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2004年(平成16年) 4月18日 (日) 第1回
開校式 学習テーマ「トマト」

八百屋塾は今年度で5年目に入り、新たな塾生も加わりました。
開講挨拶の後、東京都青果物商業協同組合/全青連の市川会長が「修得したノウハウは皆様方の財産。よそで学べないノウハウですので、ことし一年間頑張ってください」と激励、早速講義に入りました。

・八百屋はどういう勉強をするのか。

1)これまでの八百屋は物品販売業だったが、それでは役に立たない。物品販売業から食材店、食べ物屋になるという勉強をしていく。

2)あとは品質という問題について考えていく。人間の役に立つことが品質の問題である。

3)日本の野菜は、日本古来から自然にあったものと、よその国にできて日本に入ってきたものがある。野菜は生き物である、としてどのように理解しなければならないか。

4)食べるということが大切なので、食べるところまでの経過を学ぶ。

5)野菜としては、植物として見ること、食べ物として見ること、商品として見ること、3つの観点から見ていく。


・なぜ食べ物屋にならないといけないか。


 地球上で8億人くらい食べ物のない地域があるが、先進国は食べ物が余っている。米は1970(昭和45)年に減反が始まった。これは頭に入れておいてほしい。

・野菜は穫れるときはすごく穫れるが、ないときは価格が高い。野菜は余ったり足りなかったりの繰り返しなので、野菜全体が余っているという感じはしない。ミカンは現在100万トンといわれているが、過去最大時には400万トンも生産していた。デパ地下の果物売場と菓子売場を比べると、果物があまり売れていないことがわかる。

・高度成長期、大都市に工業や流通業が発展し、農村から人が出ていった。それで、野菜不足になると困るというので、野菜はたくさん穫れて作りやすくて病気に強く、外観がよいものに変わってきた。それがずっと続いている。

・1984年に「桃太郎」が発売された。完熟トマトはうまいが日持ちはしないからだめだといわれ、選果機を通してもだいじょうぶというトマトが出てきた。また、1985年にブルームレスのキュウリができてきた。キュウリは野菜の中で一番売上が多かったが、「桃太郎」の登場でその後トマトに1位を譲ることになる。

 ブルームレスキュウリはブルームがなくてきれいだし、生産者も流通業者も売れるからいいというのでブルームレス一辺倒になってしまった。誰もまずいということは言わなかった。キュウリがまずくなったのは生産者や流通業者側に問題があり、そのツケはキュウリの人気低下、売上低下になって現れた。野菜がまずければ消費者は敬遠する。身から出たサビといえる。

・2000年以降野菜の消費は減ってきている。1年に1人当たり100kg以上消費していたのに100kgを割る状況になってきている。女性が社会に進出するようになると食の外部化が進み、外食や中食市場のものが多く売れるようになってきた。野菜が売れなくなってきているのが現実。

 消費者は流通業者から買うしかないが、流通業者、特にスーパーは野菜を食べ物として売っていない。八百屋は対面販売といわれるが、「対話販売」というほうがよい。対話の商売をするというのは一番お客様にわかる。ラジオやテレビで「うまい」というのは目で見ている情報だ。食べ物の情報は目で見、匂いをかいで、舌で味わって、五感をフルに動かさないとわからない。食べている人の話と食べていない人の話は違う。だから、対話販売をしないとおいしさというのは伝わっていかない。

 野菜が「安全」「おいしい」「栄養がある」ということは必要だが、それを伝えられる職種は八百屋である。スーパーは自動販売機であるし、生協も安全でおいしいものをなんとかしようという姿勢はよいのだが効率化が進んでいる。だが、スーパーも一部では地場野菜を置いたり、対話販売のような形をとろうとしている。

 したがって、八百屋は食べ物を売る必要がある。お客の立場に立って、情報を付けて販売すること。カボチャを年配客のために細かく切って提供するとか、お客のことを考えて対応すべきである。これからの八百屋は店主だけでなく、店全体が食べ物屋になっていくこと。自分の店がどのくらい食べ物屋になっているのかを自己評価をする必要がある。

