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2006年(平成18年) 4月16日 (日) 第1回
開校式 学習テーマ「トマト」

江澤正平先生の話

 皆さんこんにちは。

八百屋塾とはどういうことを学ぶ場所なのかを先にお話しします。

八百屋さんは今、物品販売業となっています。これではいけません。まず大事な目標として食べ物屋になる必要があります。これはどういうことかというと、物品販売業というのは単にものを売るだけのものです。味や安全、栄養などということは、購入する客が考えれば良いという事ではなく、食べ物屋というのは味や安全、栄養、食べ方などはもちろん食ということを顧客に伝えていく販売というものを考えていかないと、今後の八百屋さんはやっていけないと思います。

それでは、どういう商売の考え方があるかといえば、ます、利益を考えますが、儲けるということと儲かるという二つの道がありますが、儲けるというのは自分が先であって、儲かるというのは、お客に役に立ち、結果として儲かるということになります。ただ、漫然と商売をしていても、儲けることは出来ても、儲かるということにつながりません。祖のためには、野菜などの食品に対する知識や加工する技術を持っていないと顧客の役にたたないし満足してもらえない、結果として儲からないということになります。顧客は食べるために買いに来るわけです。言い換えれば、専業店から専門店になるということです。

そのためには勉強をしていかなければなりません。専門店としてやっていくにはここまで勉強すればよいという到達点はありません。ですから、継続して八百屋塾に参加をして知識を増やしていただきたい。

それでは、顧客と八百屋の関係はどのようになっているか考えてみましょう。重要なのは信頼関係です。儲けという字を分けると信と者と云う組み合わせになります。顧客を信者にすることで儲けにつながっていきます。顧客からの信用を得るにはうそをつかないということです。ある電気メーカーでは、14年前の製品についても不良品対策として億単位のお金を使って、修理、回収、告知を行いました。こうしたことが自社製品に責任を持つ姿勢として信頼を勝ち取っていくわけです。

人間ですから、間違ったりやり損なったりすることはあるわけですが、それを誤魔化したりしないことが大切です。先日の政治政党のように、最初から誤魔化してしまおうという姿勢では駄目です。間違ったとき間違いをはっきりと認めて行かないと信用は出来ません。顧客に買ってもらうためには、物と金銭とうい考え方ではなくて、人間と人間の関係を築いていく必要があります。例えば、ホウレンソウ一把しか購入しなくても関係ありません。商売は厳しいところもありますが、それを柔らかく包んで、対応していくことです。ます、八百屋側から顧客を信用しない限り、顧客は店を信用してくれません。

皆さんは、もう八百屋をやっているので経験もあるので、あまり細かいことを云っても仕方がありませんが、基本的な事柄はやはり知っておいていただきたいと思います。

小売商はどこの市場でも約3/1くらいになってきています。なぜかといえば、一つは八百屋に従事する人の老齢化です。そして、スーパーマーケットが1970年くらいから本格的に進出してきたことがあります。セルフサービスという形態は当初は消費者には受け入れられなかったのですが、1975年くらいになるとセルフサービスという形態にも消費者は慣れてきました。ワンストップショッピングですから、いろんなジャンルの物が買えます。忙しくなってきた主婦が簡単にいろいろな物が買えるのは魅力的な訳です。ですからスーパーマーケットがもてはやされます。スーパーは年間計画をたて、計画の単位は週単位になっています。データをもとにして随分先の特売なども計画します。購入先も産地から購入するか、荷受から購入するか効率的な購入を考えます。販売も効率を第一に考えます。
それに対して八百屋は対面販売です。対面販売は八百屋にとって武器になるはずです。今、社会で求められているのは、情報の双方向性です。対話販売、対面販売こそがこの双方向性そのものです。人間が目の前にいて、品物が目の前にあって、それで話をするわけですから非常に強力です。しかし、この武器をいままであまり使ってきませんでした。これを使うには、知識と技術を持っていなければ出来ません。店先だけではなく、家全体が食べ物を扱うという感覚でいかなければ駄目です。扱っている野菜・果物も気候の関係でいつも同じというわけではありません。このような物を販売しているわけですから、このような差異を顧客に説明していく能力を持つ必要があります。残念ながら今までは、このような差異を区別する努力や、自分で味見をして確認するというような事を怠っていました。

