果物と砂糖を煮て作る保存食といえばジャム。そのほかに、フランスにはジュレなるものも存在するらしい。おぼろげな知識はあったものの、差がはっきりわからず悶々としていたところ、果物農家で作り方を見せてもらう機会がありました。 時は6月の終わり。収穫は、最盛期を迎えようとしています。ちょうど木いちごとさくらんぼが旬で、一家の主婦、マットゥおばさんは、一年分の貯蔵のための加工に大忙しでした。
台所には、直径50cm、高さ1mほどの白いタンクが置かれています。「遠心分離機。ジュースを作るためよ」とのこと。収穫物の箱を両腕に抱えて畑から戻ってきた息子が、タンクの中の、プラスティックのざるいっぱいに木いちごを放りこみました。スイッチを入れます。待つこと約1時間。さらさらとした、苺色の果汁が蛇口から流れ出てきました。薦められて味見。さっぱりしているけれど、エキスがぎゅっとつまったような、濃い味でおいしい。機械のふたをとって中を覗くと、水分を抜き取られた果肉とつぶつぶの種が、クシュンとした姿でざるに残っていました。 この果汁だけを銅鍋に移し、砂糖を加えて煮たものがジュレ。ジャムのほうは、新たに果肉を裏ごし、砂糖を加えて煮ます。「果汁+砂糖」か「果肉+砂糖」かの違いだったわけです。
百聞は一見にしかず。でも、「なんで手間をかけて、同じような保存食を二つも作る必要が?」と、次なる疑問が湧いてきます。 「ジャムだけでは、充分ではないの?ジュレだって、パンに塗って食べるのが、主な用途なんでしょう?」 「二つは同じものじゃないのよ」とおばさん。「ジュレは、果物のタルトの、仕上げの艶出しにも使うの。それに、果肉や皮が入ったジャムは、歯にはさまるからと嫌がる人もいる。私は毎年、2種類用意するわよ」。誇らしげな笑みを浮かべた視線を頭上に感じつつ、ふんふんとメモを取りました。
本来、ジュレにはペクチンの多い果物が向くそうです。日本のニュースでゆずの収穫風景を見て、心が動きました。さっそく八百屋に走って、試作。鍋から漂う香りのよさに、うっとりします。何回か作って、好みの味加減をみつけました。 あまり砂糖を加えると、ゆずらしさが消えてしまうような気がします。酸味をかなり残しました。はちみつなどを加えて、甘さは調整してください。 市販のバニラアイスクリームに、刻んだチョコレートを混ぜ、スプーン一杯のジュレをかけていただく。これが今、気に入っているデザートです。チョコレートとゆずは、良い相性です。
寒い季節の風物詩で作る、日本版ジュレ。農家のおばさんにあげたら、何と言うだろう。顔が思い浮かんできます。
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