top
Home
平成13年度 第2回 5月20日(日)開催
今回から品目別の勉強会になります。その前に前回の続きで「野菜の品質」について江澤先生の話が約30分ありました。その後4品目について説明を聞いた後、東京青果の村木さん、沢田さんから生産状況や取引状況の報告があり、試食しながらの検討会に移りました。
・
江澤先生のお話
・
ダイコン
・
カブ
・
キャベツ
・
ブロッコリー
・
食後の感想ほか
江澤先生のお話 〜嗜好性について
八百屋は食べ物屋にならなければいけません。食べ物屋というのは、品質の問題がわからないと不合格です。
食べ物は、安全性、栄養性、嗜好性、と分かれていますが、この3つは非常に違います。
安全性は、残留農薬の度合いや窒素肥料の入れすぎで硝酸体窒素がどのくらい残っているかというようなことですから、品物自体を調べればわかります。
栄養性についてですが、日本の栄養学は栄養素重視で、栄養分があるものを食べればよいというだけでした。けれども、実際には栄養分が人間の身体に入ってどのように吸収されるのか、身体に合うのかどうか、薬とどう違うのかなどいろいろ問題があります。栄養がどのように役立つかについては、人間との関連性で考えなければいけません。
嗜好性というのは、味はどうか、味の成分にはどのようなものがあるのか、香りの成分はどうかといったことです。そこからうまいかまずいかという感覚が生じてくるわけです。品物がうまい、まずいという表現は人間が中心です。ですから、育ちやこれまで食べた習慣によって、各人が感じるおいしさの基準に差があります。これは当然なことです。
米屋さんで以前に失敗したのは食味計で米の味を計ろうとしたことです。食味計を使っても、半分か3分の1くらいしか答えは出ません。やはり食べる人の味覚の問題になるからで、あくまでも食味計は参考にするぐらいにしかなりません。ですから、うまいまずいというのは、みなさんが食べてみて本当にうまいのか、どこがうまいのかという問題になってきます。
「食べる」ということには、「食べ方」と「感じ方」があります。食べ方というのは、熱や調味料を加えるか、加えないかという問題がありますし、保存する場合の問題もあります。食べ方も和風・洋風・中華風その他いろいろあります。
和風は素材そのものを生かした味で食べるので、刺身などはその最たるものです。和風料理は味をくどくしません。
洋風料理はソースにこります。音楽でいえばオーケストラです。
中華料理は、中国本土が広いから広東料理、四川料理、上海料理、北京料理といろいろあり、食べ方によって違います。
そうなると、我々がうまい、まずいというのは感じ方が一番問題であるということになります。味覚を感じるのは、舌です。目で見て、臭いをかいで、口に入れて、歯でかんだのが、脳髄に行き、そこで味覚が記憶されます。口に入れて歯切れのよしあしを、舌で甘い・辛い・苦い・酸っぱいなどを感じ、口腔粘膜にふれて、熱さや冷たさ、ざらざら感やきめの細かさを知ります。それらを口のなかでいちどきに感じるわけです。喉越しのところで、食物の細胞が壊れ、嗅覚でその臭い(フレーバー)をかぎます。
口の中でつぶすことによって臭いが出てきて、それらを感じて味のよしあし、好き嫌いが出てくるわけです。
こうしたことを五感で感じて記憶しているので、うなぎ屋さんのそばを通って臭いがすれば食べたいと思うし、梅干を食べると酸っぱいという記憶がよみがえって涎が出てきたりするのです。今まで育ってきた経験を通じて記憶していることが我々の味覚を決めているのです。
赤ん坊は甘さだけしかわかりません。身体が未発達で無防備ですから、できるだけ刺激的なものはとらないようにしています。だんだん身体が大きくなるにつれて自分なりのうまさがわかってくるわけです。赤ん坊の頃は、酸っぱいのは腐った味、苦いのは毒だという感触です。
野菜だと筋っぽさとか、あくの強いものとかが問題になります。たとえばサトイモならば蓚酸カルシウムがあったり、舌をさすような刺激成分がありますから、子供はそれらに対して非常に敏感です。ピーマンのように臭いが強いものだと、みじん切りにして料理に入れても一つずつ出したりします。
ですから子供の味覚は発達していると思うと大間違いで、単に身体に合わないからです。逆に、牛乳に対して子供のうちは抗体があるのに、大人になると抗体がなくなってくるので、腹を下したりします。ヨーロッパ人は抗体があるので牛乳を飲んでも腹を下すということはありません。
年寄りで総入れ歯になってしまうと、口腔粘膜に刺激を感じないため、記憶によって感じるだけになってしまいます。身体が老化すると神経も敏感ではなくなってしまうのです。みなさんもたくさん食べて「べろメーター」を鍛えないとだめですよ。
食べたものがうまいというのは、何がどううまいか、まずいかを自分で判断することです。自分の舌を訓練していくことをしないと食べ物屋にはなれません。
もう一つ、食べ物屋は日持ちしなければだめだという考え方はタブーです。洋菓子屋は今日売れるだけしか作らないようにしていますが、野菜や果物もすぐ食べられるものを今日売るというように考えていかないと、これからはお客さんの要望にこたえられません。日持ちするほうがよいのならば缶詰のほうがよいし、缶詰ならば価格が安いスーパーに行ってしまいます。みなさんは直接野菜を作っているわけではなく、みなさんのお店が選んで提供していくことになります。自分の目にかなったものを選んで提供できるように、舌を鍛えていかなければいけません。
一番肝心なのは、臭い(フレーバー)の好き嫌いがあることです。それともう一つ、肉質です。たとえばダイコンは肉質が締まっていて、なおかつやわらかくなければいけません。けれども、刺身のツマにするならば筋っぽくてもかまわないわけです。ですから、食べ方と肉質とを考えていく必要があります。味のほうは調味料を入れればある程度変えられるけれど、肉質と臭いは変えられません。
おいしさは嗜好性ですが、食べてどうなのかというのは食べ方との関連もあります。品質や肉質は、品種・作型・作り方・収穫期・扱い方によって違ってきます。