ここにいる皆さんは、少なくとも自店で販売している物は食べて見てください。その上でわからないことがあったら質問したりするくらいのことはしないと意味がありません。
スーパーは、残念ながら販売する物を食べてはいません。スーパーはなかなか販売するシステムを変えることが難しいです。スーパーだけではなく、卸売会社や生産者にも問題はあります。三つ葉やウド、フキなどと山菜を除きほとんどが気候風土の異なる外国から入ってきた野菜を日本で栽培し定着しました。この中から、長いこと飽きないで食べられる物が美味しいと残ってきました。これが伝統野菜や地方野菜と云われる物になりました。戦後、高度経済成長期になってきたときに、いままで戦争のために作っていた物や技術が民生用に降りてきました。肥料や農薬などに転用され、石油製品からはビニールなどが作られ始め、農業資材が良くなってきました。種苗屋さんも色々交配する技術も確立されました。今までのものはどうしても栽培しにくかったり、病害虫に弱かったり、揃いが悪かったりして生産性、流通性が良くありませんでした。

都市が発展すると野菜が不足するようになりました。そうすると収量が上がり、作りやすく病害虫に強いとかの生産性のみが注目されるようになり、食べ物としての感覚がだんだん少なくなりました。その結果、野菜があまり美味しくなくなってきました。

米の場合には、取れすぎて減反ということになったのが1971年からですから、おいしい米を作らないと売れないということになりました。

野菜は、気象条件によって豊凶の差が大きく、余るという感覚が余りありません。1960年くらいから人口が大都市に集中する現象が見られるようになりました。食べる物が多くなり輸入も多くなってくると、1980年くらいになると飽食の時代といわれ、食べ物が余ってくるようになって来ました。こういう状況でも野菜は、足りないときもあり、また余るときもあのですが、野菜を扱う人は豊凶の差をあまり感じませんでした。そうするともう少し美味しい物が欲しい、安全な物が欲しいと云う声があり、対応する野菜も作られましたが、特殊な野菜という事で、一般的にはなりませんでした。

伝統野菜も、京野菜などは1930年くらいからやっていました。後は加賀野菜とか長岡野菜とか色々な形で出て来ていますがまだ一般的にはなっていません。

全般的にみて野菜がまずくなって来ているのは事実です。野菜が美味しいか、美味しくないかで店の発展が決まると云っても良いでしょう。おいしい野菜、安全な野菜、栄養のある野菜というような情報を持たなくてはいけません。しかし、情報だけでは仕方がありません、品物と関連した生きた情報が大事です。Webサイトで良くこういった野菜を販売しています。消費者の考えている物と販売者の考えと合致しないものが多いので、どうしてもWeb販売の場合クレームが多いようです。

店舗を構えて対面で、しかも対話して現物を見せて販売している八百屋の場合はこういうことはほとんどありません。これからは八百屋さんの出番なのです。少し遅いくらいかもそれません。

こういうことを実現するためにも是非八百屋塾でいろいろなことを学んで、八百屋を変えていくと云うくらいの気持ちを持っていただきたい。

野菜というのは、いまお話したよう形です。食べ物ということを考えたことがありますか。人間が生きていく上で一番大切な物はなんでしょうか。酸素ですね。酸素がなければ呼吸が出来なくなり人間は生きては行けません。その次はなんでしょう。水です。人間の体の60%は水分です。体にはある程度エネルギーは持っていますから、じっとして水を補給すれば10日くらいは生きていけます。

後は食べ物です。食べ物は生き物です。生き物を食べています。生き物ではないミネラルなどもありますが、ミネラルは食べ物の中に入っているのです。生き物は人間が作れるかというと、人間が生き物を作ることは出来ません。農業で大根でもなんでもできるじゃないかと思われるでしょうが、大根は種子がないと出来ません。では種子は誰が作るのだと云えば大根自身が作るのです。ですから、人間が大根を植えて種を作らせ、その大根を育ててその大根を人間が食べているのです。これが農業です。

農業は食べ物を育てる事です無から有を生じさせるわけではありません。植物が太陽の光線と水、炭酸ガスで葉に受けて炭水化物(澱粉)のもとを作っています。それを、根や、幹、実に蓄えているわけです。それを人間が食べています。植物は独立栄養体なのです。他の動物も自分では食物を作っていません。植物によりかかって生きています。肉食獣でも草食の生き物を捕獲して食べています。