・食べ物屋になるには味を食べ比べてみないとわからない。食べ比べという機会を逃さないためにも月1回の八百屋塾は休まずに参加してほしい。そうでないとお客の役に立たない。また、買う立場に立って考えること。そうすることによりお客とのつながりができていく。人は一人では生きられない。人のために仕事をすることによってはじめて自分に儲けがはね返ってくる。だから、儲けるでなく、儲かるという形に結果として考えるようにしていかなければいけない。

・自分一人だけ食べてわかってもだめ。皆さんの売っている品物は店の全員が食べてわかっていなければいけない。今週いくら売るのか、何を売るのか、何をどのくらい売るのか、商品の品揃え、商品構成、販促手段はどうするか、ロスはどうするか、というような計算ができてこないと店は長続きしない。データも自分たちで作成し、積み重ねていかなければならない。商売は、八百屋塾に出ているから商売はうまくいくというような甘いものではない。改革するためにはそれなりの考え方をきっちりもつことが大事。食べ物を食べ比べるという基本を商売の一つの足がかり、考え方にしてほしい。

・いい八百屋になるということは、世の中のためになるのである。後継者が店を継いでもやりがいのある仕事であるのだから、自分の仕事にやりがい、プライドをもってほしい。
 作る人も、売る人も、食べる人も、人と人との関係であり、裏切られても裏切らないというのは人間として一番大切なことである。正直で、儲かる仕事をしていく、世の中の役に立っていくということが大切。心新たに、専門店として世の中のためになっていくという気持ちをもって励んでいただきたい。

講義が終了するまでに試食用の素材を調理する荒井先生(左)と上原先生(右)。素材の種類が多いのと、数種類の調理法で試食するのであわただしい作業です。


■トマト

・トマトはナス科で、ジャガイモと並び世界中で食べられている野菜である。南米アンデス山脈の標高2000mの所に自生したといわれ、コロンブスがアメリカ大陸を見つけた後、1500年代にヨーロッパへ渡った。食べ物になってきたのは1700年代で、ポルトガル人がアメリカへ観賞用としてもってきた。実際に食べるようになったのは明治時代である。

・日本では昭和の初めにはトマトは一年中作られるようになっていた。トマトが本当に変わってきたのは、タキイ種苗の「桃太郎」が出てからである。その後、私の関わった西武百貨店でも完熟屋のブランドで永田農法のトマトを売った。玉伸びはしないが、非常に甘いトマトで、この頃からトマトに嗜好性が出てきた。1箱1万円くらいのトマトも出てきている。栄養価の面では、完熟してもビタミンCは変わらないが、カロテンが多くなり、グルタミン酸が3倍くらいになっている。トマトの甘さはさっぱりしてねっとりしていないのが特徴でバラエティ豊か。

商品解説

東京青果(株)個性園芸事業部
マネージャー 鈴木寛先生

「食べ物を扱う使命は鮮度。鮮度=うまさ、うまさ=鮮度だと思う」と前置き。

【トマト】1.〜10.は試食番号、3.は欠番)

 キュウリが落ち目な反面、トマトが頑張ってきている。どこの売場にいってもメインに置かれているのがトマト。色が売れる商材としてアピール度が高い。味も含めてフルーツ的な要素が強まってきた。洗ってすぐ食べられるので、イチゴ的な要素ももっている。

 4月上旬のデータでは東京都中央卸売市場に2600トン入荷し単価336円、前年比115%。4〜6月は6000トンで、冬場は半分。それぐらい入荷量の差が大きい。今は一番食べておいしい時期で、本来ならば栃木の春トマトが最盛期だが、現在東京都中央市場に入荷しているのは熊本県、栃木県、愛知県、埼玉県という順になっている。

 今日もってきた1.熊本(八代青果物)、2.栃木(JAうつのみや)、千葉(JA田中)は「ハウス桃太郎」。夏秋用完熟トマト「桃太郎」が発売されたが、周年供給するため加温物タイプを導入したいということで生まれたのが「ハウス桃太郎」である。この品種は、生産者からみれば小玉傾向だが、食味はよい。各産地の違いを見てください。

