空芯菜をアサリと炒めてごらんよ、おいしいから。空芯菜はざくざく切っておく。オリーブオイルでみじん切りのニンニクを炒めて香り付けしたら、アサリを炒める。口を開けたら、空芯菜を入れて塩コショウ、好みで醤油を入れて終わり」

 「モロヘイヤは細かく葉だけをみじんに切って冷凍にしておくとスープを作ったときにもおいしいわよ」

 魚と肉のショーケース後方で作業しながらも、売場のお客さんに向けて声がとんでくる。

 客の顔を思い浮かべながら仕入れ、その日の料理の提案までしてしまう。仕入れたものを売るのでなく、売れるものを仕入れ、全力で売り切るという姿勢である。ロス対策としての自家製干物もこの店では人気商品である。

 商品アイテム数は約300。どの商品も商品管理の目が行き届いていて、新鮮に見える。

 ■野菜は少量多品種、試食で食べ比べ

 この日、野菜ではエダマメ(3種類)のうち黒豆とだだ茶豆、レジ前にパプリカ(赤、オレンジ色)の揚げびたしの試食品を出していた。「あら、これおいしい」と言って試食した人は購入している。「油で揚げたら、そうめんのつゆに浸すだけで簡単」とすすめている。これは、東京の青果店の勉強会「八百屋塾」で教わったメニューである。習ったことや、良いとすすめられた品種はすぐに店に採用するようにしている。

 ■果物は旬の味を重視

 果物は店頭で季節感を伝える役目だ。8月下旬は、桃、梨(幸水)、ブドウ、バナナ、リンゴ(つがる)、プルーンなど。売場が狭いので種類は少ないが旬のものを扱うようにしている。ブドウはデラウェア、ピオーネのほか、ロザリオビアンコが並んでいた。8月の八百屋塾「ブドウの食べ比べ」で最も評判のよかった品種だ。

 店に従事するのは神田さん、ますみ夫人、お母さんの舜さん、甥の中村幸志さん、パート1人。このほか惣菜部に2人。

 神田さんは仕入れと刺身など魚の加工中心。ますみさんは魚の加工と販売全般。舜さんは販売とレジ。「私は80歳(なんと大正13年生まれ!!)なの。だからあと何年働けるかしら」と言いつつも、働きがいを感じているから元気そのもの。

 経験13年の中村さんは多忙な部門の仕事をこなすサポート役で、配達も担当する。一度でも行ったことがあれば、住所を聞いてピンとこなくても、名前を聞いただけで配達できるそうだ。ただ漫然と配達するのでなく、常に仕事としてお客を大事にしているということだろう。ここ2年間は八百屋塾にも参加していて、「今の時期にどれくらいの味なのかということがわかるようになり、自信をもって販売できるようになった」とプロ意識を一層高めている。

 「ロザリオはここ数年、とても評判がいいです」(中村さん)

 やはり店を選ぶ決め手は味のよさのようだ。野菜、果物、魚、肉、一般食品、すべてにおいて神経が行き届いている店であることは、お客がよく知っているから、客が切れずに来店し、夕方にはレジ前に行列ができる繁盛店になっている。

 「お店の特徴はみんながよく働き、朗らかで明るいこと。私も幸せです」という舜さんの言葉が印象に残った。

入り口(自動ドア)の手前に季節感を出す果物を陳列。プルーンは生果と乾燥品を並べていた