農業の発生は約15000年前です。我々の先人がずっと農業をしてきました。食べ物そのものが植物に依存して来たことを忘れてはいけません。

人間と野菜の関係はどうなのか、人間と野菜。果物を考えたとき、果物の場合には、花が咲いて実がなって種も出来てくると果物は美味しい。完熟した実を鳥や、動物、人間が食べて種を伝播してくれるから共存共栄の関係です。

野菜の場合は、花が咲いてから食べるものもありますが、大部分は花が咲かないうちに食べてしまいます。種子は当然花が咲く前に食べてしまうのでできません。このままでは絶滅してしまいます。そこで野菜は進化の過程で、防衛物質として野菜自身に持ちます。例えば刺や、あくや苦みなどです。これらがないと生きてはいけないのです。ジャガイモでは芽が毒になったりします。その頃のジャガイモは皮のふちにアルカロイドが出ています。わらびなどは発がん性の澱粉ですから、あくを出さないと食べられません。今、このように食べられるようになって来たのは、私たちの祖先がいろいろと試行錯誤して来た結果です。これは食文化といっても良いと思います。理屈ではなく経験に基づいて来たものです。こう云ったことを学んでいかなければなりません。

人間の子供は未成熟です。子供の味覚は甘い物しか分かりません。苦い物は体に良くない、酸っぱい物は腐敗していると、未成熟な体に良くない物を排除します。成長すると共に抵抗力が増えてきますから、何でも食べられるようになって来ます。
あくは皮膚炎をおこしやすくします。胃や腸の粘膜に炎症が起きても自覚症状がありません。ですから、抵抗力の弱い子供たちは本能的にあくのある野菜を避けるのです。ですから、食育といって、嫌がる物を無理に食べさせるのは良くありません。好き嫌いもありますが、こういう事も考える必要があります。

自分の店舗をどのようにしていけば良いかと考えたとき、消費者はどのように買い物を考えているのかということを知る必要があります。自分が買い物をするときのことを考えるとよくわかりますが、買い物はない物を買うということです。消費は楽しい行為です。消費者が楽しくなる店舗を考えてみましょう。対話販売が中心で、話が飛び交うという雰囲気が大切です。

最後にお金の話をします。良く若い人は、お金がないから仕事をしようとかいいます。いつもお金が先という発想です。では、お金が世の中でいつも先なのかというと、お金は人間が分業を合理的にするための約束事です。

お金は重要なものですが、それはあくまでお金であって、お金を増やしたいのであれば投機や金融市場など専門の場所でやればよいのです。青果組合の創設者で大先輩の大沢理事長は、「小売屋さんは自分の売るだけのものを買って、それを売るということを中心にしないとだめだよ」といっていました。

お金はあくまで従。仕事が主でなければいけません。売れないような物は役に立たないから売れないので、売れる物は役に立つから売れるのです。ただ、使い方を説明し、分かってもらえば売れるものもあります。皆さんが顧客に喜んでもらえる事が大切です。その喜んでもらえる有り難さを感じる商売をして欲しい。儲かった喜びは一時的なものです。喜んでもらえた喜びは続いていきます。自分のブランドで八百屋をやって欲しい。ブランドには責任があります。責任を持った商売がいかに大事かと云うことです。

また、責任を持った商売という物は社会に結びついています。お金で結びついているのではなく、仕事で、社会に役に立つという事で結びついているのです。これが社会人です。顧客に喜んでもらうためには、それだけの知識や技術が必要になります。また、知識や技術がなければ信用もしてもらえません。信用するということは能力がないとだめです。

人の役に立つことはうれしいことです。私も94歳。みなさんのおかげで生きていけます。役に立つためには野菜と果物に惚れなさい。これが大事です。

 


八百屋塾の学習と実践活動の体験
神田商組 (有)清竹商事 石山由美子さん

私の店について

ことしで3年目に入る塾生です。
 

 東京都清瀬市で創業56年、3代続く八百屋をしています。八百屋に生まれ、小さいときから野菜と果物は生活の一部という環境で育ちました。高校を卒業したときに八百屋がいやで就職をしましたが、人手がいる仕事だったので、何年か働いたあと、家業の八百屋を手伝うようになりました。13年前、父の病気を機に、全面的に店(清竹商事小売部門「やおたけ」)を任されています。

 うちは卸と小売と二部制になっているので、24時間体制で動いています。兄が夜の卸をしていて、清瀬の地場野菜を集荷し、大田市場からも仕入れ、長野県、神奈川県、山梨県方面へ運んでいます。