 4.「麗容」(JA足利市、栃木)は果実が硬く、日持ちがよく、完熟にして収穫できる品種である。「ハウス桃太郎」に切り替わるかどうかはわからないが、作りやすい。

 福岡(JAあさくら)の愛三種苗「試交73」は、博多のトマトとして販売されている。愛三種苗は「ファースト」が専門の種苗会社だが、福岡県で導入されている。今後の品種ということで試食してもらいたい。

 続いて、佐賀(JA佐城川副町)のサンロード(サカタのタネ)は自根栽培である。この品種はタキイ種苗でいえば「桃太郎」に匹敵するが、この売りは非常に味がよいことで、当社でも「光樹トマト」として販売している。食味はよいが、日持ちがよくなく、過熟になりやすい。

 いままで説明したものは全部丸玉だが、ファーストは先がとがっている。7.「スーパーファースト」は愛知県のJA伊良湖で出荷され、今現在ほとんどF1の品種で作られている。「レディーファースト」は、食味は別にしても夏場は作りづらく、周年対応は難しい。硬度感をいわれるとつらい品種。

【フルーツトマト】

 高糖度トマトのフルーツトマト。9.埼玉産(JA埼玉岡部=糖度11.5でこの日最高)「レディーファースト」はファーストの品種を使ってストレス栽培をしている。

 茨城産(JAなめがた)はハウス桃太郎の土耕栽培。静岡産(JA大井川)は、「ハウス桃太郎」より大玉に対処した品種「桃太郎ヨーク」を水耕栽培をしたもので、「アメーラ」ブランドで販売されている。

 8.熊本(JA熊本)の「ハウス桃太郎」は自然栽培のもので、かすかに塩の味がするので塩トマトと呼ばれている。昔の干拓地なので、塩トマトはこの圃場でしかできない。フルーツトマトという呼び名がない頃から、地元ではうまいトマトといわれていた。

 ストレス栽培をすることによって高糖度トマトができるが、収量は上がらない。普通栽培に比べて3割しかとれないので、3倍以上の単価で売らないと引き合わない。収量が上がらないうえ技術を要する。年平均kg300円いくかいかないかの値段である。

(ここで江澤先生から「糖度は6度くらいから1度上がるごとに150〜200円プラスしてあげないとだめ」とアドバイス)。

【ミニトマト】

 ミニトマトはトマトの定番になっている。主力品種は5.愛知(JAとよはし)は「ココ」、6.熊本(JA玉名)は「千果」。よく知られている「サンチェリー」は裂果が多かったため、その後を受けて出てきた品種で「ココ」はぺぺ母系×桃太郎父系。「千果」はココの改良種で、リコピン、アミノ酸含量が高く、高糖度が売りである。熊本はバラ出荷が多い。

【ミディトマト】

 ミディトマトの産地は、大きな産地はないが、JTのヘルシーミディが頑張ってくれた。 10.佐賀(JA唐津市)の「華クイン」(1993年、「北光デリシャス選抜固定種×エビタ選抜固定種」固定培養され、苗にて供給)は食味がよく、非常に安定している。

 栃木産(ジーファーム)の「ファンゴッホ」はオランダ産品種で、98年よりトーメンから輸入されている。今回もってきたものは房でとっているが、バラでも出荷されている。出荷者の栃木グリーンファームは、もとは大和ハウスで、近年は異業種がトマトに進出してきている。ただし、房どりは、房全体で熟度を揃えなければならないのと、匂いがあるので、非常に難しい。ミディでも「キャロルセブン」という良い品種がある。