 その代わりに信州レタスや、果物などを5月から11月にかけて30〜40軒の農家から集め、それをまた市場にもってきているという仕事をしています。

 小売部門は八百屋と納め(学校給食、病院)を担当しています。

 清瀬という所は農家が300軒位います。清瀬は東京都と埼玉県の境になるので、もう少しエリアを広げると350〜400軒位にはなると思います。そうした野菜が地元の地方卸売市場に行きます。地元の野菜と大田市場から仕入れた野菜を販売しています。

八百屋塾を知ったきっかけ

 父から13年前に店を任され、そのままの形態で何年かきていましたが、やはり時代の流れとともに、量販店に負けてしまうのではないかと危機感を感じました。何をしようかなと思っても、どんなカラーを出してよいか分からなかった状態です。

 そのときに日本ベジタブル&フルーツマイスター協会が認定する「野菜のソムリエ」を知り、そこで勉強しようと通い出しました。これが野菜の勉強かとやや物足りなく感じられる部分がありましたが、たまたまジュニアマイスターのクラスに八百屋塾実行委員である宍戸さんの奥様がいらしていて、最終日にエレベータで一緒になったとき、会話しました。

 「ジュニアのコースどうでした」ときくと、「八百屋さんはここにくるよりも、八百屋塾に行った方が役に立つと思う」ということでした。私は何それ?という感じで、すぐに4月から通いたいということでお願いしました。

 そのときに、ジュニアマイスターの上のクラスに通うことが決まっていたので、それと同時進行で八百屋塾に通い出して現在に至っています。

八百屋塾皆勤!!

 八百屋塾に2年経って何が違ったのかというと、八百屋塾に2年通っていますが、1回も休んだことはありません。なぜなら、休むとすごく損をした気がするからです。友達の誘いも八百屋塾の予定が入ってから決めるようにしているので、友達からもあきれられています。でも、勉強したことを友達に話すときにも話の奥が深くなったとほめられます。

 ジュニアマイスターを受かったときに、「野菜ソムリエのいる八百屋」というのを自分の店のカラーにしようと思いましたが、マイスター協会を卒業したときにはまだ自信がなくて看板は出せませんでした。

 でも、八百屋塾に1年くらい通ってからはちょっと自信がもてたと思って、店の中に小さく「野菜のソムリエ」の看板を飾ることにしました。
 野菜のソムリエだからといって鼻を高くするのでなく、こういう看板を出したのだからいつでも勉強しなければいけないと、自分にプレッシャーをかけるためにあえて看板を掲げました。

江澤先生「ベロメーターを鍛えなさい」

 2年間通って、なぜ八百屋塾なの?ということをお話します。

 1年目にインパクトがあったのは、江澤先生の自分のベロメータを鍛えなさいという言葉でした。自分の舌で物を食べ、自分の店にあるもの、商品をきちんと食べ、自分の舌を鍛えなさいということにとても感銘を受けました。自分の店のものだけでなく、デパートなどに行って珍しいものがあると買ってきて食べるということを率先してするようになりました。

 たぶんこの2年で、商売に対する姿勢や野菜の扱い方が自分の中で変わってきたのではないかと思っています。まだまだ勉強は足りません。
 以前は自分のカラーを出そうと思っても何を出していいかわからないという状態でした。頭の中に野菜の引き出しがあるとしたら、カラッポではないにしても、あまり入っていない状態だったと思います。今だって、まだまだ入れている途中の段階ですが、洋服と同じで、着たきり雀よりは、箪笥の中にいっぱい洋服があればいろいろ組み合わせができたり、カラーコーディネーターができたり、その中でおもしろさや楽しさがわいてきて、同じ仕事をしていても違ってくるように思います。

 食べ比べはベジフル協会でも行いますが、食べ比べになっていないような状態です。八百屋塾に今日もたくさん並んでいますが、自分の店にこれだけのトマトを並べることはまず不可能です。八百屋塾にきて食べ比べをしてからは、自分でもなるべく店に試食を出したり、お客様のベロメータを鍛えるという意味で、いろいろ知ってもらいたいというので試食をするようになりました。

パプリカの揚げ浸しから始まった調理試食レシピ

食べ比べの中で、江澤先生に教わった料理として荒井先生が「パプリカの揚げ浸し」を作ってくれたことがありました。
 それを食べたとき、私の中では、パプリカは炒めるか、サラダにするかぐらいしかなく、1本を使い切らずに半分に割って冷蔵庫に入れておいたらしなびて次は使えなかったというようなイメージがありました。

 ところが、あの揚げ浸しを食べたときにすごくおいしかったのです。こういう食べ方があるのだということをお客さんにも教えてあげたい。自分が感じたこと、驚いたり、おいしかったり、こんなことができるのだというのを教えてあげたくなりました。それから、お店の商品を使って実際に調理して、簡単でおいしくできるレシピをいろいろ紹介するようになりました。

 うちの店でも今、トマトを6〜7種類売っていますが、それらを全部切って試食してもらっています。そうするとトマトの売れ行きが全然違ってきます。

 食べ比べで、自分が食べたおいしさをお客様にも伝える。そういうことに日ごろから切磋琢磨しています。

八百屋塾から聞く大切な情報

 うちの店は卸と小売と別々なので、いままでは線引きされるところがあり、自分は何をもってきたらいいのだろう、どこの産地がいいのだろうということがわかりませんでした。でも、八百屋塾で食べ比べをしたり、みなさんのこれがおいしかったという情報を参考にいろいろな商品を入れることにしました。

 今では、東一の担当者に直接連絡し、糖度が上がっているのはどれですかなどうるさいぐらいにきいて、それを仕入れるといった具合で、仕入れも今までの形態とはここ何年かで違ってきています。でも、その分、お客様には評判がよいです。
 やはり商品のおいしさが伝わっているのではないかと思います。

なぜ地産地消なの?〜新潟山古志村から持ち帰った大切なもの

 清瀬は農家が多いです。地場野菜は、今だとホウレンソウ、コマツナ、ダイコンなどが作られています。

 昨年7月新潟の山古志村と長岡のナスの視察に行ったとき、実はナスが嫌いなので、行くのを少しためらいました。お誘いを受けたので、どうしようと思いつつも参加しました。朝5時半に出発し、長岡の梨ナス、巾着ナスなどの視察を行い、山古志村のかぐらなんばんの産地にも行きました。

 山古志村に入ったとき、災害から10ヵ月ぐらいでしたが、まだまだ復旧したとはいえない所を通っていきました。そのときに、青果市場の鈴木社長さんがふだんはきけないような話をしてくださいました。

 災害があったとき、山古志村の人たちは伝統野菜であるかぐらなんばんを守ろうとして貯金通帳などをもたずに種をもって逃げたそうです。

 バスがここから先は入れないという所に止まりましたが、そこに農協の土地が300坪あり、かぐらなんばんがきれいに栽培されていました。みなさん、私たちを歓迎していろいろ親切に教えてくださり、とても感銘を受けました。

 お昼にナスとかぐらなんばん尽くしの料理が出ましたが、そのときには全部食べ、ナス嫌いを克服できました。この年までナスを食べなかったのは何だったのだろうと思うぐらい、山古志村の人たちの熱い情熱を感じました。

 新潟までバスの長い道中も、八百屋の姿勢や商売に付加価値をつけて売るやり方とか、納めなどの苦労話などを仲間の方達がお話してくださって長時間バスに乗っているとは感じませんでした。それぐらい充実した1日を過ごしました。

生産者との交流

 その体験をしてから、私の店の地場野菜に対する姿勢もずいぶん違ってきました。伝統野菜を残そうという生産者の気持ちが印象に残っていて、うちの周辺にもそういう生産者はいるのではないかと考えたのです。それから生産者との交流も深めていって、清瀬で生産された野菜をみなさんに買ってもらいたい、食べてもらいたいという気持ちが強くわいてきました。

 今までは地場野菜を前面に出すということはなかったのですが、それからはPOPにも「東京産」でなく、「清瀬産」として店の前面に出しています。そうすると、お客さんの中で、清瀬でこんなにきれいなブロッコリーができるの?おいしいものができるの?といって会話が広がっていきます。私は八百屋ですが、生産者に対する気持ちをきちんとお客さんに伝えていきたいと思えるようになりました。

地場産野菜(清瀬産)に思いを込めて・・・

 地場産トウモロコシの時期になると、できたて、とりたてを売るようにして、生産者を5〜6軒回って、その日の出来具合を調べるために食べ比べします。畑によって品種も違うからです。食べ比べをして気に入ったものを朝もいで30〜60分のうちに店頭に出します。そのときにはトウモロコシの実のついたものを3本くらい切ってもらい、店に立てかけておきます。