 なお、参考出品として、房状に実ったトマト「スーパーあいこ」を試食。亀戸ダイコン、シントリ菜についても説明があり、シントリ菜の試食をした。

シントリ菜。くせがなく柔らかいので、炒め物などにに適している。

亀戸ダイコン。旧葛飾郡亀戸村で栽培されていました。現在、東京都江戸川や葛飾、埼玉、千葉県などで生産。


試食の感想

*ミニトマトは皮がやわらかい。「ココ」よりも「千果」のほうがいいと思った。「華クイン」を食べたときに変な味がした。

*一番最初に食べたのがおいしくなくて、だんだんうまく感じた。

*桃太郎はおいしかった。ミニトマトの「ココ」はおいしかった。「千果」は甘い。塩トマトは皮がかたかった。

*ミニの2種類は対照的な味で、愛知の「ココ」がうまかった。皮が張っていて中身が飛び出す感じ。「千果」は後味がなく、甘いだけか。「レディファースト」は糖度が高くておいしいと思ったが、あまりひかれなかった。

*栃木産のトマトは味がよいと感じた。ミニトマトはお弁当に入れるのならば「千果」のほう か。ミディトマトは味がない。

*熊本の塩トマトがおいしかった。

*ミニトマトは好き。「華クイン」は身がしっかりしていておいしかった。「華クイン」はいつも店に置いているが、よく売れている。

*「ハウス桃太郎」は全体的に薄味。「麗容」は去年食べたほうがおいしかった。塩トマトは昔風のトマト。

*ファーストトマトが好き。肉質、香り、かたさ、すべてうまいのは「レディーファースト」だった。

(ここで江澤先生「塩トマトは肉質が粉質的。「麗容」はトマトらしいトマト。肉質がざらつくのはうまく育っていない。トマトは水っぽくないとトマトらしくない」)

 引き続き、鈴木先生「トマトは生で試食するが。消費者は生では食べず、切ってドレッシングやマヨネーズをかけて食べる。そうすると、味が全然違う。またトマトは調理用トマトでなくても、加熱すれば絶対うまくなる、グルタミンが増えるのでどんなに味もそっけもないトマトでも銀紙ホイルで加熱するだけでおいしくなる。売る側からすると商品性がなくなるが煮込むということを提案してほしい」。

 また、練馬でラーメンの中にトマトを入れて有名な店があるという情報もあった。

一般の参加者からも意見を聞いた。

*トマトの中でおいしかったのはJAうつのみやの「ハウス桃太郎」。ミニトマトは甘味が強ければいいという認識で食べているので、「千果」のほうがおいしいと感じられた。ファーストはこういう形のものを食べていないので、珍しいと感じた。塩トマトは2回目だが、前に食べたほうがおいしかった。皮がかたかった。最後に食べたトマトは、食べているときはいいのだが、後味が薬臭いような独特な味がした。シントリ菜はボイルして醤油をかけたものがすごくおいしかった。

*「麗容」はドレッシングをかけるとぐちゃぐちゃになるが、味はおいしかった。塩トマトは初めて食べたが甘かった。

*「桃太郎」は味的には差がない。両方とも青臭くて水分が多く、バランスが悪いという感じ。「麗容」や「スーパーファースト」のほうが肉質もよく甘味も多い。塩トマトはなかなか手に入らないということだが、噂どおりおいしかった。「レディファースト」は水分、味、バランスがよくおいしかったが、若干皮が厚いので口に残る感じがした。

*実家が八百屋なのでトマトは食べ慣れているが、トマトは丸かじりで食べていたので、ファースト系がスキ。「桃太郎」は同じ味だった。「レディーファースト」は果物という感じで、トマト本来の青臭さや香りがない。一番おいしいと思ったのは房つきのスーパーあいこ。

*どれも大手のスーパーで買うものよりおいしかった。2.、4.、5.、8.、10.が特においしかった。

*(熊本の八百屋さん)全部おいしかった。熊本の塩トマトは熊本で食べるほうがおいしかった。「スーパーあいこ」はおいしかった。シントリ菜は白菜に似ているが、食感的にはホウレンソウみたい。


■シントリ菜はどうやって食べるとよいかの質問に対し、杉本さんが回答。

「中国料理が一番。椎茸と豚肉と炒めて、かつおの出しをかけて醤油をまわして食べたがおいしかった。あっさり味にして食べるとよい。カニ(カニカマでもOK)と炒めてもおいしい。収穫期間が1ヵ月くらいしかなく日持ちもわるいので、1年に1回しか売れないが、「今が旬」とアピールして販売できる商品である。