 それを立てることによって、お客様が「あそこの八百屋さんに、ことしもとれたてのトウモロコシが入った」とわかる目印にもなっています。

 通常、市場からもってくるとトウモロコシは2〜3ケース売るのがやっとですが、もぎたてのトウモロコシですと1日200本は売れますし、納めている病院などに、出始めにおいしいものを5本位もっていって「よかったら休憩時間にゆでて食べて」と渡すと、次の日に50〜100本も注文がきます。そういうこともしています。

 小松川のセロリの生産者伊藤さんに習って、去年からセロリを作っている30代の生産者がいます。たまたまテレビで紹介されたときに、江澤先生がたまたま見ていて、「石山さん、セロリを清瀬で作っているというので君のことを思い出したよ。側枝はやわらかいのに捨ててしまうけれど、それはサラダにするとやわらかくて食べやすいからもらってくるといい」とお電話をくださいました。

 びっくり半分とうれしさ半分、そして、側枝をもらってこなくちゃと思いました。生産者にきくと、捨てているというので、それを全部くださいとお願いしたら快諾してくれました。4月下旬には、側枝をサラダにしたり、袋に詰めてレシピを作ったりして紹介しようと考えています。

 清瀬には熱い心をもった若い生産者がいっぱいいますので、彼らのことも消費者に伝えていきたいし、八百屋塾にも食べ比べのときにたまたま品目が重なるようなものがありましたら、清瀬産のをもってきますので食味をしてほしいと思います。

 どちらにしても、生産者に、小売のプロの判断をきちんと伝えて、よりよいものを作っていってもらいたいと思っています。清瀬でも付加価値をつけた地元のブランドを作ろうということで頑張っています。自分も最近は会合に入れてもらったり、「都市農業を語る会」というのにも声をかけていただいたりで、生産者との交流にもつながってきました。

 「頼りになります 八百屋さん」 1年前に記事掲載されたのですが、種苗会社(タキイ種苗)のものだから、そんなに知られていないかと思っていたら、生産者300軒にコピーをして渡されたときいてびっくりしました。市場でも「出てたね」と声をかけられました。

 勉強している八百屋さんは清瀬でも少なく、みんなどうしたらよいのだろうと考える八百屋さんは少ないのです。八百屋塾のよさを説明して誘っても、休みの日は疲れているからとか、年だからという人が多くて、寂しく思うことはありますが、自分は八百屋塾に通ってもっともっとお客さんを呼び込もうと思っています。

なぜ女性スタッフなの?

 うちの店は昔から小売部門は女性だけで運営してきました。卸に男手がとられてしまうので、父の代から八百屋は女性スタッフでした。女性のきめ細やかな心遣いを店のカラーとして出していければと考えています。

 私は5時半に起きて軽トラで配達をします。大型トラックなどに追い抜かれたときに、あー、スーパーや量販店は大型トラックで、私みたいな八百屋は軽トラなんだ。確かに大型トラックは1回に大量のものを運べるという利便性はありますが、道を間違えたときに軽トラならば脇道に入ってUターンができます。それは商売と同じで私は軽トラなのだから、小回りをきかせて大きなところができないことをすればいいのではないかと思うようになりました。道を間違えても、そのせいでいい抜け道がわかったりしますので、そういうことをすればいいのかということもここ1〜2年で感じたことです。

商店街で利便性を図る

 お店にはパンなども置いています。野菜や果物を置いていると空いた空間ができるので、テーブルを置き、そこに遊び心をもたせて、春にはひな人形、ひしもち、その周辺に春の食材(ウド、菜の花、タラノメ)などを置きました。

 すると、お客様の反応もよく、女性ならではの共感を得られて、コミュニケーションが図れるようになりました。

 1軒隣にお菓子屋さんがあったのですが、閉めてしまいました。うちのほうはこじんまりした商店街で、あまり歯抜けにならない通りでしたが、菓子店がなくなったことによって菓子やパンが入手できなくなってしまい、お客様の利便性がなくなるので、どうしようかと話し合いました。それで、その店で扱っていた商品はみんなで少しずつ分け合って利便性を図るようにしました。それで、うちはパンと弁当を置いています。

きめ細かな心配りが喜ばれる

 私は商売の基本として、自分の感覚、感性を大事にしたいと思っています。ですから、お弁当(200〜600円)でも、コンビニで売っているようなラップが冷たいようなお弁当は自分が残ったときに口にしようとは思わないのです。また、そういうものを売りたいとも思いません。自分が食べないのだから、お客さんにはそれでいいというのでなく、うちのものは何を食べても安心で、気持ちよく食べられる。そういう気持ちで商売をしていきたいので、お弁当を作る店も2店を選りすぐり、朝作ってもらったものを並べるようにしています。八百屋でお弁当を売っているという感覚がお客さんにないので、はじめのころは売れなくて困ったと思いました。たまたま12月の寒い日に女性スタッフがこんな日は温かいものを食べたいね、という話になったのです。うちはレンジでお弁当を温めることはしていないので、野菜はいっぱいあるからおみそ汁を作って無料で出すようにしました。具は毎日変えて、発砲スチロールの器にラップして出します。

 周辺に国立の看護大学、福祉大学の一人住まいが多いので、彼らがおみそ汁がおいしいと買ってくださり、お昼頃になると弁当とカップを手にもって学校や職場に帰るようになりました。そうすると、昼頃に白いカップをもってくるのはどこからやってくるのだろうと噂になって、それからすごくお弁当が売れるようになりました。意外にも、若い女の子、男の子がすごく喜んでくれたというのは新しい発見でした。私たちも逆に勉強させてもらっている部分があります。

 トマトやイチゴなどパックで押されてしまうと売れないものがあります。それで、小さいパックにしてお弁当の横に置いたらデザートで食べられるのではないかとパートさんが提案してくれて、イチゴもよく売れるようになりました。

 冬になると、ミカンも1個売りでおいしいものを置いておくと、お弁当と一緒に買ってくれて、そのうちに袋で買ってくださるようになり、年末に田舎に送るということで、1個のミカンから箱のミカンになるということも新しい発見でした。商売はおもしろいものだ、と思いました。

 レシピをやっていて、おいしいねといわれて売れると、心の中でやったね、この商売やめられないねという気持ちになります。

 レシピもやはり見た目を重視しています。人間は食べておいしいと感じる前に、目でみる味覚がくるらしいので、そういうことは気をつけて作っています。色を出したいときに塩味で味付けをしたり、色が気にならなければ醤油味やみそ味にするとかしています。

 2年間八百屋塾に通って自分の中で感じたこと、感覚とか感性で感じたこと、自分の目で見て、耳で聞いて、さわってみて、どんどん商売に入れていきたいと思いますし、楽しい店づくりを心がけています。

お客さんと、共感できる女性ならではの接客

 うちの店では女性スタッフが20〜50代と幅広くいるので、世代や感覚が違っていておもしろい部分があります。これからもがんばってやっていこうと思う。

 八百屋塾で交流ができ、野菜と一緒に出会いがいっぱいあることが自分の財産になっていると思います。自分ではおいしさを伝えるために試食をしたり、お客さんがきて喜んでくださる店にするために取り組んでいる最中です。アンテナは高く、腰は低く、自分の仕事に誇りをもって全開パワーでいきたいと思いますので、何かありましたら声をかけてください。


東海林講師の商品説明

トマト

トマトを全部で12点もってきました。
大玉トマトのうち、4点が丸玉、1点がファーストです。

丸玉は
 
1)とちぎのトマト(栃木)JA小山 麗容(サカタ) 4kg2000円
2)桃太郎(愛知)JAひまわり 桃太郎ヨーク(タキイ) 4kg2000円
3)光樹(佐賀)JA佐城川副町 サンロード(サカタ) 4kg2000円
サンロードは高温になると過熟になるので、いまは川副町だけが作っています。
4)トマト(熊本)火の国もっこす(浅井)、桃太郎ファイト(タキイ) 1袋180円
5)伊良湖ファースト(愛知)JA愛知みなみ(伊良湖)、レディーファーストかスーパーファースト(愛三種苗)
 この間、新入社員の調理講習会があり、その時にファーストを見たことがない人がたくさんいました。4kg2000円

■フルーツトマト
 フルーツも時期によって中心になるものが違ってきますが、今の時期ですと、

6)うまかんべー(埼玉) JA埼玉岡部 レディーファースト、3kg換算2500円
 うまかんべーと書いてあるものと、糖度がいかないものは無地の箱があるので間違って買わないようにしてください。
 これは水を搾ってあるんですが、ファーストをつかっているので水を切っても軟らかい。桃太郎で水を切るとカチンカチンになるので、そこのところの違いを確認してください。
7)アメーラ(静岡)JA大井川 桃太郎ヨーク(タキイ)
 椰子殻培地を使った養液栽培で、静岡の種苗会社が開発したが、ハニーポニックというシステムで、一部産地が長野にまたがっているので周年出ています。1kg1500円
8)にこにこトマト(香川)JA香川三木町 豊竜(タキイ)
 これはタキイの「豊竜」という昔の品種を使っているので、味が違うかどうかを確かめていただきたくてもってきました。2kg2000円

■ミディトマト(中玉)

9)カクテルトマト(栃木)グリーンステージ大平(カンパリ)
 中玉系で、一つは房取りタイプは年間増えています。
 これは栃木のものですが、夏場になると山形や長野辺りでも房取りタイプを作ります。房取りというのはこれだけの長さの分を均等に着色しなければいけない品種ということになると、なかなか日本にはうまいのがないので、オランダの品種が主力になっていて、カンパリという品種を使っています。400gパック280円
10)フルティカ(佐賀)JA唐津市 フルティカ(タキイ)
 唐津は華クイーンの方が主力だったのですが、フルティカが入ってきてかなりの量が出ています。250gパック180円

■ミニトマト

12)宮崎ミニ(宮崎)JA尾鈴 アイコ(サカタ)
 時期によって見た目や産地によって状況が違います。バラ3kg1800円


【参考出品】

清流トマト(高知)2kg3000円 奈良県のブラックトマト 奈良県のイエロートマト

 
熊本、八代の塩トマト 雪下にんじん  

・山菜類(ウド、行者ニンニク、イタドリ、カタクリ)


東海林さんよりメッセージ

 4月から「食の活性化推進室」という部署になりました。主な仕事は産地開発と食育ですが、私は食育担当で、月に1〜2回イベントをしています。朝6時から試食を出し、トマトならば20種類位を出します。
 年間大規模なイベントを年4回、中規模なイベントを15回する予定なので、よろしくお願いします。


試食した感想

○甘みのあるトマトが好きだが、トマトそのものの味がない。光樹がよかった、2番目はファースト、愛知は酸味がいやだった。売ってみたいのは光樹だが、その時々で変わってしまう。
○好みとしてはファーストが好きなので、トマト好きな人は光樹かもしれない。寒いときは酸味のないほうが食べやすいと思う。
○全体的に味が薄い。このところはっきりした味のトマトがないのだが、選べといわれれば光樹、酸味が好きであれば桃太郎ヨーク
○とちぎのトマトがおいしかった。うまかんべ〜を売っているが、はっきりした味でおいしかった。
○トマトは静岡のアメーラが思ったほどには味がよくなかった。最初のほうに食べたトマトは好みの味ではなかった。
○フルーツトマトはおいしくなかった。埼玉のうまかんべ〜はトマト特有のかたさ、おいしさがあって一番よかった。
○フルーツトマトはアメーラがよかった、酸味と甘みが混ざっている。にこにこトマトは堅すぎる。皮がやけにかたかった。
○フルーツトマトはえらく堅い。色がアメーラはよくない。うまかんべ〜が色も味もよいかも。その次にアメーラ、にこにこトマトの順。
○いつも店ではレディファーストのレギュラーで、色のよいのを食べるのだがうまい。フルーツトマトのレディファーストはもっとうまいと思う。
○フルティカは食感も悪く、ミニトマトとしてはよくない。カクテルトマトは酸味が強かった。アイコは酸味もあったが、皮が残らず食感も喉ごしもよかった。
○アイコは皮が口に残って食べにくかった。実はくずれて味が薄い。


荒井慶子先生の説明

●イタリアでトマトソースに用いるのはサンマルツァーノ。トマトソースにはコクがあるトマトがよく、未熟ではだめなので、熟れている熊本のトマトを使って同じ手法で作った。トマトソースは正式には種を使わないので濾してきれいにするとよい。

●西洋料理でトマトを使うのはラタトゥーユ、ナス、たまねぎ、ズッキーニなどにトマトをいっぱいいれて煮た料理で、常備菜に用いられる。

●トマトにかけたドレッシング
 
30cc
オリーブオイル 70cc
1.5g(小さじ1.3弱)
コショー 好みの量
からし、レモン汁 好みの量